二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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油断は大敵

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 後ろの方でずっと様子を窺っていたが、彼は毎回自分には予想も出来ないことばかり起こす。
 奴隷を買うのを手伝って欲しいと連絡が来たのはつい先日。
 何故自分が?とも思ったが、エニシは自身のためではなく子どもたちのため信頼出来そうな人が選びたいと言われ、ならば力になれるのであればと二つ返事で頷いた。
 力仕事もあるため出来れば獣人を1人、何かあった時話しをしやすいだろう人間も1人欲しいと言われ納得もしていた。
 なのだが……

 「お待たせしてしまってすいません。獣人はこの子たちにしようと思います」

 そう言い引き連れてきた獣人の女の子2人にそれでいいのかと言いたくなった。
 はっきり言ってどちらも男を選ぶのだと思っていたからだ。
 獣人でもやはり男女の差はあり、力を必要としているならば当たり前だが男を選ぶ。
 それをまだ成人しているのかも怪しい女の子を、片方は足を患っているだろう幼き女の子を選ぶのは良い判断とは言えない。

 「………本当に彼女たちでいいんですか?」

 「はい。この子たちが、いいんです」
 
 何か言いたそうな自分に気が付いているだろうエニシは、いつも通り微笑みながらも気持ちは変わらないというように頷いた。

 「予想外に2人になってしまいましたし、色々話し合う必要もありそうなので申し訳ありませんが人間の方を選ぶのはまた後日でもいいでしょうか?」

 ずっと見ていたから分かってはいるが、妹の方はまだしも姉のあの反抗的な態度はよろしくない。
 もしかしたら彼に暴力を振るうかもしれない可能性もあり、どうにも納得出来なかった。

 「エニシくんに何かあれば私はあの2人に殴り飛ばされてしまうんですが」

 「ジンさんとマーガレットさんですか?うーん………頑張って下さい」

 「そこは是非とも否定して欲しかったです」

 自分はこれほど心配しているというのにエニシはそんなことになりませんよと笑っている。
 先程の彼らの会話を聞いていても何故あの2人を選んだかも理解が出来なかった。
 手助けどころか足を引っ張りかねない存在だ。
 しかしエニシの決断を自分が変えることも出来ないだろうことも理解している。

 「エニシくんに1つお願いがあるんですが」

 「何でしょう?」

 今からする提案に下心がないとは言わない。言わないが勿論それだけでもない。

 「人間の方ですが、もしよければ私のところの奴隷ものを連れて行ってもらえませんか?」

 「ーー理由を聞いても?」

 変わらず笑顔ではあったが、どこか試すような瞳に一瞬ドキリとした。

 「貴方が心配なので。彼女たちを選んだことに文句をつけようとは思いませんが何があるか分かりませんでしょう?色々教えていくにしても時間がかかりますし、うちの者でしたら今まで働いてこともあるのである程度こなせると思います」

 「……………そうですか」

 心配してくれてありがとうございますと言いながらもククルの提案に頷く様子がないエニシに、どうしたのかと首を傾げる。

 「うーん、心配してもらえるのは嬉しいんですが………お願いは本当にその1つだけですか?」

 「え?」

 にこにこと微笑みながらも、どうなのだと促してくるエニシにヒヤリとしたものが背中を伝っていく。

 「ククルさん、私これでもそれなりに貴方を信頼してんです」

 「ーーす、すいませんでした!」

 その言葉に即座に頭を下げた。
 周りは驚いていたが、そんなこと気にならないほど焦りに冷や汗が止まらない。

 「貴方は商人ですから常に損得勘定してしまうのは仕方がないと思いますが、人によってはそれが喜ばれない時もあると分かってもらえると嬉しいです。商人には信頼も必要でしょ?」

 「はい。本当にすいませんでした」

 彼に自分の奴隷を薦めたのは勿論心配だけが理由ではない。
 半分以上は自身の利益のためであり、それに気付かれたとは恐ろしくもある。

 「心配だけで今まで育ててきた方を私に譲ってくれるなんて有り得ませんよね?」

 正解だ。
 奴隷とは言え自分の手の者が彼の側にいれば何かしら情報を流してくれるだろうと考えていた。
 彼が自分たちにもたらしてくれた利益は計り知れず、ならばその近くに身近な者を置いて探ってもらおうなどククルを信頼してくれていた彼に失礼な行為だ。
 正直に話せば苦笑いしながらも許してくれた。

 「怒っていないとは言いませんが、少し残念ではあります。先程も言いましたが、これでもククルさんのことかなり信頼してるんですよ」

 苦笑いしながらもまだ失っていないらしい信頼にホッとする。

 「子どもたちがお世話になっているので素直にお願いしてくれれば聞いてました。言ってもらえなかったことだけが残念です」

 只々謝罪するしかない。
 彼がこういう人間だからこそ自分は気に入っていたし信頼もしていたのに、それを裏切るような行為をしようとしていた。
 
 「だからと言っては卑怯ですが、そんなククルさんに私からもお願いがあるんですが」

 「私に出来ることであれば勿論」

 それで彼の信頼を取り戻せるならば何でも受けようと即座に頷くのであった。

 
 

 


 
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