二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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一緒じゃなきゃダメ

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 「アズにぃどうしよう。ママおちちゃった」

 今にも泣きそうに顔を歪めながら見上げてくる妹に、大丈夫だよと握っていた手に力を込める。

 「大丈夫。ケガもないみたいだし、お兄ちゃんも一緒だから何があってもママのこと守ってくれるよ」

 あまりに突然のことに自分は反応が出来なかったが、一緒に落ちてしまったとはいえ兄であるエルがママの側にいる。
 このダンジョンへ来るのは2度目だが、絶望的に強いというような敵は今の所現れていないことからあの2人ならきっと大丈夫だろう。
 不安がないとは言わないが、以前のような焦りはない。

 「パパたちがきっとすぐママを見つけてくれるから」

 「……うん」

 心細そうに頷くが、泣きはしない妹にえらいねと笑って頭を撫でてやる。
 ママがいない今、元気づけてやれるのは自分しかいないのだ。

 「スノーもいるから大丈夫だよ。ね?」

 「シャアー」

 そうそうと言うように頷くスノーはママと従魔契約しているため離れていても意思疎通がとれる。
 そのスノーが大丈夫だと言うのだからきっと大丈夫だ。
 ママも待ってくれているからと自分にも言い聞かせながらもパパたちについていく。

 「お兄ちゃんが言ってたけど、ママ前にもこうやって水に落ちたことあるみたいだよ」

 「そうなの?」

 以前兄がこっそり教えてくれたのだ。ママは絶対言わないだろうからと。

 「その時はリルもいっしょに落ちちゃったって。みんなあわてて助けにいったのに魚やいて食べてたって言ってたよ」

 「ママひどいねぇ」

 ケガはないようで安心したけどあれはちょっと呆れたわと兄がぼやいていた。
 
 「それにおいしそうなにおいでお腹すいちゃったって」

 「なにそれ~」

 何があるか分からないダンジョンで、罠にかかり落ちたにもかかわらず何故ああものんびりできるのかと逆に感心したと言っていた。
 ママおもしろーいと笑う妹に少しは元気が出たようだとホッとする。

 「じゃあまたやいててくれるかな?」

 「みんなお腹すいちゃうかもね」

 「ケイはおみそがいいな」

 「ボクはしょうゆがいーーっ!」

 早く食べたいねと笑い合っていれば、突然足下がなくなる感覚に背筋が震えた。
 これはマズいと繋の手を離そうとするが……

 「ダメっ!」

 その手が離れようとした瞬間再び強く握られ、止める間もなく2人で落ちていく。
 頭上でパパたちが何か叫んでいたが、焦る頭で必死に考えるとせめて妹だけはと繋いでた手を引き寄せギュッと抱きしめる。

 「アズにぃだいじょうぶ。たかいたかいよ」

 「ーーえ?」

 胸元から聞こえたその声にどういうことかと顔を上げようとすれば、次の瞬間感じた浮遊感に驚いた。
 ふわふわと浮いては落ち、浮いては落ちと繋が言ったように高い高いされているような不思議な感覚。

 「ケイがしてるの?」

 「うん。ケイ、ママのたかいたかいだいすきだから」

 そう言われ以前ママが繋にしていたのを思い出した。
 他にしている人を見たことはなかったが、兄の叫びようにその高さが異常なことだけは分かっていた。
 だがされている本人が本当に楽しそうだったため気にしていなかったのだが……
 まさかこんな使い道があったのかと驚いたが、おかげで気持ちが落ち着き周りを見る余裕が出てきた。

 「ケイもう少しがんばれる?ボクは下があぶなくないか見ておくから」

 「わかった~」

 周りに身体をぶつけないよう気を付けながらも、下にモンスターなどがいないか注意深く見ていく。
 落下死の心配がなくなった途端襲われ倒されるなどあってはならない。
 ママ譲りの繋の魔力に心配はなく、しかしこのまま落ちていけばどこに辿り着くのか想像がつかず不安になる。

 「あっ、アズにぃ!ママだ!」

 「?……あ、ほんとだ」

 一瞬意味が分からなかったが、なるほど周りを探ってみればダンジョンではあり得ない温かな魔力を近くに感じた。
 どうやらかなり近くまで落ちてきたようだ。

 「ママどいて!」

 「ーーえ?アズ?」

 ポンと落とし穴から出たかと思えば、真下にママの姿が見え慌てた。

 「お兄ちゃん!」

 「えええぇぇぇ!ちょっ、ちょちょちょ、ちょ待っ、エニシこっち!」

 ぽかんとこちらを見上げてくるママにこのままではマズいと兄を呼べば、言いたいことが伝わったのか急いでママを避難させてくれた。
 繋のおかげでかなり落下速度は落ちているが、更に自分でも風魔法をかけるとケガをしないようゆっくりと降りていく。
 
 「ケイいたいとこない?」

 「なーい。ママ~」

 先程までの緊張感はどこへやら、楽しそうにママの元へ駆けていく妹に息をつくと後ろへついていく。
 
 「2人ともどうやって……それより怪我は?どこかぶつけたりしてませんか?」

 「ないよ~。トンネルみたいでたのしかった!」

 「ボクもだいじょうぶ」

 流石に繋のように落下を楽しむことなど出来はしなかったが、こうしてママと合流出来てホッとした。
 自分たちもあの後落とし穴に落ちたことを説明すれば、無事でよかったとギュッと抱きしめてくれるのだった。
 
 

 
 

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