まこまも

No.26

文字の大きさ
上 下
5 / 38
一章 梅雨明け

05

しおりを挟む
 そういえば、机の上に置きっぱなしにしていた気がする。
「あー、ありがと」
 一応礼を言うと、佐々野はニコッと笑った。
 本人は良いことをしたって思ってるんだろうが、別に明日も学校に来るし、筆箱なくたって困らねえよ。
 めんどくさいな。
「じゃあな」
 とっとと帰ろうと、すぐに踵を返したが、
「須貝くんも西門側なの?」
 ……お前まだ着いてくるのか。
 いい加減キレそうになりながら、「そうだけど」と無愛想な返事を返す。
 しかし佐々野は笑って、
「いいじゃん、途中まで一緒に帰ろうよ」
 そんなことを抜かす。
 いや、どう見ても、俺がお前のこと嫌ってるのわかるだろ。
 何なんだよ、鈍感か。
「チッ……途中までな」
「やったー」
 舌打ちしたにも関わらず、佐々野は嬉しそうに俺の隣を歩く。
 ああ、わかったよ……そうやって、不良みたいな俺と仲良くできてる自分が好きなんだろ?
 ため息をつきながら、駅の方へ歩いた。
「なんで着いてくんだよ」
「僕も電車だから」
 佐々野がそう嬉しそうに答えたので、俺はちゃんと聞こえるように舌打ちをした。
 しかし佐々野は怯まない。
 しかも乗る電車も同じ。
 佐々野が隣に来られないように、わざとはじっこの一人分だけ空いた席へ座った。
 佐々野は俺の目の前に立って、手すりを掴んでいる。
「どこで降りるの?」
「………………」
 聞かれたが、鞄に顔を埋め、寝たふりを決め込む。
 しかし、一駅過ぎると俺の隣が空いたので、佐々野は隣に座った。
 けれども幸い、佐々野は話しかけることはなく、スマートフォンをいじっていた。
 そして降りる駅になり、立ち上がる。
 佐々野も同じように立ち上がる。
 俺はとても嫌そうな目を彼に向けた。
「なんで着いてくんだよ」
「僕もこの駅なんだ」
「はあ?」
 話しながら、一緒に電車を降りる。
「嘘つけ」
 「ほんとだよ。ほら見てよ、定期」
 確かに定期券には、学校付近の駅からこの駅まで、と記されていた。
 盛大にため息をつく。
「ねえ、僕のことそんなに嫌い?」
「嫌い」
 即答。
 他の乗客たちは下の改札口へ向かっていて、駅にはもう、俺たち以外に人はいなかった。
「なんで?」
 佐々野は俺を見上げる。
 彼は平均より少し背が低い。
 顔立ちも男らしいというより、ジャニーズ系というか……可愛い感じなんだな。
 ……じゃなくて。
「逆に、なんでお前は俺に近づくんだよ」
 色々思いながらも、質問に質問で返す。
 やっぱ、はっきり言わなきゃダメだ。
 俺はズボンのポケットに手を突っ込み、
「嫌なんだよ、お前みたいな優等生。真面目ぶってて。どうせこの髪だって悪く――」
 「思ってないよ!」
 強い声に、俺は口をつぐんだ。
 佐々野は声を荒らげたのが恥ずかしかったのか、気まずそうに目をそらし、
「その、須貝くんの赤い髪……かっこいいと思う」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

上司と俺のSM関係

雫@3日更新予定あり
BL
タイトルの通りです。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!? ※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。 いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。 しかしまだ問題が残っていた。 その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。 果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか? また、恋の行方は如何に。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...