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聞いて!
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人は見かけによらないとはよく言ったものだ。
「エル見て下さい。すっごい大きな幼ちゅーー」
「ギャーーッ!」
エルの大絶叫と共に凄い勢いで腕を掴まれたかと思えば手の平に乗っていた幼虫をはたき落とされる。
あまりの一瞬の出来事に隣で一緒に作業していたアズも驚きに手が止まっていた。
「エル?」
「お兄ちゃん?」
どうしたのかとキョトンとエルを見るがぶんぶんと首を振られた。
「その顔で!そんな笑顔で!芋虫を嬉しそうに見せてこないで!」
「……………え~」
意味が分からない。
「エルって虫ダメでしたっけ?前に真たちにバッタをーー」
「そういうことじゃないの!エニシだからダメなの!」
それは………なんで?
「虫触ったぐらいで怪我したりしませんよ?」
まさかそこまで敏感肌でも虫嫌いでもない。
ゴキブリなど多少苦手なものはあるが、昔は母親と一緒に近くの林にカブトムシを捕まえに行ったこともあったほどだ。
「ちがう!そういうことじゃなくて……えっと、だから……あれだよ。エニシは虫が苦手であってほしかったっていうか………そんな笑顔で見せられてオレの視界が耐えられなかった」
「常々思ってましたけどエルって私のことどう見えてるんですか?」
縁も男なのだから大体の虫は大丈夫だし触れる。
突然出現すれば驚きはするが女性のように怖いと悲鳴を上げることなどしないし、飛ばない限りはゴキブリも退治することが出来るが?
「……なんだろ。こう……オレ的に有り得ない組み合わせに驚いた」
よく分からん。
「芋虫に限りませんけど普通に虫を食べる地域もあるみたいですよ」
縁自身は食べたいとは思わないが、そういう食べ物が存在していることは知っていた。
ただこちらの世界ではどうか知らないが。
「味はどうなんですかね?芋虫とかなら焼けばポテトみたいな感じに…………ごめんなさい」
すっごい嫌そうな顔で首を振られた。
「やめて。本当にやめて。アズにそんな変な知識埋めつけないで」
「あ」
そう言われ初めてアズを見ればキョトンとこちらを見上げていた。
「ママ虫食べる?」
「……………食べませんよ」
何となくエルが言いたかったことが理解出来た。
虫を美味しそうに頬張るアズの姿を想像し、これはないと即座に脳が拒絶した。
「でも魔族のお屋敷とかってこう…薄暗くて蜘蛛が巣くってる印象があるんですけど」
いや、それは吸血鬼だったか?
「なにそれ。どんだけほったらかしなの?普通に掃除しなよ」
普通に突っ込まれた。
やはり勝手な印象だけで話すのはよくない。
「巨大な蜘蛛を飼ってたり……」
「しないから!」
うん。よくない。
確かに時々見るエルの部屋は蜘蛛が発生するほど汚くもなく、むしろきちんと整頓されていて綺麗だった。
縁の方が大雑把と言えるだろう。
「片付けが必要な時はエルを呼びますね」
「いやいや。何の話し?意味分かんない」
大丈夫。私は分かってます。
「あ、なら今日のオヤツに骨煎餅はどうですか?」
「「?」」
虫ではないが珍しいかもしれない食べ物にどうかと聞くが、エルもアズも知らないらしく首を傾げていた。
何となくそうだろうなと思ってはいたが。
「魚の骨をカリカリになるまで油で揚げるんですよ。塩を振って、お酒のつまみなんかにいいですよ」
「話し飛び過ぎだし。しかも飲めないのに何でそんな知識あんの?」
今世が飲めないだけなのだ。以前はちゃんと飲めていた。
「まぁちょっと思い出して食べてみたくなっただけなので嫌なら他のものにしますよ?」
元々食べる習慣がなかった彼らに無理に食べさせようとは縁も思わない。
「食べたい!」
「オレも。エニシが言うんなら美味しいんでしょ?」
多少の好みはあれど味覚にそれほど違いはないためエルたちでもきっと美味しいと思う。
2人の了解も得られたので身は夕食に回し、オヤツは骨煎餅にすることにするのだった。
器用なエルは進んで魚を捌いてくれ……
「これマジでいいよね。すっごい切れ味。………捌くのって結構力いるんだよなぁ」
何故だろう。
包丁を褒めてくれているのだろうが、エルが言うと何か他のものを捌いているかのように聞こえる。
何とは言わないが。
「これいいな!塩がいい感じに効いてて美味い!」
「態々骨を食べるのはどうかと思ったが……美味いな」
強靭な顎と歯を持っている獣人であるアレンたちはボリボリと勢いよく食べていくが、そうではないアズや繋にはゆっくり食べるように注意しておいた。
「……………」
そして魚好きの真は周りの声も聞こえていないのか唯々無言で煎餅を頬張るのだった。
彼の魚好きは骨にまで適用されるらしい。
「気に入りましたか?また今度作ってあげますね」
美味しいならとそう言えば、最近見た中で1番の笑顔で頷かれるのだった。
なんでこうも魚が好きなのかは未だに謎だが。
縁も魚は好きではあるがこれほどまでではない。だからこその謎なのだった。
「エル見て下さい。すっごい大きな幼ちゅーー」
「ギャーーッ!」
エルの大絶叫と共に凄い勢いで腕を掴まれたかと思えば手の平に乗っていた幼虫をはたき落とされる。
あまりの一瞬の出来事に隣で一緒に作業していたアズも驚きに手が止まっていた。
「エル?」
「お兄ちゃん?」
どうしたのかとキョトンとエルを見るがぶんぶんと首を振られた。
「その顔で!そんな笑顔で!芋虫を嬉しそうに見せてこないで!」
「……………え~」
意味が分からない。
「エルって虫ダメでしたっけ?前に真たちにバッタをーー」
「そういうことじゃないの!エニシだからダメなの!」
それは………なんで?
「虫触ったぐらいで怪我したりしませんよ?」
まさかそこまで敏感肌でも虫嫌いでもない。
ゴキブリなど多少苦手なものはあるが、昔は母親と一緒に近くの林にカブトムシを捕まえに行ったこともあったほどだ。
「ちがう!そういうことじゃなくて……えっと、だから……あれだよ。エニシは虫が苦手であってほしかったっていうか………そんな笑顔で見せられてオレの視界が耐えられなかった」
「常々思ってましたけどエルって私のことどう見えてるんですか?」
縁も男なのだから大体の虫は大丈夫だし触れる。
突然出現すれば驚きはするが女性のように怖いと悲鳴を上げることなどしないし、飛ばない限りはゴキブリも退治することが出来るが?
「……なんだろ。こう……オレ的に有り得ない組み合わせに驚いた」
よく分からん。
「芋虫に限りませんけど普通に虫を食べる地域もあるみたいですよ」
縁自身は食べたいとは思わないが、そういう食べ物が存在していることは知っていた。
ただこちらの世界ではどうか知らないが。
「味はどうなんですかね?芋虫とかなら焼けばポテトみたいな感じに…………ごめんなさい」
すっごい嫌そうな顔で首を振られた。
「やめて。本当にやめて。アズにそんな変な知識埋めつけないで」
「あ」
そう言われ初めてアズを見ればキョトンとこちらを見上げていた。
「ママ虫食べる?」
「……………食べませんよ」
何となくエルが言いたかったことが理解出来た。
虫を美味しそうに頬張るアズの姿を想像し、これはないと即座に脳が拒絶した。
「でも魔族のお屋敷とかってこう…薄暗くて蜘蛛が巣くってる印象があるんですけど」
いや、それは吸血鬼だったか?
「なにそれ。どんだけほったらかしなの?普通に掃除しなよ」
普通に突っ込まれた。
やはり勝手な印象だけで話すのはよくない。
「巨大な蜘蛛を飼ってたり……」
「しないから!」
うん。よくない。
確かに時々見るエルの部屋は蜘蛛が発生するほど汚くもなく、むしろきちんと整頓されていて綺麗だった。
縁の方が大雑把と言えるだろう。
「片付けが必要な時はエルを呼びますね」
「いやいや。何の話し?意味分かんない」
大丈夫。私は分かってます。
「あ、なら今日のオヤツに骨煎餅はどうですか?」
「「?」」
虫ではないが珍しいかもしれない食べ物にどうかと聞くが、エルもアズも知らないらしく首を傾げていた。
何となくそうだろうなと思ってはいたが。
「魚の骨をカリカリになるまで油で揚げるんですよ。塩を振って、お酒のつまみなんかにいいですよ」
「話し飛び過ぎだし。しかも飲めないのに何でそんな知識あんの?」
今世が飲めないだけなのだ。以前はちゃんと飲めていた。
「まぁちょっと思い出して食べてみたくなっただけなので嫌なら他のものにしますよ?」
元々食べる習慣がなかった彼らに無理に食べさせようとは縁も思わない。
「食べたい!」
「オレも。エニシが言うんなら美味しいんでしょ?」
多少の好みはあれど味覚にそれほど違いはないためエルたちでもきっと美味しいと思う。
2人の了解も得られたので身は夕食に回し、オヤツは骨煎餅にすることにするのだった。
器用なエルは進んで魚を捌いてくれ……
「これマジでいいよね。すっごい切れ味。………捌くのって結構力いるんだよなぁ」
何故だろう。
包丁を褒めてくれているのだろうが、エルが言うと何か他のものを捌いているかのように聞こえる。
何とは言わないが。
「これいいな!塩がいい感じに効いてて美味い!」
「態々骨を食べるのはどうかと思ったが……美味いな」
強靭な顎と歯を持っている獣人であるアレンたちはボリボリと勢いよく食べていくが、そうではないアズや繋にはゆっくり食べるように注意しておいた。
「……………」
そして魚好きの真は周りの声も聞こえていないのか唯々無言で煎餅を頬張るのだった。
彼の魚好きは骨にまで適用されるらしい。
「気に入りましたか?また今度作ってあげますね」
美味しいならとそう言えば、最近見た中で1番の笑顔で頷かれるのだった。
なんでこうも魚が好きなのかは未だに謎だが。
縁も魚は好きではあるがこれほどまでではない。だからこその謎なのだった。
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