二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
上 下
420 / 475

子どもサンド

しおりを挟む
 喉の渇きを感じ置いてあったコップに手を伸ばそうとすれば、口を尖らせ見るからに不機嫌ですとばかりの翔と目があった。

 「まーま、めーの」

 それほど動いたわけではないのだが、その小さな動きさえ膝に乗っていた翔には気に食わなかったらしい。

 「ごめんね。ママ喉が渇いちゃったんです。翔もずっとくっついてたから暑いでしょ?少しお水を飲みましょうか」

 「ん」

 それまでの不機嫌はどこへやら、コップを差し出せばゴクゴクと勢いよく飲む姿にやはりかなり喉が渇いていたようだと苦笑いする。
 帰宅した当初は拗ねて「まーまきらい」とも言っていたのに、今は膝から下りることもせず、ずっと縁のお腹に抱き付き離れないでいた。

 「ママできた!」

 「……うん、上手に書けましたね。じゃあパパに見せにいっておいで。パパのお名前上手に書けたよって」

 「うん。パパ~」

 元気に駆けていく繋は頑張って練習したという名前の練習を書いて見せてくれた。

 「「……………」」

 そして縁の両隣りでスヤスヤと眠っているのはとうとう2人共熊の姿になれたと先程楽しそうに報告してくれた真と愛依だ。
 帰ってきてからというもの縁の側を離れない子どもたちに申し訳なさと、それほど寂しがってくれたのだと嬉しさがある。
 子どもたちは縁をママと呼ぶが、自分は男だ。
 どこかしら普通の母親とは違うことに彼らも気が付いてはいるだろうが、それを言葉にして言われたことは今のところない。
 発情期がというものがあることから側を離れることもあるため尚更寂しい思いをさせているだろう。
 未だこの子たちの母親として上手くやれているのか分からない。
 大切に、幸せにしてやりたいと思ってはいるが、本当にそう出来ているか分からず不安になることもある。
 それでも笑ってママ!と呼ばれれば、その不安も薄れていく。
 大事な大事な大切な我が子たち。

 「翔のご機嫌治った?」

 優しく子どもたちの頭を撫でてやっていれば、ひょっこりと顔を出したルーに笑って頷く。

 「翔がここまで離れなくなるとは思ってませんでした」

 以前エルにも言ったが、翔はどちらかというとパパっ子だと思っていたためこれほど甘えてくるのは意外だったのだ。

 「いつもは縁がいるからね。オレと一緒にいる方が多いけど、それも縁が近くにいるって分かってるからじゃないかな。翔もパパと一緒でママが大好きだもんね?」

 「ん。まーまだいちゅき」

 離れないとばかりにギュッと抱きついてくる翔に、ママも大好きだよと抱きしめ返す。

 「ありがとう。翔がそう言ってくれてすごく嬉しい」

 その言葉だけでこれからも頑張ろうと思える。

 「ルーもありがとう。翔と一緒に待っていてくれて」

 翔が生まれてから彼も少しずつ変わってきていた。
 以前なら寂しいと仕事も放っぽりだし縁に抱き付きにきていたが、今は縁が数日家を開けていても翔とちゃんと待っていてくれる。
 
 「へへっ。じゃあオレも翔みたいにギュッてしてくれる?」

 「勿論。翔もルーも大好きですよ」

 腕を伸ばせば触れる温もりにホッとする。
 大好きなママとパパに挟まれ翔もご機嫌だ。

 「今度翔と3人でどこかに出かけましょうか。ルーと一緒に飛んでる翔が見たいです」

 「いいよ。いくらでも縁を乗せて飛んであげる」

 「ちょう、も!」

 「はははははっ、そうだね。翔もいつかママを乗せられるぐらい大きくなるもんね」

 そう!とばかりに胸を張る息子の姿が何とも可愛らしい。

 「大きくなるのはいいですけどママを踏んじゃわないでね」

 親として大きくなってくれるのは一向に構わないが、その大きな身体で踏み付けられたら縁の身体などぺちゃんこである。

 「そんなこと心配するの縁ぐらいだよ」

 流石に自分たちでもそんな間違いはしないと珍しくルーに突っ込まれた。
 
 「だってルーたちがドラゴンになった時私なんてそこら辺の小石程度の大きさですよ。可能性はありますよ」

 人間ちょっとした足下の小石に躓くことだってあるのだ、ルーたちだって可能性はなくもない。
 
 「縁って変なとここだわるね。でもやっぱりそれはないよ」

 何故!!
 自慢ではないが自分は何もないところでも躓けるというのに!

 「だって、そんなの翔とイスを見間違えるみたいなもんだよ」

 「……………それはないですね」

 ない。縁とて流石にそれはない。たぶん。
 ルーの謎の説得により縁の不安は1つ消されるのであった。 

 
 





 
 
 


 

 

 

 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!! 打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

処理中です...