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いつまでたっても
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自分の所で働かないかと誘う縁に、男は驚き固まってしまう。
「勿論仕事内容を聞いて無理だと思えば断ってもらって構いません。ただまた仕事が変わるとなるとお母様が心配なされると思いますから出来ればご家族の方も混じえて説明させてほしいんです」
「………あの、しかし、母はその、今体調があまり………」
具合が良くないのは事実だろう。
しかし縁は少々強引ではあるが話しをさせてほしいと頼み込み、付き添いをマーガレットにお願いした。
「私はっ!?」
「お留守番をお願いします」
自分も一緒に行きたいとごねるジンをマーガレットが(殴って)沈……黙らせた。
「あ、あの、ここです。汚いところですが……」
不安そうにこちらを見る男に大丈夫だと微笑んでやる。
家だと案内されたのは多くの家々が並ぶ端の端、こじんまりとし所々穴が見える掘立て小屋ような建物だった。
特に何を言うでもなく男の後についていく。
ギシギシと今にも外れそうな戸を開け入っていけば、部屋の隅に誰か眠るような人の姿が見えた。
「は、母です。母さん、母さん」
態々起こしてしまうのは申し訳なくあるが、起きるまで待っているのも難しいためお願いすることにした。
やはり具合は良くないのだろう。
咳き込みながらも起き上がった母親の背を男がさすってやっている。
「母さんあのね、この人が俺に自分の所で働かないかって言ってくれたんだ。でもどんな仕事かはまだ聞いてないから一緒に聞いてくれる?」
「あ、あんたまたクビになったのかい?それとも何か粗相でも……」
彼は母親似なのだろう。
すいませんすいませんと頭を下げる母親に、違うのだと説明する。
「息子さんが何かしたとかではなく、もしかしたら彼なら私のお手伝いをしてくれるかもしれないと思い声をかけさせてもらったんです」
隣りには現雇い主であるマーガレットもいてくれたため、母親も不思議そうではあったが不審がることもなく話しを聞いてくれることに。
「実は今数人の子どもたちを預かっているんですがそのお世話を彼にお願いしたいんです」
身寄りもなく、孤独に生きてきたサウルたちのことを説明する。
「今は生活も安定して自分たちでも何とかやっていけてはいますが、やはり力も精神も大人ほど出来上がってはいません。なのでそれをお願い出来る方を探していました。勿論そのための対価はきちんとお支払いします」
「……………有り難いお話しではありますけどうちの息子にそんな大役務まりません。まともに働くことも出来ない息子にそんな人の世話なんてーー」
「分かります。お母様の不安ももっともでしょう。なので提案なんですがご家族皆さんでそちらに移り住むのはいかがでしょう?」
「「え?」」
縁とて彼がそれほど戦力になるなど思ってはいない。
求めたのは多少の力と子育ての知識。
「何も領主や村長になって欲しいと言っているわけではありません。息子さんが心配で不安だと言うのであれば、何がダメで何がおかしいのかお母様が側で教えて上げて下さい」
成人しているとはいえ、彼もまた成長しきれていないのだ。
戸惑う母親の背を支える彼を見つめる。
「必死に家族のために働こうとする貴方の姿勢は素晴らしいです。ですがその焦りによって貴方が潰れてしまっては意味がない。大切だからこそ貴方も貴方自身を大切にして上げて下さい」
「……………」
子どもたちの世話と言っても彼らは生まれたばかりの赤ん坊でもなければ、人に全てをやって貰わなければ生活出来ない程小さな子どもではない。
「畑仕事の手伝い、子どもたちへの読み書きの授業、味噌などの売上帳簿などの管理などを今の所考えています」
子どもたちは子どもたちで自分がやるべきことは理解しているため畑の手伝いと言っても微々たるものだ。
読み書きの時間もそれほどとれるわけでなく、やりたいという子だけで構わない。
そのため一番の仕事はお金の管理のみ。
「そ、それだけ、ですか?」
「まぁ今のところは、ですけどね。将来的には馬や豚を飼いたいと思っているので世話をお願いするかもしれませんが」
思いの外少ない仕事量に不信感が湧いてしまったのかもしれない。
「引き受けていただけるのであれば対価として貴方を含めご家族の方の衣食住はこちらで用意します」
「「っ!?」」
部屋もまだ残っているため問題はなく、イリスたちも増えたことで食事などの心配もない。
「こう言っては失礼ですがこちらの住まいではお母様の容態も良くなるとは思えません。あちらは森の中に家がありますので空気は綺麗ですし、栄養のある食事と温かい部屋を保証します」
若干怪しい商法のお誘いみたいに聞こえるかもしれないが、事実なので仕方がない。
「そ、それはとても有り難いんですが、母には薬が必要で……」
対価として衣食住の心配はなくなったが、逆に今度は薬を買うための金がないという問題が出てくる。
だが………
「バカだね。アンタは今どこで働いてんだい」
「え?」
隣りで静かに話しを聞いていたマーガレットが漸く納得がいったと笑っているのだった。
「勿論仕事内容を聞いて無理だと思えば断ってもらって構いません。ただまた仕事が変わるとなるとお母様が心配なされると思いますから出来ればご家族の方も混じえて説明させてほしいんです」
「………あの、しかし、母はその、今体調があまり………」
具合が良くないのは事実だろう。
しかし縁は少々強引ではあるが話しをさせてほしいと頼み込み、付き添いをマーガレットにお願いした。
「私はっ!?」
「お留守番をお願いします」
自分も一緒に行きたいとごねるジンをマーガレットが(殴って)沈……黙らせた。
「あ、あの、ここです。汚いところですが……」
不安そうにこちらを見る男に大丈夫だと微笑んでやる。
家だと案内されたのは多くの家々が並ぶ端の端、こじんまりとし所々穴が見える掘立て小屋ような建物だった。
特に何を言うでもなく男の後についていく。
ギシギシと今にも外れそうな戸を開け入っていけば、部屋の隅に誰か眠るような人の姿が見えた。
「は、母です。母さん、母さん」
態々起こしてしまうのは申し訳なくあるが、起きるまで待っているのも難しいためお願いすることにした。
やはり具合は良くないのだろう。
咳き込みながらも起き上がった母親の背を男がさすってやっている。
「母さんあのね、この人が俺に自分の所で働かないかって言ってくれたんだ。でもどんな仕事かはまだ聞いてないから一緒に聞いてくれる?」
「あ、あんたまたクビになったのかい?それとも何か粗相でも……」
彼は母親似なのだろう。
すいませんすいませんと頭を下げる母親に、違うのだと説明する。
「息子さんが何かしたとかではなく、もしかしたら彼なら私のお手伝いをしてくれるかもしれないと思い声をかけさせてもらったんです」
隣りには現雇い主であるマーガレットもいてくれたため、母親も不思議そうではあったが不審がることもなく話しを聞いてくれることに。
「実は今数人の子どもたちを預かっているんですがそのお世話を彼にお願いしたいんです」
身寄りもなく、孤独に生きてきたサウルたちのことを説明する。
「今は生活も安定して自分たちでも何とかやっていけてはいますが、やはり力も精神も大人ほど出来上がってはいません。なのでそれをお願い出来る方を探していました。勿論そのための対価はきちんとお支払いします」
「……………有り難いお話しではありますけどうちの息子にそんな大役務まりません。まともに働くことも出来ない息子にそんな人の世話なんてーー」
「分かります。お母様の不安ももっともでしょう。なので提案なんですがご家族皆さんでそちらに移り住むのはいかがでしょう?」
「「え?」」
縁とて彼がそれほど戦力になるなど思ってはいない。
求めたのは多少の力と子育ての知識。
「何も領主や村長になって欲しいと言っているわけではありません。息子さんが心配で不安だと言うのであれば、何がダメで何がおかしいのかお母様が側で教えて上げて下さい」
成人しているとはいえ、彼もまた成長しきれていないのだ。
戸惑う母親の背を支える彼を見つめる。
「必死に家族のために働こうとする貴方の姿勢は素晴らしいです。ですがその焦りによって貴方が潰れてしまっては意味がない。大切だからこそ貴方も貴方自身を大切にして上げて下さい」
「……………」
子どもたちの世話と言っても彼らは生まれたばかりの赤ん坊でもなければ、人に全てをやって貰わなければ生活出来ない程小さな子どもではない。
「畑仕事の手伝い、子どもたちへの読み書きの授業、味噌などの売上帳簿などの管理などを今の所考えています」
子どもたちは子どもたちで自分がやるべきことは理解しているため畑の手伝いと言っても微々たるものだ。
読み書きの時間もそれほどとれるわけでなく、やりたいという子だけで構わない。
そのため一番の仕事はお金の管理のみ。
「そ、それだけ、ですか?」
「まぁ今のところは、ですけどね。将来的には馬や豚を飼いたいと思っているので世話をお願いするかもしれませんが」
思いの外少ない仕事量に不信感が湧いてしまったのかもしれない。
「引き受けていただけるのであれば対価として貴方を含めご家族の方の衣食住はこちらで用意します」
「「っ!?」」
部屋もまだ残っているため問題はなく、イリスたちも増えたことで食事などの心配もない。
「こう言っては失礼ですがこちらの住まいではお母様の容態も良くなるとは思えません。あちらは森の中に家がありますので空気は綺麗ですし、栄養のある食事と温かい部屋を保証します」
若干怪しい商法のお誘いみたいに聞こえるかもしれないが、事実なので仕方がない。
「そ、それはとても有り難いんですが、母には薬が必要で……」
対価として衣食住の心配はなくなったが、逆に今度は薬を買うための金がないという問題が出てくる。
だが………
「バカだね。アンタは今どこで働いてんだい」
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隣りで静かに話しを聞いていたマーガレットが漸く納得がいったと笑っているのだった。
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