二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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神様みたいな人

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 見るからに育ちの良さそうな見た目で、どこかの貴族と言われても納得出来るほどの整った容姿だった。
 だから兄に貴族ではないと聞かされた時も、そんなわけない何か事情があって隠しているんだろうと思っていたが、数日一緒に過ごしてみれば言っていたことが事実だったんだとすぐに分かった。

 「さぁ今日もみんなで頑張りましょう!」

 そう言い洗濯を始めた姿を見た時は目を疑った。
 今日は天気がいいから早く乾きますね、なんて嬉しそうに言う彼の姿が信じられず数分固まり動けなかった。
 それでも我に返ると、そんなこと私がやりますと慌てて駆け寄っていけばーー

 「大丈夫ですよ。サリーさんたちの分はイリスさんに任せてあります。流石に女性のものを男の私が触れるのはイヤでしょうから」

 ちがう。そうじゃない。
 それも勿論あるが、そうではなく貴方にやらせることに何より躊躇いがあると声を大にして言いたかった。お兄ちゃん助けて!

 「あ、これお願いしていいですか?よく乾いていて気持ちいいですから」

 はいと渡されたシーツは綺麗に洗濯され、お日様によって乾かされ気持ちよかった。
 お母様にと微笑まれ、彼が本当に母のことを助けようとしてくれているのが分かり嬉しかった。
 信じていなかったわけじゃない。
 衣食住を保証すると言われ、信じたからこそ付いてはきたがやはり不安は少なからずあった。
 言っていたことは全て嘘で、奴隷のように働かされ最後には売られたりするのではないかと。
 だが実際は全くの逆で、今までの生活が嘘だったんじゃないかというくらいに快適で幸せだった。
 1つの部屋で皆でごろ寝かと思っていれば、この部屋を使って下さいと丸々一部屋私たち家族に与えてくれ更にはベッドも備え付けられていた。
 泣いてありがとうございますと頭を下げる母と一緒に私も何度も頭を下げた。

 「長湯はおすすめ出来ませんが先に汗を流してきたらいかがですか?きちんと身体を温めて、しっかり休んで下さい」

 そこで生まれて初めて入ったお風呂はとても気持ちよく、温かい食事と寝床にその日は母と2人幸せを噛み締め泣きながら眠りについた。
 これだけ与えてもらったのだ、自分も何かしなければとするべきことを尋ねてみれば笑顔で雑巾を渡された。

 「一緒に掃除をお願いしても?」

 洗濯を終えたかと思えば、雑巾片手に掃除を始めたのを見て気絶しそうになった。
 躊躇いなく動かされる手を見れば、それが日常的にしていることなのだとすぐに分かった。

 「サリーさんは今おいくつなんですか?」

 「え?あ、あの…14、です」

 色々話しかけてくれる彼に緊張しながらもポツポツと言葉を返していけば、まさかの自分と倍ほどの年齢差があると知った時は驚き拭いていた窓に頭をぶつけそうになった。
 失礼と思いながらもジーッと見つめるが理解出来ず、もしや何か若返りの薬でも飲んでいるのかもしれないと無理矢理自分を納得させたのだった。

 「…………よし。ではそろそろお昼ご飯を作りましょうか」

 まだやるの!?
 休むことなく今度は昼食の準備を始めた彼は、適当に切った野菜を次々と鍋にぶち込んでいく。
 あ、こういう大雑把なところは男性っぽいかもと変に安堵し、では後はよろしくとばかりに渡されたお玉で鍋をかき混ぜていく。

 「子どもたちが今頑張って作ってくれているミソというものです。一緒に食べて味の感想を子どもたちに伝えて上げて下さい」

 その日初めて食べたミソシルは、とても優しい味わいでとても温かかった。
 身体が弱っている母のためにと自分たちの分とは別に、食べやすいようにと柔らかい食事まで用意してくれた。
 美味しいわと泣いて喜ぶ母に彼も良かったと微笑んでいた。

 「お、おにいちゃん、みてください」

 「ああ、練習頑張ってたんですね。凄く上手になってます」

 「が、がんばりました!」

 これもここへ来て初めて見た光景であり、まさか子どもたちに混ざり獣人がいるとは思ってもいなかった。
 姉妹の獣人らしく、首輪をしていないことに本当に大丈夫かと不安だったが、子どもたちも彼もそれを気にすることなく普通に接していた。
 一緒に家事をし、一緒にご飯を食べ、一緒に笑い合う。
 自分が知識として知っている獣人とは違う彼女たちは、大人たちが言う獣如きというものではなく、自分たちと同じ人だった。
 褒められ嬉しそうに笑う少女、姉の方は恥ずかしいのか褒められ顔を赤くしながらも声には出すことなく頷くだけだったが。
 感情があるんだと初めて知り、逃げることも怯えることもしていないことが不思議でしかなかった。
 それも彼の彼女たちへの接し方ですぐに分かったが。

 「お茶にしようかと思うんですが少しお邪魔してもかまいませんか?」

 その日そう言って部屋に来た彼を招き入れれば、その後ろにあの獣人の少女が付いて入ってきた。
 
 「シャイアさんがお手伝いしてくれて一緒に作ってみました。上手く出来たのでよければ召し上がってみて下さい」

 恥ずかしそうに彼の背に隠れる姿は本当に可愛く、母と2人笑顔で頷くのだった。
 

 




 




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