二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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願いは

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 まだ心は迷っていた。
 だが結局は本人の意志を尊重することにした。

 「人はこれを従魔契約と言いますが、私はこれでスノーを従えさせたいと思っているわけでも道具として使いたいと思っているわけではありません。家族の1人として、大切なスノーの声を、意思を聞きたいだけなんです。だからもしスノーがもう嫌だと思った時は言って。その時はすぐに契約を解除しますから」

 「シャーシャー」

 分かったというように頷くスノーに勇気をもらう。
 頭の中ではまだ本当にこれでいいのかという考えが浮かんだが、その時はすぐにでも解除すればいいのだと抑え込んだ。
 以前エルに習いリルとしたためそれほど時間がかかるのことなく済ませることができた。

 「……ママ、ママ…ママ。ママ私の声聞こえる?」

 「ええ。……ええ聞こえます。スノーの優しくて可愛い声が聞こえる」

 想像していたより可愛らしい声に自然笑みが浮かんだ。
 腕を伸ばせば嬉しいと擦り寄ってくるスノーに縁も嬉しいと抱き付いた。

 「ママ、ママ。ママ嬉しい。ママがお返事してくれてる。嬉しい。ママ大好き」

 「私もスノーが大好きですよ。話すことが出来て本当に嬉しい」

 迷いはしたがやはりこうして声を聞き話すことが出来て本当に嬉しかった。

 「嬉しい嬉しい。ずっと、ずっとね、こうやってみんなみたいにお話ししたかったの。ママにね、大好きだよって言いたかったの」

 今まで言ってなかったわけではないだろう。
 しかし相手に伝えるためとなれば、やはり声を発して伝えるのが一番であり今そうすることが出来て嬉しいと喜ぶスノー。

 「ありがとう。ありがとうスノー。スノーにそう言ってもらえて私も嬉しいです」

 言葉がないからこそ不安だったのは縁も同じだ。
 同じ種族でない以上何が正しいのか分からずちゃんと育てられているのか不安だった。
 こんなママで嫌になっていないかと何度も考えた。
 だからこそこうして声を聞き大好きだと言われ嬉しい。

 「ね、みてみて。ママが言ってた通りだよ。昔みたいにちっちゃくなれた。これなら私もママと、みんなと前みたいに一緒に寝られる?一緒にお出かけできる?」

 私もみんなと一緒にいたいというスノーに、随分寂しい思いをさせてしまったようだと反省する。
 ごめんねと謝る縁に、しかしスノーはちがうよと笑って返した。

 「大っきい身体がいやなんじゃないの。大っきいとみんなを乗せてあげられるし、ママのこと守ることもできるでしょ?だからいやじゃないの。けど、けどね……前みたいにママのそばにいられないし、みんなとお外にも行けないからちょっと寂しかったの」

 大きく美しいスノーは縁の自慢でもあるが、皆で行動するにはかなりの不利だった。
 当たり前だが縁たちが暮らす家は人の大きさに合わせてあるものであり、外に出るにも人目があり中々外に連れていってあげられなかった。

 「そうですね。これからは一緒にいられますよ。夜もみんなで一緒に寝ましょう。お外も一緒に行きましょう。前みたいに、スノーも一緒に」

 「うん、うん!」

 懐かしい小さなスノーの姿に微笑む。

 「こんなに小さかったんですね。懐かしい」

 「ママ大っきいスノーきらい?」

 可愛い可愛いと撫でる縁にスノーが不安そうに尋ねてくる。
 そんなことあるはずないのに。

 「いいえ。小さくて可愛いスノーも、大きくて綺麗なスノーもどちらも大好きですよ」

 「私もママ大好き!」

 昔のように縁の肩まで登ってくると頬に擦り寄ってくるスノーが可愛くて仕方がない。

 「リルおじちゃんがね、これから色々教えてくれるって!小さくてもママ守れるように頑張るね!」

 張り切るスノーの気持ちは嬉しい。嬉しいのだが………

 「リル、おじちゃん?」

 スノーはリルのことをそんな風に呼んでいたのか。
 縁にしても家族にしてもみんながリルと呼んでいたためスノーのおじちゃん呼びに驚いた。
 
 「その子なりに我を敬っているらしい」

 「リル」

 いつの間に来ていたのか、スノーと従魔契約するとリルには事前に言ってあったため様子を見に来てくれたのだろう。
 大丈夫かと尋ねてくるリルに頷くと、スノーのおじちゃん呼びに笑う。

 「そうですね。スノーからしたらリルはおじちゃんかもですね」

 「皆のようには呼べんと言われてな。しかし幼子に様や殿など付けて呼ばせるのは気が引けたのだ」

 妥協案だったようだ。
 だがあながち間違ってはいないだろう。

 「私もそう呼んだ方がいいですか?」

 冗談まじりに言ってみれば、そんなものいらんと首を振られた。

 「心配してくれてありがとうリル。無事に終わりました」

 「そうか。これでこの子の寂しさもお主の心配も少しは減ったな」

 笑って頷くとリルのふわふわな毛に抱きつく。

 「大好きですよ、リル」

 「私もリルおじちゃん大好き!」

 縁の首に巻き付いていたスノーも大好きだよとリルに擦り寄っていた。

 「ああ。我もだ」

 新たな不安もあれど、こうして心が通じ合えたことに喜ぶのだった。

 



 
 
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