まこまも

No.26

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二章 一学期最終日

02

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side:まこと

「散らかってるけど」
 初めて来た守くんの部屋は、イメージ通りの雰囲気だった。
 壁にはバンドのポスターや写真がぺたぺた貼られていて、床には本棚から溢れた漫画が十何冊か積まれている。
 そして参考書などが置かれた勉強机、ベッドにはかっこいい赤のヘッドフォンがあった。
 整っているけど、生活感がある部屋。
「漫画がたくさんあるね」
「好きなの読んでいいよ」
「んー、沢山ありすぎて……」
 鞄を側に置き正座して、カラーボックスに並んだ沢山のタイトルに、目を皿にする。
「普段は小説しか読まないからなぁ」
「そんなこと言ってたな」
「どれがおすすめ?」
「んー、そうだな……」
 そういうと守くんは、ひざをついたまま、僕に後ろから寄りかかった。
 わ、わっ……。
 守くんの体温を感じて、ドクンと心臓が跳ね上がる。
 顔に熱があつまるのを感じた。
 守くんの髪の毛が、さらりと耳を掠める。
 ドキドキしながら守くんを見上げたけど、守くんは漫画選びに夢中だ。
 口元が少し笑っていて、ちょっと可愛い。
「これとか面白いぞ。ファンタジーなんだけど……」
 あらすじを語る守くんを、ぼうっと見つめてしまう。
 綺麗な声だな。もっと、色んな守くんを見てみたいな……。
「……佐々野?」
「……っ!」
 守くんに顔を覗きこまれ、はっと我に返る。
 い、いま、僕……。
「な、なんでもないっ!それにするよ!」
 慌てて返事をして、本を受け取り、すぐさまその場を離れた。
(二人っきり……二人っきりなんだよね……)
 それに改めて気がついて、ドクドクと胸の音が高まる。
 守くんは横で漫画を読み始めていて、僕の様子に気がついてないみたい。
 本を開いてみるけど、全然集中できなかった。
 はーっとため息をつき、本を閉じる。
 今日は、そういうことをしに来たんじゃない。一回、頭を冷ましてこよう。
「守くん、ちょっとトイレ借りていい?」
「ん?ああ、いいよ、案内する」
 守くんが本を閉じてそう言ったので、僕は慌てた。
「場所だけ教えてもらえたら大丈夫だよ」
「遠慮するなよ。案内するから」
「ち、ちが、ほんとに……」
 けれど、守くんがちょっと笑って。
 それが本当に可愛くて、綺麗で、好きで――。
 ああ、もうなんか、どうでもいいや。
「守くん」
「ん。……?!」
 彼の手を、ぐっと引っ張り、バランスを崩す。
 そして僕も膝をついて、唇を重ねた。
「っ?!」
 守くんは驚いて、ばっと僕から離れる。
 けど無理矢理引き寄せて、何度も、唇を重ねた。
 その音に、次第に水音が混ざってゆく。
 舌を舐めると、守くんがビクッと震えたが、構わず深いキスをした。
「……っは、」
 一度唇を離すと、つうっと銀の糸が垂れ、守くんは恥じるようにさっと手の甲で口を押さえた。
「いきなり、なんだよ……っ」
 守くんは頬を赤く染めて、ちらちらと僕を伺っていた。
「ダメ? キスなら、さっきもしたじゃん」
「だ、だって、あれは……こういうのじゃないし……」
 わかりやすく動揺して、目を泳がせる守くん。
 ああ、可愛いな……。
「……ムラムラする」
「はあ?!」
 驚く守くんを、床に押し倒した。
「な、何を」
「守くん、好き」
「…………っ」
「好き。好き。もう……どうにかなりそう……」
 ネクタイを緩めると、守くんは慌てて僕の手を止めた。
「ほ……ほんとに、こういう意味で……俺のこと、好きなの?」
「そうだって、ずっと言ってるじゃん」
 守くんはどうしたらいいのかわからない様子で、僕を見上げていた。
「……家に呼んだのも、こういう状況にしたのも、守くんだよ?」
「……それは」
「僕と、こういうことするの嫌?」
 僕の言葉に、守くんは答えない。
 きっと、答えられないんだろう。
「可愛い」
 笑って、首に口づけを落とした。
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