463 / 475
そっくり
しおりを挟む
「「いらっしゃいませっ!!」」
「…………」
「お前たち……いたのか」
呆れたように呟くククルに、ああ彼らが噂の息子たちかと変に納得してしまった。
キラキラとした目でこちらを見てくる2人は、わくわくと縁の話しを聞くククルにそっくりで名乗られてもいないのに頷いてしまう。
「父さんが母さんを連れて行くのが見えてもしかしたらって」
「父さんがあそこまで慌てるなんて母さんかエニシさんのことしかないからね」
それはそれでどうなのだろうか?
縁もそれなりにククルを信頼し友人だとは思っているが、それを自分の妻と並べていいものなのだろうか。
「お前たちはそういうところは変に冷静というか……まぁいい、とりあえず挨拶しなさい」
「はじめまして!息子のクアラです」
「俺はイルアです。よろしくお願いします!」
爽やかな笑顔と共に挨拶され縁も挨拶すれば、何故か握手を求められた。
「すっげぇ、本物だ」
ホンモノ?まさかそんなことを疑われる日がくるとは思っていなかった。
「これで子持ちとか詐欺だろ。いい匂いするし」
何故子持ちだと詐欺になるのか。
いや、その前にいい匂いとはなんなのか。カツサンドだろうか?
先程からボソボソと2人で何やら呟いているのだが、全て縁の目の前で行われているため筒抜けだ。
どうしたものかとククルに視線を送れば、大きな溜め息と共に息子2人の頭に拳を落としていた。
「会えて嬉しいのは分かるが落ち着きなさい。言っておくがエニシくんに嫌われても私は何も手伝わないからな」
「「っ!?」」
殴られた痛みに涙目になったかと思えば、ククルの言葉に顔を真っ青にし、更には2人揃って土下座された。
「「申し訳ありませんでしたっ」」
間違いなくククルの血が色濃く受け継がれているようだ。
なんでこうも極端なのだろうか、この親子は。
「きちんと謝れるのはいいことですけど、人がそう簡単に頭を下げるものではありません。ただもう少し落ち着いて話しましょう?」
「「はいっ!ありがとうございます」」
………帰りたくなってきた。
気まぐれに来たのは間違いだったかなと若干の後悔があったが、帰るに帰れない状況に諦めて話すことにするのだった。
と言っても話しているのは専らククル親子3人で、縁は時々質問されたことにうんうんと頷くぐらいであったが。
「からあげというものも凄かったが、その後に食べたカツサンドというものも美味かった」
「父さんばっかズルっ!俺も食いたかった!」
「そうだな。いつもいつも父さんばっかりズルいんだよ。なんで俺たちを呼ばないんだよ」
「そうだそうだ!俺たちもあの時母さんと一緒に付いて行っていれば……」
「…………」
これは最早自分という存在は必要だろうか?
暇だなと欠伸をしながら昼寝をしたい願望と闘っていれば、どこからともなく、ぐぅ~という音が近くから聞こえてきた。
「?」
なんだなんだと周りを見回せば、顔真っ赤にして固まるイルアの姿が。
「お腹空いているんですか?」
「………そ、その………はい」
もしかして縁が来るのではと興奮して待っていて昼ご飯を食べ損ねたこと、父親のカツサンドが美味しかったという話しを聞きお腹が空いていたことを今更思い出したらしい。
その隣りではクアラもそういえばとお腹をさすっている。
「「「「………………」」」」
数分沈黙が流れる。
食べに行く様子がない兄弟にどうしたのかと首を傾げた。
「遠慮せず食べに行って構いませんよ?」
もしや客を残し席を外すのをマズいと感じたかのかと笑ってそう言ったのだが、ガックリと項垂れる姿に彼らが望んだ答えではなかったのだと分かった。
「エニシくんはお前たちの母親でもなければ、兄弟でもないんだ。言いたいこと頼みたいことがあるならちゃんと言葉にしなさい」
やはり父親、ククルには彼らが何を望んでいるのか分かっているようで、チラチラとこちらを見てくる2人に注意していた。
ククルも以前縁に注意されたことで学んだようだ。
「あ、あの……その、もし、もしよければエーー」
「エニシさんの手料理食いたいですっ!」
「いいですよ」
「え……」
何か鞄に入っていなかったかと思い出しながら、そういえば以前作り置きしておいたアレンお気に入りの肉増し増しサンドイッチがあったはずと鞄から取り出し2人に手渡す。
「マジか」
「この人ヤベェ」
あまりに呆気なく渡されたサンドイッチに呆然となっている間に、喉が渇くだろうと水も出してやると、子どもたち用に作っておいたジャムサンドも並べてやる。
「これだけあれば足りますか?」
「エニシくんっ、私も1ついただいても?」
「ククルさんはさっき食べたばっかりじゃないですか。これは息子さんたちに譲ってあげて下さい」
いくらなんでも子どもたちのをとるなと止めれば、落ち込む父親の姿に息子2人は鼻で笑うのだった。
意外に意地が悪い。
「…………」
「お前たち……いたのか」
呆れたように呟くククルに、ああ彼らが噂の息子たちかと変に納得してしまった。
キラキラとした目でこちらを見てくる2人は、わくわくと縁の話しを聞くククルにそっくりで名乗られてもいないのに頷いてしまう。
「父さんが母さんを連れて行くのが見えてもしかしたらって」
「父さんがあそこまで慌てるなんて母さんかエニシさんのことしかないからね」
それはそれでどうなのだろうか?
縁もそれなりにククルを信頼し友人だとは思っているが、それを自分の妻と並べていいものなのだろうか。
「お前たちはそういうところは変に冷静というか……まぁいい、とりあえず挨拶しなさい」
「はじめまして!息子のクアラです」
「俺はイルアです。よろしくお願いします!」
爽やかな笑顔と共に挨拶され縁も挨拶すれば、何故か握手を求められた。
「すっげぇ、本物だ」
ホンモノ?まさかそんなことを疑われる日がくるとは思っていなかった。
「これで子持ちとか詐欺だろ。いい匂いするし」
何故子持ちだと詐欺になるのか。
いや、その前にいい匂いとはなんなのか。カツサンドだろうか?
先程からボソボソと2人で何やら呟いているのだが、全て縁の目の前で行われているため筒抜けだ。
どうしたものかとククルに視線を送れば、大きな溜め息と共に息子2人の頭に拳を落としていた。
「会えて嬉しいのは分かるが落ち着きなさい。言っておくがエニシくんに嫌われても私は何も手伝わないからな」
「「っ!?」」
殴られた痛みに涙目になったかと思えば、ククルの言葉に顔を真っ青にし、更には2人揃って土下座された。
「「申し訳ありませんでしたっ」」
間違いなくククルの血が色濃く受け継がれているようだ。
なんでこうも極端なのだろうか、この親子は。
「きちんと謝れるのはいいことですけど、人がそう簡単に頭を下げるものではありません。ただもう少し落ち着いて話しましょう?」
「「はいっ!ありがとうございます」」
………帰りたくなってきた。
気まぐれに来たのは間違いだったかなと若干の後悔があったが、帰るに帰れない状況に諦めて話すことにするのだった。
と言っても話しているのは専らククル親子3人で、縁は時々質問されたことにうんうんと頷くぐらいであったが。
「からあげというものも凄かったが、その後に食べたカツサンドというものも美味かった」
「父さんばっかズルっ!俺も食いたかった!」
「そうだな。いつもいつも父さんばっかりズルいんだよ。なんで俺たちを呼ばないんだよ」
「そうだそうだ!俺たちもあの時母さんと一緒に付いて行っていれば……」
「…………」
これは最早自分という存在は必要だろうか?
暇だなと欠伸をしながら昼寝をしたい願望と闘っていれば、どこからともなく、ぐぅ~という音が近くから聞こえてきた。
「?」
なんだなんだと周りを見回せば、顔真っ赤にして固まるイルアの姿が。
「お腹空いているんですか?」
「………そ、その………はい」
もしかして縁が来るのではと興奮して待っていて昼ご飯を食べ損ねたこと、父親のカツサンドが美味しかったという話しを聞きお腹が空いていたことを今更思い出したらしい。
その隣りではクアラもそういえばとお腹をさすっている。
「「「「………………」」」」
数分沈黙が流れる。
食べに行く様子がない兄弟にどうしたのかと首を傾げた。
「遠慮せず食べに行って構いませんよ?」
もしや客を残し席を外すのをマズいと感じたかのかと笑ってそう言ったのだが、ガックリと項垂れる姿に彼らが望んだ答えではなかったのだと分かった。
「エニシくんはお前たちの母親でもなければ、兄弟でもないんだ。言いたいこと頼みたいことがあるならちゃんと言葉にしなさい」
やはり父親、ククルには彼らが何を望んでいるのか分かっているようで、チラチラとこちらを見てくる2人に注意していた。
ククルも以前縁に注意されたことで学んだようだ。
「あ、あの……その、もし、もしよければエーー」
「エニシさんの手料理食いたいですっ!」
「いいですよ」
「え……」
何か鞄に入っていなかったかと思い出しながら、そういえば以前作り置きしておいたアレンお気に入りの肉増し増しサンドイッチがあったはずと鞄から取り出し2人に手渡す。
「マジか」
「この人ヤベェ」
あまりに呆気なく渡されたサンドイッチに呆然となっている間に、喉が渇くだろうと水も出してやると、子どもたち用に作っておいたジャムサンドも並べてやる。
「これだけあれば足りますか?」
「エニシくんっ、私も1ついただいても?」
「ククルさんはさっき食べたばっかりじゃないですか。これは息子さんたちに譲ってあげて下さい」
いくらなんでも子どもたちのをとるなと止めれば、落ち込む父親の姿に息子2人は鼻で笑うのだった。
意外に意地が悪い。
31
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる