二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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自分は……いいです

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 それぞれご褒美も選び終え、ついでに夕食の食材なども買い込むと町を後にしーー

 「ちょーーっと、待ったっ!」

 「………………」

 「えっ、うそ、ちょっ、まっ、ままま、待って下さい!エニシくんっ!」

 「ん?」

 何やら後ろが騒がしいなと思ってはいたが、下手に絡まれたら堪らないと無視を決め込んでいた縁に男が駆け寄ってきた。

 「ああ、ククルさんでしたか。こんにちは」

 にこやかに挨拶する縁とは対照的に肩で息をするククルは見るからに苦しそうだ。
 知らなかったとは言え無視して走らせてしまったのは申し訳ない。
 大丈夫かと落ち着くまで背を撫でてやれば、苦笑いしながらもありがとうと言われた。

 「すいません。遠目からエニシくんらしい後ろ姿が見えたので」

 「気が付かなくてすいません。何かありましたか?」

 正しくは気付いていて無視していたのだが。

 「お話ししたいことがありまして。先日は忙しそうでしたのでこの後時間があるようなら」

 どうしようかと悩み、後ろにいた2人を窺えば大丈夫だと頷かれたため了承した。
 最近はどうだと話しながらククルの店まで歩いていけば、特に変な顔をされることもなく部屋まで通される。
 むしろ凄くいい笑顔で従業員たちに挨拶された。なぜ?逆に怖い。

 「エニシくんのおかげでうちの店の売り上げは上がる一方ですからね。君に何かするようなバカがいるとすればーー即刻クビです」

 それは………脅しではないだろうか?
 
 「というのは半分冗談で、あとは単純に君に対する感謝ですよ。君の提案してくれた商品は従業員たちも知っているので。鍋や包丁なんかは家庭を持つ女性たちから泣いて喜ばれました」

 半分ということはもう半分は本気ということではないのだろうか。
 だが周りを見る限り嫌々な様子は見られないため聞き流しておくことにする。

 「さて、実は話したいと言うこともそのことなんです」

 「どういうことでしょう?」

 売り上げがあるのは良い事では?と首を傾げる縁に、しかし問題はそこではなく、そのおかけで貯まっていく縁への売り上げ金の一部だった。
 最初こそ微々たる金額だったため町に来た時にでも受け取りに来ていたのだが、最近は商品も増え金額が大きくなってきたため困っていたらしい。

 「なので商業ギルドに登録してみませんか?そうすればお金も預けておけますし、もしエニシくんがうちで扱えない商品を思い付いても売ることが出来ます」

 「商業ギルド、ですか?」

 何だそれは。
 聞けば、大雑把に言って商標登録所みたいなものだった。
 新たに開発、発明したものや、発見、思い付きなどを商品として登録し、お金を払えば誰もがそれを作成、販売が出来るらしい。
 分かりやすいようにと丁寧に説明してくれるククルだが………

 「面倒ですね」

 「……………」

 彼には申し訳ないが物凄く面倒である。
 昔から説明書を読むのも、手続きなど手間がかかる作業はどうにも苦手だった。
 仕事ならばと割り切ってはいたが、私生活では極力したくはない作業だ。

 「してみませんか?ということは提案であってしないという選択肢もあるということですよね。ならしなくて結構です」

 「……………」

 縁の言葉に頭を抱えてしまったククル。
 何かダメだったかと隣りに座るエルを窺えば……すごく残念なものを見る目で見られていた。

 「この人すっごい儲かる話ししてくれてんのに何で断んの?ってかエニシのせいで常に大金を店の中に用意しておかなきゃいけないなんて可哀想じゃん」

 ……………大金?
 いまいち理解出来ていない縁に、若干涙目になりながらもククルが説明してくれた。
 縁に払われるだろう手取りは最早それなりの金額になりつつあるらしい。
 だがいつ受け取りに来るか分からない中、常にそんな金額を店に置いておくのも不安があるらしい。
 いや、どんだけ!?

 「ならククルさんが登録してそこで預かってもらえばいいのでは?」

 「いや、どんだけめんどくさがんの?登録してやればいいじゃん」

 「えーー」

 「そこまでですか。普通なら手を上げて喜ぶ所なんですが」

 そこまで言ってもらえるということはそれほどの価値を認められているということなのだろうが、縁にはそれほどまでの欲求はなかったのだった。
 ただ自分が欲しいものを作ってもらったついでにククルにどうかと提案していただけであり、どうしてもとは思っていない。
 ある意味縁の気分一つである。

 「必要なものは私の方で用意しておきますから!本当にエニシくんにはサインだけしてもらえれば!それだけでいいですから!」

 何もそこまでせずとも。
 ククルの熱い説得(泣き落とし)により登録することが決まった。
 後日書類が揃ったと連絡があり店を訪れれば、心変わりしない内にと急かされサインするまで部屋から出してもらえないのであった。

 「いや、いくら私でもここまで来て逃げませんよ」

 「分かってます。ですが早く!早くサインを!」

 ある意味で信用がなくなったかもしれない。ククルの縁に対する信用が。
 

 

 

 
 

 
 
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