二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
上 下
454 / 475

そうですね

しおりを挟む
 起き出すだろうことは予想していたため、腕に抱き抱えながらもベッドへ寝かせることはしなかった。
 暗い部屋の中、窓から差し込む月の光りを見つめながら昔を懐かしむ。

 「…………起きちゃいました?」

 ピクリと揺れた頭に、出来れば起きないでと撫でてみたが見上げるようにこちらを見た瞳に微笑む。
 何かを探すように周りを見る姿は昔の自分もやっていたことだ。

 「まだ外は暗いですから寝てていいですよ」

 「………」

 無理だろうとは分かっていたが、もう少し寝ていなさいと背を撫で促すが、やはりというか首を振る少女に苦笑いする。

 「なら……少しお散歩しましょうか」

 起き抜けで身体が辛いだろうと抱き抱えたまま部屋を出ると、ゆっくりと廊下を歩いていく。
 昼間の冒険者たちがわいわいするギルドも、真夜中の今はシンと静まり返り少し寂しく感じる。
 安心させるように頭を撫でてやりつつ、時々名前を呼んでやる。

 「ここはね、ヨナちゃんのママたちを見つけてくれた人たちが働いている所なんですよ」

 彼女を心配し、何か力になれればと部屋を貸してくれた。
 本当はもっと手を貸したいのだろうが、何をしたらいいか分からず戸惑っているようだ。

 「ママたちを寝かせてあげられるように用意もしてくれました」

 職員の知り合いとは言え、他人にもかかわらずマーガレットたちは動いてくれた。
 縁の頼みも嫌な顔1つせず聞いてくれ、今も心配なのか起きて部屋にいるらしく、灯りも漏れる部屋が1つだけあった。

 「お婆ちゃん入っていいですか?」

 「…………やっぱり起きてたのかい。いいよ、入ってきな」

 寝ている可能性も考え小声で声をかけたが、案の定返ってきた声に良かったと少しお邪魔することにした。

 「眠れないのかい?」

 「さっきまで寝てたんですけど、ちょっと目が覚めちゃったみたいです」

 ね?と微笑みかければ、マーガレットたちの存在に戸惑いながらも小さく頷いた。

 「眠れないので少し散歩をしていたんですけど、マーガレットさんたちも無理せずきちんと休んで下さいよ」

 あやれやこと世話を焼いてくれたマーガレットたちに早く休んでほしいと伝えたが、首を振り、仕事が残っているからと聞いてくれない。

 「なら少し休憩しませんか?」

 お茶をしようと誘えば、待ってましたとばかりに突如として現れたジンがさっとカップを差し出してきた。
 ………いつから用意していたのか。

 「ヨナちゃんにはミルクにしたよ。飲めるかい?」

 目の前のカップにキョトンとしていたが縁の方を見上げると、数秒黙り込みカップを受け取っていた。
 縁が何も言わないことから大丈夫だと判断したらしい。

 「ヨナちゃんにあげた袋、このお爺ちゃんが作ってくれたんですよ。すごいでしょ?おじさんは縫い物が下手なので無理でした」

 「……アンタがおじさんなんて言うと違和感があるね」

 「そうですか?私だってもういい歳ですよ」

 子が成長すると共に縁だって日々成長していくのだ。
 子どもたちのためにも少しでも長生きしたいが、悲しいかな時間は止まってくれない。

 「私たちの中では君は出会った時の歳のままだからね。それに見た目だって変わらないじゃないか」

 「そんなはずは………」

 ある、かもしれない。
 年々エルとの身長差は開いていき、アズにしてももうすぐ縁の肩程までになっている。
 悔しいので口にはしないが、時々ズルイとエルに擽り攻撃を仕掛けている。
 元々肉が付きにくいのか、一向に体重が増えることも筋肉がつく気配もない。
 これはむしろ何か呪いでもかかっているのではと最近は疑っている。
 
 「アンタはそのままでいいよ。ゴツいバカ共は毎日イヤでも目に入ってくるからね」

 「ゴツい……」

 胸元を見る。
 数秒考え顔を上げれば、さっと顔を逸らされた2人にきっと協力は見込めないだろうと悟った。

 「ヨナちゃん、明日は一緒にお肉を食べましょうか」

 「?」

 突然のことに首を傾げていたが、分かったとばかりに頷く頭を撫でてやる。
 これで味方?仲間?が出来た。
 
 「お婆ちゃんたちも一緒に食べましょ?」

 「いいーー」

 「いいね、いいね!何か他に必要なものはあるかい?」

 賛成だとマーガレットが答える前にジンがいいねと食い気味に頷いてきた。

 「お腹空いているんですか?」

 あまりの勢いにまさかお腹が空いているのかと思ったのだが、久しぶりに一緒に縁の料理が食べられることを喜んでくれたらしい。
 喜んでもらえるのは嬉しいが、そこまで凝った料理を彼らに作ったことはないため少々申し訳なくなった。

 「それならアイツも呼んでやりな」

 「アイツ?」

 マーガレットが態々誰かを呼ぶのは珍しいなと思っていれば……

 「ククルだよ。忘れてたが、アンタが来たら連絡してくれって言われてたんだ」

 そういえばその後の話しを聞いていなかったなと今更思い出した縁であった。
 

 
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜

N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間) ハーレム要素あります。 苦手な方はご注意ください。 ※タイトルの ◎ は視点が変わります ※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます ※ご都合主義です、あしからず

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される

Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木) 読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!! 黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。 死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。 闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。 そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。 BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)… 連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。 拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。 Noah

偽物の番は溺愛に怯える

にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』 最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。 まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...