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一章 梅雨明け
01
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side:まこと
「守くーん!」
梅雨の雨上がりの通学路、そこに大好きな友達の背中を見つけて突進する。
「いってぇな、佐々野。殺すぞ」
そしてその大好きな友達、僕のことをすごい目付きで睨んできたのは、愛しの守くん。
さらさらの黒い髪を少し長めに伸ばし、一部に赤いメッシュを入れている。胸元のネクタイを緩め、ズボンからYシャツを出していた。
あまり笑わないのもあって、不良に間違えられるけれど、守くんはすごく優しいんだよ。
あと、背が高くて、かっこいい!
そのまま抱き締め、胸に顔を埋める。
はあ、めっちゃいい匂いする……。
「……おい」
「あ、ごめんね」
本気で迷惑そうな顔をされたので、慌てて離し、微笑んだ。
「おはよう、守くん。今日も荷物重いねー」
「そうだな。めんどくせぇ」
守くんはそうぼやいて、鞄の紐をかけなおした。
今日の授業は何だっけ、とか、他愛ない会話をしながら学校に向かう。
学校が近づくにつれて、周りに生徒が多くなってきた。
「――サクラ、ほら、佐々野くんだよ!」
「えっ!あっ、ほんとだ!今日もかっこいいー!」
「もー、早く告白しちゃいなよ!」
「む、無理だよ~、あんなハイスペックなイケメン――」
……そんな高い声が聞こえて、とても居心地が悪くなる。
佐々野。僕の名字だ。
「……相変わらずモテるよな。適当にでも彼女作ればいいのに。虫除けになるだろ」
「もう、僕はそういうのはいいって言ってるじゃないか」
わざと怒って言うと、守くんはフッと笑う。
あまり見せないその笑顔に、僕の胸は高鳴った。
――『そういうのはいい』。いつも口ではそう言っているが、本当は違う。
僕は、守くんが好きだ。
友達の枠を越えて、恋愛的な意味で。
*
『一目惚れ』。
よく聞く言葉だけど、経験したことは一度もない。
物語の中の話だけだと、そう思い込んでいた。
だから、思ってもみなかったんだ。
僕――佐々野誠(ささのまこと)が、高校二年生初日に、一目惚れをすることになるなんて。
「……!」
あ、好きだ。
『その人』の姿を見て、直感的に思ってしまった。
そして僕の後ろの席の『その人』は、前を見つめ、すこし気だるそうに口を開く。
「須貝守(すがいまもる)です。去年はE組でした。部活は入っていません。終わりです」
低い声でそう言い放ち、すぐに席に座った。
短い自己紹介に、ぱらぱらと拍手が起こる。
しかし僕だけではなく、誰もが今、彼を見つめ続けていた。
「ねえ、あの人、髪……」
「赤、だよね」
彼は、左側の横髪の一部だけ、赤を入れていた。
この学校では珍しい、メッシュの男子。
確かに髪を染めることは校則には引っ掛かっていないが、こうした個性派は、うちの学校にはあまりいなかった。
…………不良?
しかし次の人に自己紹介が移ると、皆はそちらを振り向いた。
でも僕は、須貝くんから目が離せない。
少し長めに切られた髪は、彼の目を少し隠している。
目付きは鋭く、自己紹介の際も始終無表情だったが、よく見ると瞳は大きめだ。
けしてすごいイケメンというわけではないが、顔立ちは整っていて、どことなく色気を感じる。
シャツのボタンは三つめまで開けられて、中の黒いインナーが見え――
「お前、さっきから何?」
須貝くんは僕を睨みながら、そう呟くように聞いた。
そこで自分が、彼をずっと見つめていたことに気がついた。
「な、何でもない」
ハッとして、急いで前を向き直るも、頬は熱いし、心臓はまだドキドキと高鳴ったまま。
もう、これを恋だと否定できなかった。
「守くーん!」
梅雨の雨上がりの通学路、そこに大好きな友達の背中を見つけて突進する。
「いってぇな、佐々野。殺すぞ」
そしてその大好きな友達、僕のことをすごい目付きで睨んできたのは、愛しの守くん。
さらさらの黒い髪を少し長めに伸ばし、一部に赤いメッシュを入れている。胸元のネクタイを緩め、ズボンからYシャツを出していた。
あまり笑わないのもあって、不良に間違えられるけれど、守くんはすごく優しいんだよ。
あと、背が高くて、かっこいい!
そのまま抱き締め、胸に顔を埋める。
はあ、めっちゃいい匂いする……。
「……おい」
「あ、ごめんね」
本気で迷惑そうな顔をされたので、慌てて離し、微笑んだ。
「おはよう、守くん。今日も荷物重いねー」
「そうだな。めんどくせぇ」
守くんはそうぼやいて、鞄の紐をかけなおした。
今日の授業は何だっけ、とか、他愛ない会話をしながら学校に向かう。
学校が近づくにつれて、周りに生徒が多くなってきた。
「――サクラ、ほら、佐々野くんだよ!」
「えっ!あっ、ほんとだ!今日もかっこいいー!」
「もー、早く告白しちゃいなよ!」
「む、無理だよ~、あんなハイスペックなイケメン――」
……そんな高い声が聞こえて、とても居心地が悪くなる。
佐々野。僕の名字だ。
「……相変わらずモテるよな。適当にでも彼女作ればいいのに。虫除けになるだろ」
「もう、僕はそういうのはいいって言ってるじゃないか」
わざと怒って言うと、守くんはフッと笑う。
あまり見せないその笑顔に、僕の胸は高鳴った。
――『そういうのはいい』。いつも口ではそう言っているが、本当は違う。
僕は、守くんが好きだ。
友達の枠を越えて、恋愛的な意味で。
*
『一目惚れ』。
よく聞く言葉だけど、経験したことは一度もない。
物語の中の話だけだと、そう思い込んでいた。
だから、思ってもみなかったんだ。
僕――佐々野誠(ささのまこと)が、高校二年生初日に、一目惚れをすることになるなんて。
「……!」
あ、好きだ。
『その人』の姿を見て、直感的に思ってしまった。
そして僕の後ろの席の『その人』は、前を見つめ、すこし気だるそうに口を開く。
「須貝守(すがいまもる)です。去年はE組でした。部活は入っていません。終わりです」
低い声でそう言い放ち、すぐに席に座った。
短い自己紹介に、ぱらぱらと拍手が起こる。
しかし僕だけではなく、誰もが今、彼を見つめ続けていた。
「ねえ、あの人、髪……」
「赤、だよね」
彼は、左側の横髪の一部だけ、赤を入れていた。
この学校では珍しい、メッシュの男子。
確かに髪を染めることは校則には引っ掛かっていないが、こうした個性派は、うちの学校にはあまりいなかった。
…………不良?
しかし次の人に自己紹介が移ると、皆はそちらを振り向いた。
でも僕は、須貝くんから目が離せない。
少し長めに切られた髪は、彼の目を少し隠している。
目付きは鋭く、自己紹介の際も始終無表情だったが、よく見ると瞳は大きめだ。
けしてすごいイケメンというわけではないが、顔立ちは整っていて、どことなく色気を感じる。
シャツのボタンは三つめまで開けられて、中の黒いインナーが見え――
「お前、さっきから何?」
須貝くんは僕を睨みながら、そう呟くように聞いた。
そこで自分が、彼をずっと見つめていたことに気がついた。
「な、何でもない」
ハッとして、急いで前を向き直るも、頬は熱いし、心臓はまだドキドキと高鳴ったまま。
もう、これを恋だと否定できなかった。
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