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可愛い頑張り
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「カイおいで」
手を差し出せば瞬時に猫に姿を変え縁の肩に駆け上って来た。
頬に擦り寄ってくる頭を撫でてやりつつ外に向かえば、先に支度を終えていたらしいアレンとロンが待っていてくれた。
「玲は?」
「寝てる。行けるか?」
必要な物は鞄に詰め、大事なカイも今は縁の肩の上だ。
大丈夫だと頷けば求められるまま手を繋ぎロンに運んでもらうのだった。
「こんにちは。また暫くお世話になります」
「いらっしゃい。嬉しいわ。エニシさんたちがいるとまた一段と賑やかになるもの」
本当にそう思ってくれているのだと分かる笑顔に自然縁も笑顔になる。
「エニシにぃちゃんだ!」
「おにいちゃんだ!」
「でっけぇにいちゃんもいる!」
「カイもいる!」
子どもたちの熱い出迎えに笑い返しつつ、久しぶりの再会にカイを下せば喜んで彼らの元へ駆け寄っていくのだった。
「………来るのおせぇよ」
楽しそうに子どもたちと話すカイを見守っていれば、背後から聞こえてきた不機嫌そうなその声に笑ってしまう。
「ごめんなさい。随分待たせちゃいましたね。でもおかげで元気な子が産まれましたよ」
おいでと手招きすれば近寄ってきたサウルに抱えていた玲を見せる。
「ちっちぇ」
「まだそう経ってないですからね。それに獣人は人間より小さく産まれてくるんですよ」
赤ん坊を見るのは初めてなのかジッと玲を見つめるサウルに抱っこしてみるか聞いてみる。
「………いらない。こえぇもん」
あまりの小ささに怖くなってしまったのか首を振るサウルに大丈夫だと言うと、そっと腕に抱かせてやる。
どうしていいのか分からないのか戸惑いに目を彷徨わせるサウルだが獣人だからという嫌悪感は見られない。
「小さいでしょ?けどきっと今に彼みたいに大きくなりますよ。まぁ、この子は女の子なのでそこまでではないでしょうけど」
「え。………こんなに小せぇのに?」
腕の中の玲を見、隣りに佇むアレンを見、再び玲に視線を戻すとそんなバカなとばかりに驚いていた。
縁もそう思ったが、こんなに小さかった子がきっと自分を追い越すほど大きくなるんだと思うと何とも感慨深い。
毎日元気に走り回っている真や愛依もきっとジークに似て大きく力強く育つのだろう。
親としては出来れば抜かれたくはないが、獣人としてそれがあるべき姿なのだとしたら仕方ないと諦めよう。
「私の子ではあるんですけどね。どうやらパパに似てくれたようで、今はこんなに小さいですけど今に立派な可愛い女の子になりますよ。その時は一緒に遊んで上げて下さいね」
「うん……………オレもっとデカくなる」
何か決心するように頷くサウルに頑張れと応援するのだった。
「あと2人、娘と息子もいるので今度連れてきますね。きっと見たら驚きますよ」
翔は成長が皆より少し遅いためもう少し時間はかかるだろうが、繋は人間だが人見知りもしないためすぐに仲良くなれるだろう。
「アンタどんだけ子どもいんだよ」
「いっぱい、ですね。これからも増えていく予定ですけど。その時はまた連れてくるので仲良くしてくれると嬉しいです」
どれだけ増えるかは縁にも分からない。
だが家族が増えることに喜びしかなく、面倒などと思うこともない。
縁を誰より愛してくれる、縁が誰より愛している番たちの子は自分にとって何よりの宝なのだから。
「いつかサウルが大きくなって、この人だと思える人と結婚し、子どもが出来た時、きっと今の私の気持ちが分かりますよ」
「ほんと?」
両親のこともあり不安なのだろうが、今の彼なら大丈夫だと思える。
「私との約束を忘れてないならね」
「…………わかってる。しあわせになれ、だろ?」
幸せなど人それぞれではあるが、それでも自分が幸せだと思えるような人生を送ってほしい。
「少しずつ、少しずつでいいんです。嬉しいこと、楽しいこと、好きだと思えること、少しずつでいいですから見つけていって下さい」
「なんでもいいの?」
こちらを窺うような視線にもう何かあるのかと目を瞬かせれば……
「アンタのメシ食いたい」
思ってもみなかったお願いに喜んで頷く。
「いいですよ。じゃあ今日のお昼はサウルの好きなものにしましょうか」
「ううん。それは夜でいい。だから、その………昼はオレたちが作ったミソ食ってよ」
暫く会わない内に随分素直になったものである。
しかしまだ慣れないのか落ち着かないようで言った瞬間俯いてしまった。
「それは楽しみですね。ならお昼はサウルたちが頑張って作った味噌を味わいましょう」
俯いているため表情は分からなかったが、赤く染まる耳で頷くサウルの頭を撫でてやるのだった。
手を差し出せば瞬時に猫に姿を変え縁の肩に駆け上って来た。
頬に擦り寄ってくる頭を撫でてやりつつ外に向かえば、先に支度を終えていたらしいアレンとロンが待っていてくれた。
「玲は?」
「寝てる。行けるか?」
必要な物は鞄に詰め、大事なカイも今は縁の肩の上だ。
大丈夫だと頷けば求められるまま手を繋ぎロンに運んでもらうのだった。
「こんにちは。また暫くお世話になります」
「いらっしゃい。嬉しいわ。エニシさんたちがいるとまた一段と賑やかになるもの」
本当にそう思ってくれているのだと分かる笑顔に自然縁も笑顔になる。
「エニシにぃちゃんだ!」
「おにいちゃんだ!」
「でっけぇにいちゃんもいる!」
「カイもいる!」
子どもたちの熱い出迎えに笑い返しつつ、久しぶりの再会にカイを下せば喜んで彼らの元へ駆け寄っていくのだった。
「………来るのおせぇよ」
楽しそうに子どもたちと話すカイを見守っていれば、背後から聞こえてきた不機嫌そうなその声に笑ってしまう。
「ごめんなさい。随分待たせちゃいましたね。でもおかげで元気な子が産まれましたよ」
おいでと手招きすれば近寄ってきたサウルに抱えていた玲を見せる。
「ちっちぇ」
「まだそう経ってないですからね。それに獣人は人間より小さく産まれてくるんですよ」
赤ん坊を見るのは初めてなのかジッと玲を見つめるサウルに抱っこしてみるか聞いてみる。
「………いらない。こえぇもん」
あまりの小ささに怖くなってしまったのか首を振るサウルに大丈夫だと言うと、そっと腕に抱かせてやる。
どうしていいのか分からないのか戸惑いに目を彷徨わせるサウルだが獣人だからという嫌悪感は見られない。
「小さいでしょ?けどきっと今に彼みたいに大きくなりますよ。まぁ、この子は女の子なのでそこまでではないでしょうけど」
「え。………こんなに小せぇのに?」
腕の中の玲を見、隣りに佇むアレンを見、再び玲に視線を戻すとそんなバカなとばかりに驚いていた。
縁もそう思ったが、こんなに小さかった子がきっと自分を追い越すほど大きくなるんだと思うと何とも感慨深い。
毎日元気に走り回っている真や愛依もきっとジークに似て大きく力強く育つのだろう。
親としては出来れば抜かれたくはないが、獣人としてそれがあるべき姿なのだとしたら仕方ないと諦めよう。
「私の子ではあるんですけどね。どうやらパパに似てくれたようで、今はこんなに小さいですけど今に立派な可愛い女の子になりますよ。その時は一緒に遊んで上げて下さいね」
「うん……………オレもっとデカくなる」
何か決心するように頷くサウルに頑張れと応援するのだった。
「あと2人、娘と息子もいるので今度連れてきますね。きっと見たら驚きますよ」
翔は成長が皆より少し遅いためもう少し時間はかかるだろうが、繋は人間だが人見知りもしないためすぐに仲良くなれるだろう。
「アンタどんだけ子どもいんだよ」
「いっぱい、ですね。これからも増えていく予定ですけど。その時はまた連れてくるので仲良くしてくれると嬉しいです」
どれだけ増えるかは縁にも分からない。
だが家族が増えることに喜びしかなく、面倒などと思うこともない。
縁を誰より愛してくれる、縁が誰より愛している番たちの子は自分にとって何よりの宝なのだから。
「いつかサウルが大きくなって、この人だと思える人と結婚し、子どもが出来た時、きっと今の私の気持ちが分かりますよ」
「ほんと?」
両親のこともあり不安なのだろうが、今の彼なら大丈夫だと思える。
「私との約束を忘れてないならね」
「…………わかってる。しあわせになれ、だろ?」
幸せなど人それぞれではあるが、それでも自分が幸せだと思えるような人生を送ってほしい。
「少しずつ、少しずつでいいんです。嬉しいこと、楽しいこと、好きだと思えること、少しずつでいいですから見つけていって下さい」
「なんでもいいの?」
こちらを窺うような視線にもう何かあるのかと目を瞬かせれば……
「アンタのメシ食いたい」
思ってもみなかったお願いに喜んで頷く。
「いいですよ。じゃあ今日のお昼はサウルの好きなものにしましょうか」
「ううん。それは夜でいい。だから、その………昼はオレたちが作ったミソ食ってよ」
暫く会わない内に随分素直になったものである。
しかしまだ慣れないのか落ち着かないようで言った瞬間俯いてしまった。
「それは楽しみですね。ならお昼はサウルたちが頑張って作った味噌を味わいましょう」
俯いているため表情は分からなかったが、赤く染まる耳で頷くサウルの頭を撫でてやるのだった。
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