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二章 一学期最終日
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「……意味わからない……理解が追い付かない……」
「まだ言ってる」
「悠長に菓子食うなよ。ふざけんなよ」
ベッドに寝ている俺の隣で、そいつはぽりぽり音をたて、食べ出したらキリがない例のじゃがいものお菓子を食べている。
「……にしても、守くんが今まで彼女いなかったのすごく意外だよ。初めてが僕なんて嬉しいな」
「今度それ言ったらブッ殺すぞテメェ」
自分がモテること自覚して言ってんのかこいつは。
だとしたらほんと腹立つな。
……先に言っておくが、俺たちは最後までしたわけじゃない。
さすがに何の準備もなしで、そーいうことはできねぇし。
ただちょっとあの……服は脱いだけど……とにかくアウトではない、セーフだ、セーフ。
………………自信ないけど。
「わかったよ……。けど、守くんのこと、色々わかって嬉しい」
佐々野は爽やかに笑って、
「すぐ声出ちゃうとことかほんと可愛いよね」
「あああああああ」
聞きたくない聞きたくない。枕に突っ伏す。
部屋はクーラーが効いてるはずなのに、顔が熱い。
そのまま顔を上げないでいると、「ふふっ」という笑い声が聞こえた。ふざけんな。マジふざけんな。
「……お菓子食べないの?僕が全部食べちゃうよ」
「は?食わせろよ」
起き上がると、佐々野はニコッと笑った。
慌てて目をそらす。
……やばい。さっきのを思い出して、まともに顔が見れない。
二人で黙々とお菓子を食べていると、佐々野は思い出したように言った。
「……そういえば、もうすぐお昼ご飯だね」
「あ、そうだな。帰らなくていいのか?」
テストは三時間目で終わったから、今、ちょうど十二時だ。
「今日はみんな家にいないんだよね。だから何か買って帰ろうと思ってたけど」
「俺も。じゃあ、一緒に食いにいく?」
「えっ、いいの?!やったー!初デートだねっ!」
「あ?」
「ん?」
デート、なのかはともかく、家を出て近くの商店街に来た。
「何食う?」
「ドーナツとかいいよね」
「あ、いいな。俺あのソバのやつ食べたい」
「じゃあ、そうしよう。美味しいよねあれ」
「うん。佐々野とは味の好みが合うよな」
そんな話をしながら、人通りの多いその通りを歩く。
あ……『佐々野』、か。
「……そうだ、俺も下の名前で呼ぶよ」
「え?」
「まことって」
佐々野、いや、まことは驚いたように目を瞬いた。
そして、俺の腕をつかみ、真剣な顔で、
「……やっぱさ、帰ってさっきの続きしない?」
「断る」
手を振りほどいた。
「お願い!じゃあ、テイクアウトにして、ドーナツと守くんを食べたい」
「誰が食われるか」
「さっき食われかけた癖になに言ってるの」
「……そ、それはほら、咄嗟だったし、その」
「守くん、ずっとそういってるけどさー……」
もごもごしていると、まことは、周りに聞こえないような小さな声で囁いた。
「ほんとは、そういうこと、されるの好きでしょ?」
「…………っ」
……強く否定できない。
だって実際、まことにされるの、自分でするより気持ち良……って、何考えてんだ俺は!
だ、大体、何でこんな公衆の面前で、言葉攻めにあわないといけないんだよ!
「……やっぱ、別れる!だいたい男同士とか、どうかしてる!」
「えー、関係ないって言ってなかった?」
「気が変わったんだよ」
「それにさっき、男の僕にされてあんなイっ――」
「あーっ!!!あああ!!!」
思わず大声を出すと、周りの人が何事かと見てきた。
二重で恥ずかしい思いをして、黙りこむ。
まことは、フッと、普段あまり見せない妖しい笑みを浮かべた。
「このまま付き合ってくれたら、気持ちいいこといっぱいしてあげるよ?」
「………………」
「僕のこと、嫌いじゃないんでしょ?」
「………………」
「大好きだよ、守くん」
「………………」
……頭の中、ショートしそう。
「ま、とりあえずご飯食べに行こうよ」
まことはそう言って、いつもの爽やかな笑顔に戻り、楽しそうに、俺の手を引いた。
蒸し暑い外から、涼しい店内へ入る。
「何がいいかな。あ、冷やし中華があるよ」
さっきの具合はどこにいったのか、まことはいつものように明るく笑いかける。
呆れながらふと前を向くと、カウンターの向こうに、その誠を熱いまなざしで見つめる若い女の店員がいた。
「冷やし中華、おすすめですよ~!」
「そうですか?じゃあそうしようかな」
「はい!こちらセットになっておりまして~――」
店員は飛びっきりの笑顔で、まことに話しかける。
……騙されてる……騙されてるぞ店員……。
こいつは爽やかイケメンじゃない、ただの変態だ。
「まだ言ってる」
「悠長に菓子食うなよ。ふざけんなよ」
ベッドに寝ている俺の隣で、そいつはぽりぽり音をたて、食べ出したらキリがない例のじゃがいものお菓子を食べている。
「……にしても、守くんが今まで彼女いなかったのすごく意外だよ。初めてが僕なんて嬉しいな」
「今度それ言ったらブッ殺すぞテメェ」
自分がモテること自覚して言ってんのかこいつは。
だとしたらほんと腹立つな。
……先に言っておくが、俺たちは最後までしたわけじゃない。
さすがに何の準備もなしで、そーいうことはできねぇし。
ただちょっとあの……服は脱いだけど……とにかくアウトではない、セーフだ、セーフ。
………………自信ないけど。
「わかったよ……。けど、守くんのこと、色々わかって嬉しい」
佐々野は爽やかに笑って、
「すぐ声出ちゃうとことかほんと可愛いよね」
「あああああああ」
聞きたくない聞きたくない。枕に突っ伏す。
部屋はクーラーが効いてるはずなのに、顔が熱い。
そのまま顔を上げないでいると、「ふふっ」という笑い声が聞こえた。ふざけんな。マジふざけんな。
「……お菓子食べないの?僕が全部食べちゃうよ」
「は?食わせろよ」
起き上がると、佐々野はニコッと笑った。
慌てて目をそらす。
……やばい。さっきのを思い出して、まともに顔が見れない。
二人で黙々とお菓子を食べていると、佐々野は思い出したように言った。
「……そういえば、もうすぐお昼ご飯だね」
「あ、そうだな。帰らなくていいのか?」
テストは三時間目で終わったから、今、ちょうど十二時だ。
「今日はみんな家にいないんだよね。だから何か買って帰ろうと思ってたけど」
「俺も。じゃあ、一緒に食いにいく?」
「えっ、いいの?!やったー!初デートだねっ!」
「あ?」
「ん?」
デート、なのかはともかく、家を出て近くの商店街に来た。
「何食う?」
「ドーナツとかいいよね」
「あ、いいな。俺あのソバのやつ食べたい」
「じゃあ、そうしよう。美味しいよねあれ」
「うん。佐々野とは味の好みが合うよな」
そんな話をしながら、人通りの多いその通りを歩く。
あ……『佐々野』、か。
「……そうだ、俺も下の名前で呼ぶよ」
「え?」
「まことって」
佐々野、いや、まことは驚いたように目を瞬いた。
そして、俺の腕をつかみ、真剣な顔で、
「……やっぱさ、帰ってさっきの続きしない?」
「断る」
手を振りほどいた。
「お願い!じゃあ、テイクアウトにして、ドーナツと守くんを食べたい」
「誰が食われるか」
「さっき食われかけた癖になに言ってるの」
「……そ、それはほら、咄嗟だったし、その」
「守くん、ずっとそういってるけどさー……」
もごもごしていると、まことは、周りに聞こえないような小さな声で囁いた。
「ほんとは、そういうこと、されるの好きでしょ?」
「…………っ」
……強く否定できない。
だって実際、まことにされるの、自分でするより気持ち良……って、何考えてんだ俺は!
だ、大体、何でこんな公衆の面前で、言葉攻めにあわないといけないんだよ!
「……やっぱ、別れる!だいたい男同士とか、どうかしてる!」
「えー、関係ないって言ってなかった?」
「気が変わったんだよ」
「それにさっき、男の僕にされてあんなイっ――」
「あーっ!!!あああ!!!」
思わず大声を出すと、周りの人が何事かと見てきた。
二重で恥ずかしい思いをして、黙りこむ。
まことは、フッと、普段あまり見せない妖しい笑みを浮かべた。
「このまま付き合ってくれたら、気持ちいいこといっぱいしてあげるよ?」
「………………」
「僕のこと、嫌いじゃないんでしょ?」
「………………」
「大好きだよ、守くん」
「………………」
……頭の中、ショートしそう。
「ま、とりあえずご飯食べに行こうよ」
まことはそう言って、いつもの爽やかな笑顔に戻り、楽しそうに、俺の手を引いた。
蒸し暑い外から、涼しい店内へ入る。
「何がいいかな。あ、冷やし中華があるよ」
さっきの具合はどこにいったのか、まことはいつものように明るく笑いかける。
呆れながらふと前を向くと、カウンターの向こうに、その誠を熱いまなざしで見つめる若い女の店員がいた。
「冷やし中華、おすすめですよ~!」
「そうですか?じゃあそうしようかな」
「はい!こちらセットになっておりまして~――」
店員は飛びっきりの笑顔で、まことに話しかける。
……騙されてる……騙されてるぞ店員……。
こいつは爽やかイケメンじゃない、ただの変態だ。
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