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分からない
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「ギルマスっ!」
バタバタと普段ならしないだろう騒がしい音を立てて入ってきた職員に驚いた。
就業時間前だというのに礼儀正しい彼女が戸をノックすることなく、額には汗を流し顔色も強張っている。
「ギッ、ギルマスっ!助けて下さい!」
そう言われ何かただならぬことがあったのだと悟ると、すぐさま彼女にその場所に案内させる。
隣りにいたジンも何か感じたのか何も言わず後ろをついてくる。
「わ、わたし、どう、どうしたらいいか分からなくてっ」
今にも泣き出しそうに声を震わせる彼女を何とか落ち着かせつつ、案内された家に入っていけば………
「なっ!?」
「これは……酷いな」
あまりの惨状にジンも顔を歪ませ言葉を無くしていた。
部屋はそこら中荒らされ酷いものだったが、何より酷かったのはその部屋の中央。
女性2人が裸で床に転がされていた。
変な方向に曲げられた手足、殴られたのだろう顔は腫れ上がり元の顔が分からないほどだった。
抵抗したためか身体中に傷跡があり、股の間から流れる血は女性として暴力を振るわれたのだと分かり手が震えた。
泥棒もしくは、暴行目的の犯行か分からないが、有り得ない光景に言葉が出てこない。
「わ、わたし…か、彼女と約束してて、で、でも、いくら声をかけても出てこなかったから様子を見ようとして入ってきたら………」
友人だったのだろう。
会う用事があり訪れたはいいがいくら声をかけても応答がないため心配になり少し様子を伺おうとして発見したらしい。
「ど、どうしていいか分からなくて……。で、でも誰かに知らせなきゃって、わ、わたしそれでーー」
「分かった。ここは私らで見ておくからアンタは憲兵を呼んできな。いいかい、焦らなくていいから状況を説明しておいで」
彼女の精神はすでに限界だろうと人を呼びに行かせると、何か手がかりでもないかと周りを見て回る。
「マーガレット大丈夫かい?ここは私が見ておくから君は外にーー」
マーガレットを想い外で待っているよう促そうとしたジンだが、その瞬間ガタガタと奥の方で音が聞こえてきた。
まさか犯人が残っていたのかと臨戦態勢をとった2人だったが……
「こ、こども?」
ペタペタと小さな足音を立て入ってきた幼い少女の姿に力が抜けた。
そのまま何も言わず駆け寄ってきた少女は、何を思ったのか床に転がされている遺体の側に座ると寄り添うように横になった。
その行動にそれが少女の母親なのだろうと思った。
この悲惨な状況で母親に寄り添い眠る少女の姿はあまりにも異様ではあったが、まだ幼く状況を理解していないのか、はたまた全て知っているからこその行動なのか自分には分からない。
こんな状況とは言え母親を求める少女を離していいものなのか。
泣き喚くわけでもなく、ただ静かに母親の隣り眠る姿にマーガレットたちはどうしていいか分からず行動出来ずにいるのだった。
それからどれだけ経ったのか、駆け込んできた憲兵たちも部屋の惨状に言葉を無くしていた。
「この子は?」
「ヨナちゃんっ!無事だったのね!」
遺体に縋り付き眠る少女の姿に憲兵も戸惑っており、しかし名を呼び駆け寄ってきた先程の彼女が殺された彼女たちの娘なのだと説明してくれる。
「娘のヨナちゃんです。姿が見えなかったから、もしかして彼女もかと思ったんですけど………無事でよかった」
状況が状況だけに素直に喜んでいいのか分からなかったが、命が無事だったことは良かったのだろう。
状況確認などに外に出ているように言われ出ようとしたが、その瞬間少女が目を覚まし暴れ出した。
「ヨナちゃん!ヨナちゃん大丈夫だから!」
声こそなかったがヤダヤダと首を振り遺体に縋り付く姿に憲兵たちも無理矢理引き離すのを躊躇っている。
しかしこのままではいけないだろうと思っていると、それまで後ろで様子を窺っていたジンが少女に近寄り気絶させると脇に抱えて外へ向かうのだった。
「…………悪かったね」
「こういう役は私の方が合ってるからね」
結局何も出来ず見ているだけだった自分に謝罪すれば、気にしなくていいと笑って許してくれた。
こういう時彼が旦那で良かったと心から思う。
「この子はどうしたらいいのかなぁ」
連れ出してきたはいいが、力なく腕に抱き抱えられる少女をどうしたらいいのかマーガレットも分からなかった。
誰か頼りになる親族はいるのか確認してみたがいないらしく、ならば教会にと話しが進む中マーガレットが待ったをかける。
「…………エニシくんに頼んでみるかい?」
どう話していいかと悩むマーガレットに、察したジンがそれもいいかもしれないねと頷いてくれる。
「頼むだけ頼んでみよう。大丈夫、彼は嫌なら嫌と言える子だよ。君が頼んだからと言って無理をすることはないし、ダメならその時は教会に預けることにしよう」
何が正解か分からない。
子を育てたこともなければ、産むことも出来ない自分が意見を言っていいのか分からなかったが、先程見た少女の姿が頭に焼き付いて離れないのだった。
バタバタと普段ならしないだろう騒がしい音を立てて入ってきた職員に驚いた。
就業時間前だというのに礼儀正しい彼女が戸をノックすることなく、額には汗を流し顔色も強張っている。
「ギッ、ギルマスっ!助けて下さい!」
そう言われ何かただならぬことがあったのだと悟ると、すぐさま彼女にその場所に案内させる。
隣りにいたジンも何か感じたのか何も言わず後ろをついてくる。
「わ、わたし、どう、どうしたらいいか分からなくてっ」
今にも泣き出しそうに声を震わせる彼女を何とか落ち着かせつつ、案内された家に入っていけば………
「なっ!?」
「これは……酷いな」
あまりの惨状にジンも顔を歪ませ言葉を無くしていた。
部屋はそこら中荒らされ酷いものだったが、何より酷かったのはその部屋の中央。
女性2人が裸で床に転がされていた。
変な方向に曲げられた手足、殴られたのだろう顔は腫れ上がり元の顔が分からないほどだった。
抵抗したためか身体中に傷跡があり、股の間から流れる血は女性として暴力を振るわれたのだと分かり手が震えた。
泥棒もしくは、暴行目的の犯行か分からないが、有り得ない光景に言葉が出てこない。
「わ、わたし…か、彼女と約束してて、で、でも、いくら声をかけても出てこなかったから様子を見ようとして入ってきたら………」
友人だったのだろう。
会う用事があり訪れたはいいがいくら声をかけても応答がないため心配になり少し様子を伺おうとして発見したらしい。
「ど、どうしていいか分からなくて……。で、でも誰かに知らせなきゃって、わ、わたしそれでーー」
「分かった。ここは私らで見ておくからアンタは憲兵を呼んできな。いいかい、焦らなくていいから状況を説明しておいで」
彼女の精神はすでに限界だろうと人を呼びに行かせると、何か手がかりでもないかと周りを見て回る。
「マーガレット大丈夫かい?ここは私が見ておくから君は外にーー」
マーガレットを想い外で待っているよう促そうとしたジンだが、その瞬間ガタガタと奥の方で音が聞こえてきた。
まさか犯人が残っていたのかと臨戦態勢をとった2人だったが……
「こ、こども?」
ペタペタと小さな足音を立て入ってきた幼い少女の姿に力が抜けた。
そのまま何も言わず駆け寄ってきた少女は、何を思ったのか床に転がされている遺体の側に座ると寄り添うように横になった。
その行動にそれが少女の母親なのだろうと思った。
この悲惨な状況で母親に寄り添い眠る少女の姿はあまりにも異様ではあったが、まだ幼く状況を理解していないのか、はたまた全て知っているからこその行動なのか自分には分からない。
こんな状況とは言え母親を求める少女を離していいものなのか。
泣き喚くわけでもなく、ただ静かに母親の隣り眠る姿にマーガレットたちはどうしていいか分からず行動出来ずにいるのだった。
それからどれだけ経ったのか、駆け込んできた憲兵たちも部屋の惨状に言葉を無くしていた。
「この子は?」
「ヨナちゃんっ!無事だったのね!」
遺体に縋り付き眠る少女の姿に憲兵も戸惑っており、しかし名を呼び駆け寄ってきた先程の彼女が殺された彼女たちの娘なのだと説明してくれる。
「娘のヨナちゃんです。姿が見えなかったから、もしかして彼女もかと思ったんですけど………無事でよかった」
状況が状況だけに素直に喜んでいいのか分からなかったが、命が無事だったことは良かったのだろう。
状況確認などに外に出ているように言われ出ようとしたが、その瞬間少女が目を覚まし暴れ出した。
「ヨナちゃん!ヨナちゃん大丈夫だから!」
声こそなかったがヤダヤダと首を振り遺体に縋り付く姿に憲兵たちも無理矢理引き離すのを躊躇っている。
しかしこのままではいけないだろうと思っていると、それまで後ろで様子を窺っていたジンが少女に近寄り気絶させると脇に抱えて外へ向かうのだった。
「…………悪かったね」
「こういう役は私の方が合ってるからね」
結局何も出来ず見ているだけだった自分に謝罪すれば、気にしなくていいと笑って許してくれた。
こういう時彼が旦那で良かったと心から思う。
「この子はどうしたらいいのかなぁ」
連れ出してきたはいいが、力なく腕に抱き抱えられる少女をどうしたらいいのかマーガレットも分からなかった。
誰か頼りになる親族はいるのか確認してみたがいないらしく、ならば教会にと話しが進む中マーガレットが待ったをかける。
「…………エニシくんに頼んでみるかい?」
どう話していいかと悩むマーガレットに、察したジンがそれもいいかもしれないねと頷いてくれる。
「頼むだけ頼んでみよう。大丈夫、彼は嫌なら嫌と言える子だよ。君が頼んだからと言って無理をすることはないし、ダメならその時は教会に預けることにしよう」
何が正解か分からない。
子を育てたこともなければ、産むことも出来ない自分が意見を言っていいのか分からなかったが、先程見た少女の姿が頭に焼き付いて離れないのだった。
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