374 / 475
時には
しおりを挟む
珍しいこともあるものだと驚きに目を見張る。
「この間は部下が悪かった。あれは俺の判断違いだった」
「…………」
この人ちゃんと謝れるんだなと純粋に感心した。
玲も無事産まれたことから挨拶がてら久しぶりにレオナルドの手伝いに来たのだが、来て数分経たずして扉を蹴り飛ばす勢いで部屋に入ってきたマルスに謝罪されたのだ。
部屋の主であるレオナルドでさえ驚きに手を止めている。
「お久しぶりですね」
「あ?ああ……そうだな」
色々すっ飛ばしての謝罪に、しかし挨拶が先だろうと声をかければ困惑しながらも返してくる。
さてどうしたものかとレオナルドを窺ええば、大きな溜め息の後マルスにとりあえず座るように促していた。
「フレックさんはお元気ですか?」
「ああ。毎日元気に叱られてるよ」
落ち込んでなければいいなと思っていたが元気なようで何より。
丁度いいかとレオナルドも交え休憩することにし、お茶を入れるとエルたちにも配っていく。
「色々土産まで持たせてくれたみたいでありがとな」
お節介かもと思ったが美味しく食べてくれたようだ。
「それで……彼はどうなりましたか?」
「辞めちまった。他の奴らからも話しを聞いてみたらどうも態度も悪ぃが訓練もサボってみてたみたいでな。俺が直々に訓練してやったら1日経たねぇ内に辞めていきやがった」
「そうですか」
やはりというか口先だけの男だったようだ。
「まぁそのこともそうだけどな、フレックのヤツもあれだったらしいな。そのことも含めて悪かった」
縁に向かって頭を下げるマルスを見下ろす。
彼が悪いわけではないことは理解している。だがーー
「………正直言ってフレックさんにはがっかりしました。貴方たちとも距離を置いた方がいいだろうとも考えました」
「…………」
今はさておきあの時感じたことを正直にマルスに告げる。
「けど……ちゃんと話し合って彼も彼なり答えを出してくれたみたいなのでそれはやめました。なので今後も仲良くしてもらえれば嬉しいです」
そう言った縁の言葉に分かりやすく肩の力を抜いたマルスに苦笑いする。
彼らが縁のことをどう思っているかは知らないが、自分と仲良くしたところでそれほど利益があるようには思えないが。
「ただ私もそれほど心が広いわけではないので次があるとは期待しないで下さいね」
今回は許したのだ。次もまたなどありえはしないと忠告だけはしておけば真剣な面持ちでマルスも頷いてくれた。
あくまで縁の最優先は家族であり、言い方は酷いだろうがどちらかを捨てろと言われれば迷わずマルスたちの手を縁は離すだろう。
「がっかりしたと言いましたけど、私もそれなりにマルスさんたちのことを信用していたというのもあるんですよ。元気で真っ直ぐなマルスさんが私も好きだったので」
正直な彼は時に言わなくてもいいことも言うこともあるがだからこそ嘘をいうような性格ではないことが分かり信用出来るのだ。
「……こんなジジイ褒めたところで何にも出ねぇぞ」
「仲良くしてもらえれば十分ですよ。エリックからもよくしてもらってると聞いてるので有り難く思ってますし」
自分なりに自分の道を進もうとしているエリックにマルスたちが手を貸してくれているのは本人から聞いていた。
「お前一体いくつだよ。俺の方がガキみたいじゃねぇか」
肉体的年齢で言えば確実にマルスが上だが、前世の記憶や縁の性格もあり上に思われることもあるだろう。
だが態々そんなことを説明するつもりも、する必要もないだろう。
今の縁のことを皆が気に入ってくれている、それが大切なのだ。
「そう思うならもう少しフレックさんに叱られないように頑張って下さい」
「分かってんよ」
苦い顔をしながらも頷いたので大丈夫だろう。
謝罪も終わり、ならばフレックの顔もついでに見に行こうと兵舎の方にも顔を出せば笑って迎えてもらえた。
「約束通り抱っこしてもらいに来ました」
以前言った、産まれたら抱っこしてやってほしいという言葉通り玲を抱えてみせれば笑って頷いてくれる。
「本当に小さいんですね。とても可愛いです」
赤ん坊を抱くのは初めてだというが思いの外丁寧に抱き抱えてくれたフレックに良かったと縁も笑って頷くのだった。
「この間は部下が悪かった。あれは俺の判断違いだった」
「…………」
この人ちゃんと謝れるんだなと純粋に感心した。
玲も無事産まれたことから挨拶がてら久しぶりにレオナルドの手伝いに来たのだが、来て数分経たずして扉を蹴り飛ばす勢いで部屋に入ってきたマルスに謝罪されたのだ。
部屋の主であるレオナルドでさえ驚きに手を止めている。
「お久しぶりですね」
「あ?ああ……そうだな」
色々すっ飛ばしての謝罪に、しかし挨拶が先だろうと声をかければ困惑しながらも返してくる。
さてどうしたものかとレオナルドを窺ええば、大きな溜め息の後マルスにとりあえず座るように促していた。
「フレックさんはお元気ですか?」
「ああ。毎日元気に叱られてるよ」
落ち込んでなければいいなと思っていたが元気なようで何より。
丁度いいかとレオナルドも交え休憩することにし、お茶を入れるとエルたちにも配っていく。
「色々土産まで持たせてくれたみたいでありがとな」
お節介かもと思ったが美味しく食べてくれたようだ。
「それで……彼はどうなりましたか?」
「辞めちまった。他の奴らからも話しを聞いてみたらどうも態度も悪ぃが訓練もサボってみてたみたいでな。俺が直々に訓練してやったら1日経たねぇ内に辞めていきやがった」
「そうですか」
やはりというか口先だけの男だったようだ。
「まぁそのこともそうだけどな、フレックのヤツもあれだったらしいな。そのことも含めて悪かった」
縁に向かって頭を下げるマルスを見下ろす。
彼が悪いわけではないことは理解している。だがーー
「………正直言ってフレックさんにはがっかりしました。貴方たちとも距離を置いた方がいいだろうとも考えました」
「…………」
今はさておきあの時感じたことを正直にマルスに告げる。
「けど……ちゃんと話し合って彼も彼なり答えを出してくれたみたいなのでそれはやめました。なので今後も仲良くしてもらえれば嬉しいです」
そう言った縁の言葉に分かりやすく肩の力を抜いたマルスに苦笑いする。
彼らが縁のことをどう思っているかは知らないが、自分と仲良くしたところでそれほど利益があるようには思えないが。
「ただ私もそれほど心が広いわけではないので次があるとは期待しないで下さいね」
今回は許したのだ。次もまたなどありえはしないと忠告だけはしておけば真剣な面持ちでマルスも頷いてくれた。
あくまで縁の最優先は家族であり、言い方は酷いだろうがどちらかを捨てろと言われれば迷わずマルスたちの手を縁は離すだろう。
「がっかりしたと言いましたけど、私もそれなりにマルスさんたちのことを信用していたというのもあるんですよ。元気で真っ直ぐなマルスさんが私も好きだったので」
正直な彼は時に言わなくてもいいことも言うこともあるがだからこそ嘘をいうような性格ではないことが分かり信用出来るのだ。
「……こんなジジイ褒めたところで何にも出ねぇぞ」
「仲良くしてもらえれば十分ですよ。エリックからもよくしてもらってると聞いてるので有り難く思ってますし」
自分なりに自分の道を進もうとしているエリックにマルスたちが手を貸してくれているのは本人から聞いていた。
「お前一体いくつだよ。俺の方がガキみたいじゃねぇか」
肉体的年齢で言えば確実にマルスが上だが、前世の記憶や縁の性格もあり上に思われることもあるだろう。
だが態々そんなことを説明するつもりも、する必要もないだろう。
今の縁のことを皆が気に入ってくれている、それが大切なのだ。
「そう思うならもう少しフレックさんに叱られないように頑張って下さい」
「分かってんよ」
苦い顔をしながらも頷いたので大丈夫だろう。
謝罪も終わり、ならばフレックの顔もついでに見に行こうと兵舎の方にも顔を出せば笑って迎えてもらえた。
「約束通り抱っこしてもらいに来ました」
以前言った、産まれたら抱っこしてやってほしいという言葉通り玲を抱えてみせれば笑って頷いてくれる。
「本当に小さいんですね。とても可愛いです」
赤ん坊を抱くのは初めてだというが思いの外丁寧に抱き抱えてくれたフレックに良かったと縁も笑って頷くのだった。
21
お気に入りに追加
3,696
あなたにおすすめの小説
【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜
N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間)
ハーレム要素あります。
苦手な方はご注意ください。
※タイトルの ◎ は視点が変わります
※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます
※ご都合主義です、あしからず
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される
Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木)
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!
黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。
死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。
闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。
そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。
BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)…
連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
偽物の番は溺愛に怯える
にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』
最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。
まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる