二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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焦らない焦らない

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 「では2人も今日から少しずつお仕事覚えていきましょうか」

 「は、はい!」

 「…………はい」

 ちゃんと返事をしてくれたことによしよしと頷く。

 「と言ってもいきなりアレコレ言っても大変だと思うので暫くは身体を動かすことに慣れていきましょう」

 暫く檻の中に入れられていたらしく、急に動けと言ったところでまだ身体が辛いだろうと先ずは家事を手伝ってもらうことにした。
 庭先に椅子を運んでくると、お婆さんにはシャイアに針仕事を教えてあげてほしいと頼んだ。

 「今日はいいお天気ね。それにここからなら頑張ってるみんなの姿が見えるから嬉しいわ。ありがとうエニシさん」

 「いいえ。シャイアさんは頑張り屋さんなのであまり無理しないよう注意して見て上げてくれますか?」

 はいはいと笑って頷いてくれたお婆さんにあとは任せると、イリスを連れ洗濯することにした。
 
 「…………今朝のことだったら怒ってませんから大丈夫ですよ」

 黙々と言われた通り洗い物をしながらも、チラチラとこちらを窺うような様子に笑ってしまった。
 ホッとしたように肩の力を抜いたイリスに、そんなに怖がらせてしまったかと反省する。

 「イリスさんとシャイアさんには主に家事をお願いしたいんです」

 「………なんでよ。私もあの子たちと働かせればいいじゃない」

 顔を上げそちらを見れば、子どもたちがせっせかと畑仕事をしているのが見える。
 自分たちのご飯となるため頑張っているのもあるだろうが、自分たちが頑張って作ったものをみんなで美味しいねと食べることに彼らも喜びを感じてくれていた。

 「まぁ手が足りてるとは言えませんが、あちらは彼らが頑張ってくれているのでどうしても手伝ってほしいと言った時で構いません」

 食事自体は彼らが畑をしているため最低限困ることはなく、時々こうして遊びに来ては縁もなるべく日持ちするものを置いていっているので問題はない。
 マルスやフレックも見回りとして肉などを置いていってくれていることもあり子どもたちも順調に肉付きよく育ちつつある。

 「今まではお婆さんが頑張ってくれていたんですが最近辛そうなので。子どもたちもまだ小さいので火の扱いが心配ですし、もう少し心の余裕をもってもらうのもいいかなと」

 確かに以前と比べれば雨風凌げる家も、温かい寝床も、美味しいご飯も仲間もいる。
 だがそのため仕事も多く、更に家事もしなければならないとなるとやはり余裕がないだろう。
 サウルが率先して色々やってくれてはいるが、彼も誰かが見ていないと頑張り過ぎるところがあるため不安なのだ。

 「私なんかがして……嫌がられない、の?」

 獣人なんか、奴隷なのだからと俯くイリスに笑って答える。

 「獣人であるということはここにいる子たちにとっては些細な違いです。奴隷であったという事実は消せはしませんが、もう過去のことです。なので……忘れなさい」

 「はっ、忘れる?」

 あの辛い日々を、あの酷い扱いを忘れることなど出来るはずないとこちらを睨みつけてくるイリスに首を振る。

 「奴隷であった時のことを忘れろと言ったわけじゃありません。そうではなく、今はもう私たちは家族で仲間なのだから奴隷であることはもう忘れなさいと言ったんです」

 「か、ぞく?」

 奴隷が碌な扱いを受けないのはセインたちのこともあり何となくは察している。
 獣人ともなれば更に酷いものだっただろう。
 幼い妹を抱え必死に生きてきた彼女に、今までの人間の所業を許して欲しいなど言えるはずもなく言いたくもない。

 「首輪のことはすいません。子どもたちの安全もあったので外して上げられなかったんです」

 買った時のイリスの様子もあり、子どもたちに何かあってはと2人の首輪は未だ外せずにいた。

 「すぐに慣れるとは思っていません。そんな都合の良い話しあるかと信じられもしないでしょう。けど昨日もそうですけど、ここの子たちは誰も貴方たちをとは言わなかったでしょう?よろしくねと挨拶して、一緒にお風呂に入って、並んでご飯を食べて………ね?」

 「………けど…けど、そんな………」

 そんなことあるはずないと信じられない気持ちがまだ強いのだろう。

 「サウルはとてもいい子です。長いこと1人でいたせいか頑張り過ぎるところがありますけど貴方たちにあれをしろ、これをしろとこき使うような子じゃありません。私の子も小さくて怖いとは言ってましたが嫌がることなく抱っこしてくれました」

 その小ささに何かあってはと躊躇ってはいたが、決して獣人なんかに触りたくないとは言うことも思っている様子もなかった。

 「彼らはみんな身寄りもなく、下手をすれば奴隷になっていたかもしれない子たちばかりです。だからこそ、そんな扱いをするはずがありません。まぁ、まだ幼い子たちばかりなので単純にみんなと暮らせて楽しいと思っているだけかもしれませんが」

 辛い日々を経験してきた子どもたちだからこそ、それを他に強いることはしない。

 「少しずつでいいんです。少しずつでいいから、ここにいる子たちだけでもいいから信じて上げてみて下さい」

 声はなかったが、暫く悩んだ後頷いてくれたことに安堵するのだった。
 

 
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