360 / 475
必要なのは?
しおりを挟む
「ママこれは?」
「うーん。色は綺麗ですけど少し小さ過ぎますね。もう少し大き目のものを探してくれますか?」
「はーい」
今日も今日とて雲一つない快晴にぐったりしながらも差し出された貝を受け取ったが、縁が求めるものには大きさが足りず繋には悪いがもう一度探してもらうことにする。
「ママ。シンのこれでいい?」
「うん、大きさも丁度いいですね。じゃあ真のはこれにしましょう。ありがとうアズ、エル」
暑い中文句も言わず探すのを手伝ってくれた2人に礼を言うと、脱水症状にならないようにと水を渡す。
ゴクゴクと勢い良く飲み干したかと思えば、今度は愛依の分だと繋と一緒に貝を探し始めるのだった。
何とも頼もしい兄妹たちだ。
何故こうも繋たちが張り切り貝殻を探しているかと言えば、昨日アズたちに渡した御守りを真たちの分も作ってやるためである。
ただ2人に渡すのはブレスレットではなく、貝殻のネックレス。
手作りのためそんなお洒落で凝ったものは作れないが、2人のためだけにと特別感が出るように考えている。
2人に選ばせてもいいのだが、どうせなら兄姉たちが自分たちの為に一生懸命探してくれたなら尚嬉しいだろうとエルたちのを手を借りた。
2人の為にとエルたちも喜んで手伝ってくれるのだった。
「にしても何で貝なの?意味はないかもしれないけど魔石とかの方が綺麗じゃない?」
「見た目だけならそれでもいいでしょうね。けどまだ子どものあの2人に渡しても綺麗だからとずっと着けていてくれるか分からないでしょう?」
どうせ贈るならばきちんと身に付けていてほしいと思う。
女の子の愛依ならばまだ綺麗だからと着けていてくれるかもしれないが、そうなると男の子である真にはそれだけでは足りない。
「そう?………まぁ真も男だからなぁ」
「でしょ?なので……これです」
ジャン!と鞄から取り出したそれをエルに見せれるが、見たことがないのだろう物体に首を傾げている。
「何これ?なんか……ベタベタするけ、どーーえ?ちょっと待ってこれ……」
縁が出したのだからと警戒することなくそれを手に取り腕に少し塗り込めば、それまでエルの手にあったはずの小さな傷が次の瞬間にはまるで消えたかのようになくなっていた。
「…………」
「すごくないですか?アル爺は特に喜んでくれました」
「そういう問題!?」
よく出来たでしょと自慢するように笑って言ったのだが、エルには今にも掴みかからんばかりに驚かれた。
「え?え?何これ?何なのいったい?」
「こちらでは何と言うのか分かりませんが、軟膏……ええっと要はまぁ塗り薬ですね。元々あったものに更に回復薬を混ぜて効能を上げてもらいました」
そう、何故ネックレスを作るにあたり貝殻を選んだかと言えば中にこの軟膏を入れるためだからである。
繋やアズたちとは違い魔法は使えないが身体能力が高い獣人である2人はそのため動くことが大好きであり生傷が絶えない。
一つ一つは小さなものでも、やはり大切な我が子に傷を残したくない縁は考えに考えこの軟膏を思いついた。
元々町でも売っているのは知っていたのだが、あまり効力がないのと縁にしても繋にしても自身で治せてしまうため必要としてなかったのだ。
だが今回のことをきっかけに2人にも簡単だが傷薬を持たせておこうと思った。
調合の不安もあったためアル爺にも相談すれば嬉々として付き合ってくれ無事に完成させることが出来た。
完成品はアル爺には勿論、マーガレットにレオナルドにも渡してある(ある意味実験体)。
「綺麗だけでなく怪我を治すための薬も入れておけば嫌がることなく着けてくれるかなと」
目の前に縁たちがいればすぐ様治してやれるが、ではそうでなかった時に薬があるのとないのではきっと違うと思う。
どんな傷でもとは言わないが、ある程度の怪我は治せるため持っていて損はないだろう。
「大き過ぎず、でも小さ過ぎても薬が入りませんからそれなりの大きさが必要だったんです」
丁度いいものを探してくれてありがとうと言えば、深い溜め息の後どういたしましてとエルも苦笑いしていた。
それは古い日本でもあったという二枚貝に入れて薬を持ち歩くというもので、流石に縁も実物を見たことはなかったがそれにならい作ることにしたのだ。
「小さな傷はその内に治ると放っておくのも悪くはありませんけど、どうせなら早く治して痛みも少ない方がいいじゃないですか」
「それはそうだろうけどさ。………オレにはエニシのその発想が恐ろしいよ。なんでそんなポンポン思い付くわけ?」
と言われても縁もあれば嬉しいなと思ったものを作ってしかいないため何がどうとも言えない。
欲しいと思ったから作った。それだけである。
それがおかしいんだと言われたがそれの何が悪いのだと開き直るのだった。
「うーん。色は綺麗ですけど少し小さ過ぎますね。もう少し大き目のものを探してくれますか?」
「はーい」
今日も今日とて雲一つない快晴にぐったりしながらも差し出された貝を受け取ったが、縁が求めるものには大きさが足りず繋には悪いがもう一度探してもらうことにする。
「ママ。シンのこれでいい?」
「うん、大きさも丁度いいですね。じゃあ真のはこれにしましょう。ありがとうアズ、エル」
暑い中文句も言わず探すのを手伝ってくれた2人に礼を言うと、脱水症状にならないようにと水を渡す。
ゴクゴクと勢い良く飲み干したかと思えば、今度は愛依の分だと繋と一緒に貝を探し始めるのだった。
何とも頼もしい兄妹たちだ。
何故こうも繋たちが張り切り貝殻を探しているかと言えば、昨日アズたちに渡した御守りを真たちの分も作ってやるためである。
ただ2人に渡すのはブレスレットではなく、貝殻のネックレス。
手作りのためそんなお洒落で凝ったものは作れないが、2人のためだけにと特別感が出るように考えている。
2人に選ばせてもいいのだが、どうせなら兄姉たちが自分たちの為に一生懸命探してくれたなら尚嬉しいだろうとエルたちのを手を借りた。
2人の為にとエルたちも喜んで手伝ってくれるのだった。
「にしても何で貝なの?意味はないかもしれないけど魔石とかの方が綺麗じゃない?」
「見た目だけならそれでもいいでしょうね。けどまだ子どものあの2人に渡しても綺麗だからとずっと着けていてくれるか分からないでしょう?」
どうせ贈るならばきちんと身に付けていてほしいと思う。
女の子の愛依ならばまだ綺麗だからと着けていてくれるかもしれないが、そうなると男の子である真にはそれだけでは足りない。
「そう?………まぁ真も男だからなぁ」
「でしょ?なので……これです」
ジャン!と鞄から取り出したそれをエルに見せれるが、見たことがないのだろう物体に首を傾げている。
「何これ?なんか……ベタベタするけ、どーーえ?ちょっと待ってこれ……」
縁が出したのだからと警戒することなくそれを手に取り腕に少し塗り込めば、それまでエルの手にあったはずの小さな傷が次の瞬間にはまるで消えたかのようになくなっていた。
「…………」
「すごくないですか?アル爺は特に喜んでくれました」
「そういう問題!?」
よく出来たでしょと自慢するように笑って言ったのだが、エルには今にも掴みかからんばかりに驚かれた。
「え?え?何これ?何なのいったい?」
「こちらでは何と言うのか分かりませんが、軟膏……ええっと要はまぁ塗り薬ですね。元々あったものに更に回復薬を混ぜて効能を上げてもらいました」
そう、何故ネックレスを作るにあたり貝殻を選んだかと言えば中にこの軟膏を入れるためだからである。
繋やアズたちとは違い魔法は使えないが身体能力が高い獣人である2人はそのため動くことが大好きであり生傷が絶えない。
一つ一つは小さなものでも、やはり大切な我が子に傷を残したくない縁は考えに考えこの軟膏を思いついた。
元々町でも売っているのは知っていたのだが、あまり効力がないのと縁にしても繋にしても自身で治せてしまうため必要としてなかったのだ。
だが今回のことをきっかけに2人にも簡単だが傷薬を持たせておこうと思った。
調合の不安もあったためアル爺にも相談すれば嬉々として付き合ってくれ無事に完成させることが出来た。
完成品はアル爺には勿論、マーガレットにレオナルドにも渡してある(ある意味実験体)。
「綺麗だけでなく怪我を治すための薬も入れておけば嫌がることなく着けてくれるかなと」
目の前に縁たちがいればすぐ様治してやれるが、ではそうでなかった時に薬があるのとないのではきっと違うと思う。
どんな傷でもとは言わないが、ある程度の怪我は治せるため持っていて損はないだろう。
「大き過ぎず、でも小さ過ぎても薬が入りませんからそれなりの大きさが必要だったんです」
丁度いいものを探してくれてありがとうと言えば、深い溜め息の後どういたしましてとエルも苦笑いしていた。
それは古い日本でもあったという二枚貝に入れて薬を持ち歩くというもので、流石に縁も実物を見たことはなかったがそれにならい作ることにしたのだ。
「小さな傷はその内に治ると放っておくのも悪くはありませんけど、どうせなら早く治して痛みも少ない方がいいじゃないですか」
「それはそうだろうけどさ。………オレにはエニシのその発想が恐ろしいよ。なんでそんなポンポン思い付くわけ?」
と言われても縁もあれば嬉しいなと思ったものを作ってしかいないため何がどうとも言えない。
欲しいと思ったから作った。それだけである。
それがおかしいんだと言われたがそれの何が悪いのだと開き直るのだった。
21
お気に入りに追加
3,696
あなたにおすすめの小説
【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜
N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間)
ハーレム要素あります。
苦手な方はご注意ください。
※タイトルの ◎ は視点が変わります
※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます
※ご都合主義です、あしからず
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される
Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木)
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!
黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。
死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。
闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。
そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。
BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)…
連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
偽物の番は溺愛に怯える
にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』
最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。
まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる