461 / 475
再確認
しおりを挟む
人の強さとは力だけではないと改めて実感した。
「……ね?大丈夫、面倒なことは私たちが全て引き受けるわ。勿論売り上げの一部はエニシくんに還元させてもらうし、貴方はただ思い付いたことを言ってくれればいいだけだから!」
だからお願い!と頭を下げてくるククル夫妻にどうしたものかとポリポリと頰をかく。
新たにカツサンドを作りギルド職員たちを大いに喜ばせていた縁たちであったが、いざ自分たちも食べようと手を伸ばしたところを何故かククルに掴まれたのだ。
突然のことに驚いたが、彼の隣りではククルの妻であるアリーも真剣な表情で縁を見つめている。
「……あの、どうされました?」
もしやカツサンドの味が気に入らなかったのかとも思ったが、見れば2人とも後一口ほどを残し、かなりのペースで食べ進めている。
ならば先程食べられなかった、から揚げの催促かなとも思ったがあまりに真剣な表情にそんなことはないだろうと考え直す。
「えーと、お話しがあるようでしたら食後にでもーー」
「「お願いしますっ!」」
え?何が?
夫妻揃って頭を下げられ、何がなんだか分からず焦る。
それなりの人数分の食事の準備に流石の縁も腹が減っていたのだが、聞いてくれるまで離さないとばかりに握られた手にどうしようかと考える。
「おかわりはいかがですか?」
「あっ、ありがとうございます」
「いただくわ」
にっこりと追加のカツサンドを差し出せば、あっさりと手を離された。
「ヨナちゃんはどうですか?美味しい?」
「うん」
子どものため一口は小さいが、少しずつ食べ進めていることから彼女のお気に召したようだ。
良かった良かったと頷く縁に、腹も満たされ落ち着いたのか先程よりは落ち着いた様子のククルたちが申し訳なかったと頭を下げてくる。
「大丈夫ですよ。ただお話しは食べながらでもいいですか?」
勿論だと頷く2人に今度こそカツサンドを頬張る。
簡易版ではあるがそれなりに上手く出来たと思う。
「私も初めて食べさせてもらったけどとても美味しいわ。このソースもお肉と、それにパンともとても合っていていいわね」
「ああ。美味しい上にこれなら持ち運ぶにも問題はない。実際冒険者の彼らにも試食してもらったが、素晴らしいと喜んでいた」
いつの間にやらコリンたちもカツサンドを食べていたらしく、情報収集に余念がないなと感心した。
「ーーーそこでなんですが、妻とも話し合って私たちの商会も少し手を広げようと思っているんです」
ほう、ほうほう。それは素晴らしい。
お肉ばかりでは辛いかなと、ククルの話しを聞きながらもヨナにジャムサンドを手渡す。
なにこれとばかりに見上げてくる顔に、甘いパンですよと言えば嬉しくそうに齧り付いていた。
「エニシくんにはそのお手伝いを頼みたいの」
ふんふん。……………ん?
完全に聞き流していたが、何か聞き捨てならない言葉を言われた気がする。
「……手伝い?」
「ああ、難しく考えないで欲しいの。ただエニシくんは感じたこと、こうした方がいいなと思ったことがあれば言ってくれればいいの」
「………?」
意味が分からず詳しく説明を求めれば、どうやら最近では醤油も味噌も売れ行きがいいらしく、ならばそれを使って小さいながらも飲食店を展開しようと考えていたらしい。
へぇ、すごいですねと完全に他人事として聞いていた縁だったが、彼らは縁にその店のメニューを考えて欲しいなどと言い出した。
「え?いや、無理ですよ。私は料理人でもありませんし」
こちらの世界での飲食店がどのようやっているかは知らないが、凝った料理を作ることも、ましてやそれでお金を払ってもらうほどの料理の腕をもっていない自分に何が出来るというのか。
無理無理と首を振る縁に、しかし2人は頭を上げてくれない。
「エニシくんは今日みたいに知っているものを思い付いた時に教えてくれるだけでいいの。どんなものでもいいわ。商品になるかどうかは私たちで判断させてもらうし、自身がないようなら私たちも協力を惜しまないわ」
なんだか随分話しが大きくなっていっている気がするのは自分だけだろうか?
そもそも何故縁にそれを求めるのかが分からない。
意味が分からないと首を傾げる縁に2人も分かったのか、苦笑いしながらもカツサンドを指差す。
「このカツサンドというのもそうだけど、始めに作ったから揚げというのも皆取り合うほどに美味しいものだったわ。以前、この人が食べさせてもらったって言う鍋もそう。味噌も醤油も、お肉につけるタレも、全てエニシくんが教えてくれたわ。だからこそ私たちは貴方にお願いしたいの」
そう言い縁を見る彼女の目はとても真っ直ぐだ。
「……ね?大丈夫、面倒なことは私たちが全て引き受けるわ。勿論売り上げの一部はエニシくんに還元させてもらうし、貴方はただ思い付いたことを言ってくれればいいだけだから!」
縁の性格を知った上での提案であり、きっとこういう手腕にククルは惚れたのだろうなと頷くのであった。
「……ね?大丈夫、面倒なことは私たちが全て引き受けるわ。勿論売り上げの一部はエニシくんに還元させてもらうし、貴方はただ思い付いたことを言ってくれればいいだけだから!」
だからお願い!と頭を下げてくるククル夫妻にどうしたものかとポリポリと頰をかく。
新たにカツサンドを作りギルド職員たちを大いに喜ばせていた縁たちであったが、いざ自分たちも食べようと手を伸ばしたところを何故かククルに掴まれたのだ。
突然のことに驚いたが、彼の隣りではククルの妻であるアリーも真剣な表情で縁を見つめている。
「……あの、どうされました?」
もしやカツサンドの味が気に入らなかったのかとも思ったが、見れば2人とも後一口ほどを残し、かなりのペースで食べ進めている。
ならば先程食べられなかった、から揚げの催促かなとも思ったがあまりに真剣な表情にそんなことはないだろうと考え直す。
「えーと、お話しがあるようでしたら食後にでもーー」
「「お願いしますっ!」」
え?何が?
夫妻揃って頭を下げられ、何がなんだか分からず焦る。
それなりの人数分の食事の準備に流石の縁も腹が減っていたのだが、聞いてくれるまで離さないとばかりに握られた手にどうしようかと考える。
「おかわりはいかがですか?」
「あっ、ありがとうございます」
「いただくわ」
にっこりと追加のカツサンドを差し出せば、あっさりと手を離された。
「ヨナちゃんはどうですか?美味しい?」
「うん」
子どものため一口は小さいが、少しずつ食べ進めていることから彼女のお気に召したようだ。
良かった良かったと頷く縁に、腹も満たされ落ち着いたのか先程よりは落ち着いた様子のククルたちが申し訳なかったと頭を下げてくる。
「大丈夫ですよ。ただお話しは食べながらでもいいですか?」
勿論だと頷く2人に今度こそカツサンドを頬張る。
簡易版ではあるがそれなりに上手く出来たと思う。
「私も初めて食べさせてもらったけどとても美味しいわ。このソースもお肉と、それにパンともとても合っていていいわね」
「ああ。美味しい上にこれなら持ち運ぶにも問題はない。実際冒険者の彼らにも試食してもらったが、素晴らしいと喜んでいた」
いつの間にやらコリンたちもカツサンドを食べていたらしく、情報収集に余念がないなと感心した。
「ーーーそこでなんですが、妻とも話し合って私たちの商会も少し手を広げようと思っているんです」
ほう、ほうほう。それは素晴らしい。
お肉ばかりでは辛いかなと、ククルの話しを聞きながらもヨナにジャムサンドを手渡す。
なにこれとばかりに見上げてくる顔に、甘いパンですよと言えば嬉しくそうに齧り付いていた。
「エニシくんにはそのお手伝いを頼みたいの」
ふんふん。……………ん?
完全に聞き流していたが、何か聞き捨てならない言葉を言われた気がする。
「……手伝い?」
「ああ、難しく考えないで欲しいの。ただエニシくんは感じたこと、こうした方がいいなと思ったことがあれば言ってくれればいいの」
「………?」
意味が分からず詳しく説明を求めれば、どうやら最近では醤油も味噌も売れ行きがいいらしく、ならばそれを使って小さいながらも飲食店を展開しようと考えていたらしい。
へぇ、すごいですねと完全に他人事として聞いていた縁だったが、彼らは縁にその店のメニューを考えて欲しいなどと言い出した。
「え?いや、無理ですよ。私は料理人でもありませんし」
こちらの世界での飲食店がどのようやっているかは知らないが、凝った料理を作ることも、ましてやそれでお金を払ってもらうほどの料理の腕をもっていない自分に何が出来るというのか。
無理無理と首を振る縁に、しかし2人は頭を上げてくれない。
「エニシくんは今日みたいに知っているものを思い付いた時に教えてくれるだけでいいの。どんなものでもいいわ。商品になるかどうかは私たちで判断させてもらうし、自身がないようなら私たちも協力を惜しまないわ」
なんだか随分話しが大きくなっていっている気がするのは自分だけだろうか?
そもそも何故縁にそれを求めるのかが分からない。
意味が分からないと首を傾げる縁に2人も分かったのか、苦笑いしながらもカツサンドを指差す。
「このカツサンドというのもそうだけど、始めに作ったから揚げというのも皆取り合うほどに美味しいものだったわ。以前、この人が食べさせてもらったって言う鍋もそう。味噌も醤油も、お肉につけるタレも、全てエニシくんが教えてくれたわ。だからこそ私たちは貴方にお願いしたいの」
そう言い縁を見る彼女の目はとても真っ直ぐだ。
「……ね?大丈夫、面倒なことは私たちが全て引き受けるわ。勿論売り上げの一部はエニシくんに還元させてもらうし、貴方はただ思い付いたことを言ってくれればいいだけだから!」
縁の性格を知った上での提案であり、きっとこういう手腕にククルは惚れたのだろうなと頷くのであった。
11
お気に入りに追加
3,696
あなたにおすすめの小説
【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜
N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間)
ハーレム要素あります。
苦手な方はご注意ください。
※タイトルの ◎ は視点が変わります
※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます
※ご都合主義です、あしからず
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される
Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木)
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!
黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。
死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。
闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。
そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。
BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)…
連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
偽物の番は溺愛に怯える
にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』
最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。
まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる