二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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着実に

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 「繋……アレンを呼んできてくれますか?」

 「うん、わかった。アーパパ~」

 ふらつく足元にこれは少しマズいなとアレンを呼んできてもらう。
 洗濯の途中ではあったが、手を止めるとその場に手を付き座り込んでしまった。

 「縁っ!」

 そう時間もかからず駆け寄ってきてくれたアレンに手を借りると部屋まで運んでもらった。

 「すいません。ちょっとふらつい……」

 最後まで言い終える前に込み上げてきた吐き気に口を押さえると、慌ててトイレに向かおうとしアレンに抱え上げられた。

 「いいから。気持ち悪いなら全部吐いちまえ」

 「ーーオェ」

 背を撫でてくれるアレンにこんなこと手伝わせて申し訳ないと思ったが、続く気持ち悪さに不安になり甘えることにした。
 握られた右手が嬉しく心強かった。
 はっきりとは分からないがアレンの子を孕ってもう6ヶ月、それまでこれと言って悪阻などの症状はなかったのだが、突如きた吐き気に戸惑い不安になった。

 「代わってやれなくてごめんな」

 そんなことないと返事をしようにも口に出来ず、それは後にすることにし治まるまで吐き続けた。
 それから数分なのか数時間なのか分からないまま吐き続ければ、漸く治まった吐き気に力なく崩れ落ちる。
 気分は幾分スッキリしたが手を持ち上げるのさえ億劫になっていれば、水で口をすすがれ部屋まで運んでくれるとあっという間に汚れた服まで着替えさせてくれた。
 何とも出来た旦那様である。

 「アレン……」

 「大丈夫だ。ここにいるから何でも言え」

 「はい。ありがとう」

 未だ力強く握られた手が嬉しく頬を擦り寄せれば、少しは安心したのかホッとしたように優しく撫でられた。

 「びっくりしましたね」

 「ああ。けどよく考えたら今まで何もなさ過ぎたんだ。油断してた」

 軽い立ち眩みはあれど双子の時のような酷い悪阻もなかったため普段とそう変わらず過ごしてしまっていた。
 アレンが悪いのではない。縁の自覚がなさ過ぎたのだ。

 「それだけ子どもが元気だという証拠ですよ。きっとアレンに似たんですね」

 「そうか?これだけ心配かけるんだから縁に似たのかもしれないぞ」

 「それは嫌です。私はアレンに似た子がいい」

 選べないと分かってはいても願うことは自由である。

 「……そうか。俺は……もうどっちでもいいよ」

 その言葉に父親になるのが嫌になってしまったのかと不安になったが、そんな縁の顔色に気付いたのか違うと首を振られた。

 「いやになったとかそんな意味じゃない。無事に産まれてくれさえすれば、縁が無事ならそれでいいんだ。男でも女でも2人が無事ならそれでいい」

 辛い吐き気に弱る縁の姿に男だ女だというのは些細なことだとアレンは言う。

 「どっちでも俺の子だ。俺と縁の大切な子だ。可愛くないわけがないだろ」

 「そう、ですね。でも……私はアレン似がいい」

 「頑固だなぁ」

 譲らない縁にアレンが苦笑いする。

 「だってアレンのその青い瞳が大好きなんです。綺麗な黒髪も、大きくて力強いその身体もその優しいところも大好きだから…だからそんな大好きなアレンに私は似てほしい」
 
 「………バカだなぁ」
 
 そんな理由かよと泣きそうになりながらも笑うアレンに手を伸ばせば身体を起こされギュッと抱きしめてくれた。
 この力強い腕が羨ましくもあるが、それとは別に安心もする。
 決して揺るがないだろうその手が、離しはしないというその力強さが凄く嬉しいのだ。

 「好きな人に似て欲しいというのは何もおかしなことじゃないでしょう?アレンだってそう変わらないと思いますけど」

 「まぁな。でもそう言ってもらえるのは嬉しいな。縁がどれだけ俺を愛してくれているのか伝わってきた」

 嬉しいと縁の頭に頬を擦り寄せてくるアレンに縁もギュッと抱きつく。
 今はもういい歳ではあるがこうして誰かに甘えられるというのは本当に嬉しいものだ。

 「アレン、ねぇキスして」

 「いくらでも」

 言ってから、そういえばさっき吐いたばかりだったと慌てて離れようとしたが何してるんだとばかりに腰を掴まれ口付けられた。
 すすぎはしたが気にはならないのだろうかと何とか抵抗しようとするが、許さないとばかりに舌を絡められ自然身体から力が抜けていく。

 「全部俺のだろ?」

 「………途中で嫌になっても知りませんからね」

 「ならねぇよ。縁が死ぬその日までずっと一緒だ」

 アレンが縁との約束を忘れることはない。破ることも決してない。
 そう分かっているからこそ彼の言葉が何より嬉しい。

 「愛してます、アレン」

 「俺も愛してる。縁だけをずっと愛してる」

 なら子どもは?と笑いながらも聞いてみれば……

 「縁の次に大好きだ!」

 ならば問題なし!と2人で笑い合うのだった。

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