二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
上 下
389 / 475

申し訳ない

しおりを挟む
 突如上から落ちてきた子どもたちには驚いたが、怪我もないようで安心した。

 「ママおさかなさんやいてないの?」

 「え?」

 ………おさかなさん?少し考えそういうことかと振り向けばエルがさっと顔を逸らすのが見えた。
 彼が以前の縁の所業をバラしたに違いない。

 「…………そうですね。パパたちが来るまでまだかかるでしょうから作って待ってましょうか」

 「開き直ったよこの人」

 言われてしまったなら仕方ないと開き直ると作って待ってようと提案し準備することに。
 きっとセインたちも心配していることだろうから連絡をとりたいのだが、悲しいかな連絡手段を持っている人間がこちら側に全員来てしまっていることから出来なかった。
 唯一セインたちと一緒にいるだろうリルだが、リルと話せるのは縁しかいないため伝えるのも難しいだろう。
 探しに行くのも難しい中、ならばその場から動かず待っているのが一番だ。

 「焼くのもいいですけど今日はちょっと変わったものにしてみましょうか」

 「変わったもの?」

 何をするんだとエルが若干呆れていたが、手伝ってほしいと言えば嫌がることなく手を貸してくれた。
 エルには次々に魚を捌いてもらうと、醤油やみりんで味付けしたものの中にボトボトと入れていく。
 
 「………生で食べるの?」

 味付けはしているが焼かないと言った縁にエルが大丈夫なのかと心配していた。

 「鞄のおかげで鮮度には問題ないので大丈夫ですよ。ご飯にも合いますし、流石に今は飲めませんけどお酒にも合いますよ」

 「だから飲めないのになんでそんな知識だけはあるわけ?」

 にっこりと笑うと今度は細かく刻んでほしいと頼んでいく。

 「ネギトロ好きだったんですよ」

 「刻むのもったいなくない?そのまま食べればいいじゃん」

 それも美味しい。

 「勿論全てじゃないですよ。好みもあると思うので私の分だけ……念のため真のためにも作っておきましょうか」

 真の魚好きがどこまで適用されるかは分からないが、もしかしたらと少しだけ多めに作っておくことにし残りは漬け丼に。
 海苔がないのが残念だが作り方を知らないため宝箱から出てきてくれるのを願っておこう。ついでに山葵。

 「繋にはなめろうにしましょうか」

 「?、なめなめするの?」

 名前から魚を舐めるものだと思ったようだ。

 「なめなめじゃなくて、なめろうね。細かくしたお魚さんと味噌を混ぜ混ぜするんですよ」

 「たべる!」

 作りたいという繋のため材料を用意してやると混ぜるのをお願いすることにする。

 「ママあーん」

 「ひと口だけですよ。あとはパパたちが来てからーー」

 「「ママっ!!」」

 待ちきれないのだろう、口を開けて待つ繋に味見としてひと口だけと約束し食べさせてやろうとし、しかし突如凄い勢いで何かが体当たりしてきたため倒れ込んでしまった。
 
 「うぇ?な、なに?ちょっ、え?エニシ大丈夫?」

 あまりの速さにエルも驚いていたが、それが何か分かると怪我はないか確認された。
 見れば腹辺りに双子が張り付いており、これはかなり心配させてしまったようだと反省した。

 「思ったより早かったですね」

 「こいつらが泣いて騒がなきゃもう少し早く来れたんだがな」

 遅くなって悪かったと謝りながらジークが歩いてくるが、どことなくお疲れのように見えた。
 聞けば縁と繋たちがいなくなったことにより双子が泣き喚き、その声によってモンスターが集まってくるため倒すが泣き止まないため更にモンスターが集まってきてしまい悪循環に陥っていたようだ。
 双子につられ玲も泣いてしまい、その声に翔まで泣き始めてしまいパパたちはかなりお疲れだったらしい。
 
 「お疲れ様でした。あと心配かけてごめんなさい」

 そう言い腕を伸ばせば確かめるようにきつく抱きしめられた。
 落ちたのはわざとではなかったが、安否を確かめられないまま子どもたちを抱えての道のりはかなり大変だったことだろう。
 
 「無事でよかった。繋とアズまで落ちた時は肝が冷えた」

 「どうにか連絡出来ればよかったんですけどね。ごめんなさい」

 落ちていく娘の姿にセインは心配で仕方がなかっただろう。
 本人はそんなこと知りもせず元気に降りてきたものだが。

 「耳が痛い」

 「オレも」

 「俺もだ」

 耳元での大合唱にアレン、ルー、ロンがぐったりしてしまっている。
 こちらもお疲れ様と労ってやり、玲と翔を受け取り泣き止ませると用意しておいたご飯をみんなで仲良く食べるのだった。
 
 「リルもありがとう」

 「………我はやはり子を育てるのには向かんようだ」

 アレンたちより更に耳がいいだろうリルは疲れからか普段より一回り小さな姿になっており、それが我が子のせいかと思うと申し訳なくなってしまうのだった。
 少しでも早く合流出来るようにと頑張ってくれただろうリルにはギュッと抱きしめると満たされるまで魔力を注いでやるのだった。


 


 
 


 
 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。

riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。 召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。 しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。 別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。 そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ? 最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる) ※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

処理中です...