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三章 夏休み
01
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side:まこと
僕たちの街には、小さな山と、その向こうに海がある。
山の神社では毎年夏祭りがあって、海から打ち上げられる花火が見られるようになっていた。
だから、
「守くん!来週の夏祭り行こう!」
「行かない」
ノートを閉じて、テーブルを挟んで守くんに期待を込めて言ったら、即、拒否された。
「えー、なんでー」
「人ごみ嫌い」
「え~~~行こうよ、出店もいっぱい出でるよ」
駄々をこねるけれど、守くんは真顔で教科書のページをめくる手を止めない。
夏休みが始まって早三日。
僕は今日も守くんの家に来て、一緒に宿題をしていた。
「かき氷に、たこ焼きに、あと花火も上がるよ」
「…………」
「ね、行こうよ、年一度だよ?」
その言葉に守くんは、ちょっと興味を示したようで、ちらっと僕を見た。
いいぞ、と思って念をおす。
「ほら、別に青姦したいとか、全然これっぽっちも思ってないから!全然!」
「絶っっ対行かない」
守くんは、また目を教科書に戻した。
僕は意外で驚いた。
「え……青姦されたいの?いいよ」
「ふざけるな。もう帰れお前」
「うそうそ、ごめん、まだいさせて」
そう言ってから、守くんに抱きつく。
しばらくそうしていると、守くんは、呆れたように僕を見た。
「……勉強は」
「もう今日やることは終わったよ」
「俺も今終わった」
守くんは、教科書を閉じる。
「じゃあ、もう自由だね」
「…………」
そう答えると、守くんは無言で僕を見つめた。
僕は守くんの手に、自分の手を重ねた。
「……する?」
「…………」
守くんはふいと目を反らし、けれど手を握り返す。
それを同意だととって、微笑み、そのまま守くんを床に押し倒し……
――ヴーッ、ヴーッ
そこで、守くんのスマホの着信が鳴った。
「………………」
「………………」
一度体を起こし、守くんは最高に機嫌が悪そうな様子で出る。
「もしもし」
『あっ、守!来週の夏祭り、』
「行かない」
食いぎみに答え、ブチッと通話終了ボタンを押した。
「誰?」
「はるだよ」
守くんは、僕を膝の上に乗るように促す。
嬉しくて、乗ったまま守くんを抱きしめた。
……と、また着信が鳴った。
「なんだよ!行かねぇよ!!!」
完全にキレて、守くんは電話にでた。
電話の向こうで、木下くんが困ったように言う。
『なんでキレてんだよー、さっきいっちーにもキレられたんだよ、勘弁してくれよー』
「……守くん、とりあえずちゃんと話してあげて」
膝の上にのったまま、そう小声で言うと、守くんは「しょうがないな」みたいな顔をして、再び携帯を耳に当てた。
「人混みが嫌なんだよ。花火なら家からでも見れるし。他のやつ誘えば」
『他のやつはみんな彼女と行くそうです』
「御愁傷様」
『心が痛い。で、さっきフリーないっちーも誘ったんだけど、めんどくさいから行かないって言われた……だから守!お前しかいないんだ!』
「は?一緒にするな、俺だって――」
守くんは、ちらっと僕を見た。
けれど「……いや」と、慌てて目を反らした。
……え?何、今の。すごい可愛いんだけど。
今電話してなかったら襲ってる。
「とにかく、俺は行かないからな」
『えー!オレ、祭のかき氷とはしまき食べないと夏が終われないんだけどー!』
「それだけなら一人で行けよ」
『家族連れと恋人同士の大群に一人で参戦は嫌です』
「じゃあ、道のすいてる昼間に行って、それだけ買ってきて帰れば」
守くんは、投げやりに言った。
……電話の向こうが、暫し沈黙する。
『…………天才か?』
「お前がバカ」
話はまとまったらしく、守くんは通話を切った。
「そういえば、まことははるに誘われてないのか?」
「うん。そこまで親しいわけじゃないから」
「いや……たぶん、彼女いると思われてるな」
守くんはちょっと笑う。
そうしながら、片手でスマホの電源を切ったのが見えた。
笑い返して、守くんの首の後ろに手を回す。
「彼氏ならいるけどね」
「はいはい」
僕たちの街には、小さな山と、その向こうに海がある。
山の神社では毎年夏祭りがあって、海から打ち上げられる花火が見られるようになっていた。
だから、
「守くん!来週の夏祭り行こう!」
「行かない」
ノートを閉じて、テーブルを挟んで守くんに期待を込めて言ったら、即、拒否された。
「えー、なんでー」
「人ごみ嫌い」
「え~~~行こうよ、出店もいっぱい出でるよ」
駄々をこねるけれど、守くんは真顔で教科書のページをめくる手を止めない。
夏休みが始まって早三日。
僕は今日も守くんの家に来て、一緒に宿題をしていた。
「かき氷に、たこ焼きに、あと花火も上がるよ」
「…………」
「ね、行こうよ、年一度だよ?」
その言葉に守くんは、ちょっと興味を示したようで、ちらっと僕を見た。
いいぞ、と思って念をおす。
「ほら、別に青姦したいとか、全然これっぽっちも思ってないから!全然!」
「絶っっ対行かない」
守くんは、また目を教科書に戻した。
僕は意外で驚いた。
「え……青姦されたいの?いいよ」
「ふざけるな。もう帰れお前」
「うそうそ、ごめん、まだいさせて」
そう言ってから、守くんに抱きつく。
しばらくそうしていると、守くんは、呆れたように僕を見た。
「……勉強は」
「もう今日やることは終わったよ」
「俺も今終わった」
守くんは、教科書を閉じる。
「じゃあ、もう自由だね」
「…………」
そう答えると、守くんは無言で僕を見つめた。
僕は守くんの手に、自分の手を重ねた。
「……する?」
「…………」
守くんはふいと目を反らし、けれど手を握り返す。
それを同意だととって、微笑み、そのまま守くんを床に押し倒し……
――ヴーッ、ヴーッ
そこで、守くんのスマホの着信が鳴った。
「………………」
「………………」
一度体を起こし、守くんは最高に機嫌が悪そうな様子で出る。
「もしもし」
『あっ、守!来週の夏祭り、』
「行かない」
食いぎみに答え、ブチッと通話終了ボタンを押した。
「誰?」
「はるだよ」
守くんは、僕を膝の上に乗るように促す。
嬉しくて、乗ったまま守くんを抱きしめた。
……と、また着信が鳴った。
「なんだよ!行かねぇよ!!!」
完全にキレて、守くんは電話にでた。
電話の向こうで、木下くんが困ったように言う。
『なんでキレてんだよー、さっきいっちーにもキレられたんだよ、勘弁してくれよー』
「……守くん、とりあえずちゃんと話してあげて」
膝の上にのったまま、そう小声で言うと、守くんは「しょうがないな」みたいな顔をして、再び携帯を耳に当てた。
「人混みが嫌なんだよ。花火なら家からでも見れるし。他のやつ誘えば」
『他のやつはみんな彼女と行くそうです』
「御愁傷様」
『心が痛い。で、さっきフリーないっちーも誘ったんだけど、めんどくさいから行かないって言われた……だから守!お前しかいないんだ!』
「は?一緒にするな、俺だって――」
守くんは、ちらっと僕を見た。
けれど「……いや」と、慌てて目を反らした。
……え?何、今の。すごい可愛いんだけど。
今電話してなかったら襲ってる。
「とにかく、俺は行かないからな」
『えー!オレ、祭のかき氷とはしまき食べないと夏が終われないんだけどー!』
「それだけなら一人で行けよ」
『家族連れと恋人同士の大群に一人で参戦は嫌です』
「じゃあ、道のすいてる昼間に行って、それだけ買ってきて帰れば」
守くんは、投げやりに言った。
……電話の向こうが、暫し沈黙する。
『…………天才か?』
「お前がバカ」
話はまとまったらしく、守くんは通話を切った。
「そういえば、まことははるに誘われてないのか?」
「うん。そこまで親しいわけじゃないから」
「いや……たぶん、彼女いると思われてるな」
守くんはちょっと笑う。
そうしながら、片手でスマホの電源を切ったのが見えた。
笑い返して、守くんの首の後ろに手を回す。
「彼氏ならいるけどね」
「はいはい」
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