二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
上 下
351 / 475

ママには分かる

しおりを挟む
 腹に子がいようと縁の日常に然程変化はない。
 掃除に洗濯、食事の用意に子どもたちの世話と普段通りしながらも、やはり何もない時よりは疲れやすいため合間合間に休憩を挟んでいた。

 「大丈夫か?」

 「ええ。ちょっと休憩してただけです」

 心配そうに近寄ってきたアレンに微笑めばホッと息をつき隣りに腰を下ろした。
 
 「翔は大丈夫ですかねぇ。繋がいるから大丈夫だとは思いますけど」

 ふと残してきた家族は元気にやっているだろうかと考える。

 「なんでそこで繋なんだ?普通父親のルーだろ。というか笑って手振ってただろ」

 首を傾げるアレンに縁も苦笑いする。

 「翔のことだから手を振ってたのは分かってなかったんだと思いますよ。それに翔に泣かれてルーが宥められるとも思えませんし、期待出来るとしたら繋だけです」

 「………ロンだっているだろ」

 縁の言葉にアレンも想像が出来たのか苦い顔をしながらも、ならばロンがいると言うが縁は首を振る。

 「ロンは世話焼きですけどそう気が長くはないんですよ。泣いてる子どもに怒鳴っても余計に泣くだけです。そもそも上手いこと出来るならルーがああ育っているわけないでしょう?」

 「…………」

 言い方は悪いがアレンの沈黙が答えだと思う。
 
 「セインとジークは呼ばれれば手を貸すでしょうけど、たぶん自分からは行かないです。アズとエルも繋相手なら頑張るでしょうけど翔には難しいでしょうね」

 冷たいわけではない。
 わけではないが、やはり自身の子と他の番との子ともなれば多少の扱いの差は出てくるだろう。
 呼ばれれば返事はするし、手も貸すが自分から構いに行くということはしない。
 
 「アレンだって私が言えば子どもたちを抱っこしてくれますけど自分からはしないでしょう?」

 そういえばと頷くアレンに、しかしそれが悪いことだとは思わない。
 彼らは彼らなりに他の子たちも愛してくれている。
 ならばそれでいい。

 「けど繋は違うんですよ。あの子は獣人だとか人間だとか魔族だとか何も知らず、ただみんなを大切な家族だと思って暮らしてきました。普通とは違う家族の形に何も疑問を持っていない。私がそう育てたからです」

 多少なりとも繋も気が付いてはいるだろう。
 だが縁は繋が聞いてこない限り教えようとは思っていない。

 「大切な弟が泣いていれば放っておくはずがありません。繋の寂しさはセインとアズたちが、翔の寂しさは繋がきっと埋めてくれます」

 「そう、だな」

 だからこそ繋には留守番を任せたのだ。
 一緒に行きたいと言われたが、ママの代わりにみんなの側にいてあげてと言えば顔は納得していなかったが分かったと言ってくれた。

 「女の子は成長が早いとも言いますからね。ルーはしょうがないなぁって代わりに翔を宥めてるのが目に浮かびます」

 「はははははっ!パパの立場がないな」

 男は大人になっても子どもの心を持っていると言うが、逆に女の子は心の成長が早いと聞く。
 縁にはよく甘えてくる繋だが、時々ルーやセインに対してダメよ!と怒っているのを見たことがあり笑ってしまったものだ。
 
 「この子が女の子だったら、アレンだっていつまで笑ってられるか分かりませんよ?」

 「それならそれで大人しく怒られてやるよ。俺たちの子ならきっと怒っても可愛いぞ」

 「そういう問題ですかねぇ?パパなんてもう知らない!って嫌われるかーー」

 「それはダメだ!」

 そんなこと言われたら生きていけないと首を振るアレンに声を上げて笑う。
 結局みんな愛しい我が子には甘く、弱いのだ。
 アレンと2人もし腹の子が女の子だったら、男の子だったらと話していればお腹が空いたと駆けてきた双子を受け止める。

 「今日は何にしましょうかね?」

 「リンゴ!」

 「おさかな!」

 残念だがリンゴは在庫切れであり、オヤツに魚というのも考えものである。
 確かサツマイモがあったはずと焼き芋でもするかと子どもたちの意見を無視しママが勝手に決めるのだった。
 いつもいつも希望が通るとは限らない。

 「お手伝いしてくれるいい子はいますかー?」

 「「はい!」」

 ピンと伸びた2つの手に微笑むと手を繋ぎキッチンへ向かう。

 「2人の分と…他の子たちのもいりますよね」

 「俺の分もな!」

 ちゃっかり自分のもと催促するアレンに、ならば手伝ってくれと言えばこれまた良い返事で手伝ってくれるのだった。

 「アレンはどれだけ育つつもりなんですか」

 「限界まで?」

 子どもたちと変わらぬ食欲に呆れながらも聞けば、意味の分からぬ解答に首を傾げるのだった。
 限界とはなんぞや。

 
 
 

 


 
 

 



 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜

N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間) ハーレム要素あります。 苦手な方はご注意ください。 ※タイトルの ◎ は視点が変わります ※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます ※ご都合主義です、あしからず

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される

Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木) 読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!! 黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。 死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。 闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。 そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。 BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)… 連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。 拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。 Noah

偽物の番は溺愛に怯える

にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』 最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。 まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...