二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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 「なんでアイツがいんの?」

 「おはようございますアレン」

 起きて早々見覚えのある顔がおり不機嫌に言うが、縁は気にすることなく朝の挨拶を返してくる。

 「アイツこの前ーー」

 「おはよう、ございます、アレン」

 「…………おはよう」

 縁と出会うまで挨拶するという習慣がなかったアレンだが、彼と出会ってからは子どもたちの前というのもあるのか挨拶しないと怒られる時がある。
 初めこそ面倒だと言わずにいたのだが、その結果まだアレンは寝ているみたいですねと一日中無視されたため降参した。

 「確かにしなくても生活に支障はないですけど、挨拶って自分の行動の意思表示でもあるんですよ。起きるぞとか、食べるぞとか。それに挨拶って相手がいてこそ、でしょ?大切な人がいる今だからこそ私はしたいんです」

 そう言われてしまえば面倒だと言えるはずもなく、時々忘れてしまうこともあるが挨拶するようにしている。
 
 「それで?なんでアイツがいんの?」

 庭で子どもたちと駆け回るフレックの姿に納得がいかなかった。
 昨日のことにしても、縁も静かだがアレンのために怒ってくれていたのには気が付いていた。
 なのに昨日の今日で何故男が子どもたちと仲良く駆け回っているのか納得が出来ずふてくされる。

 「きちんと謝ってくれましたから」

 「…………」

 「アレン」

 黙り込む自分に縁も気付いたのか名を呼ばれ優しく手を握られた。
 
 「もう1度だけ彼に機会をあげてくれませんか?」

 「なんで?」

 そんな必要ないと言おうとし、しかし縁の優しい微笑みに言葉に出来なかった。

 「彼はちゃんと理解してくれようとしたから。そんなことどうでもいいと言えたのに彼はきちんと考えて悩んで、それでも分からないと朝早くから来てくれました。私の言葉にごめんなさいと、すいませんと泣いて謝ってくれた。理解してくれようとしているんです」

 そんなわけないと外を見れば、愛依に手を引かれ子どもたちと追いかけっこする男の姿が目に入った。

 「触るなと手を振り払うことも出来ます。けどしていないでしょう?」

 今までの思い込みを捨て全てを理解するにはまだ時間がかかる。
 だが変わろうとしているのだと縁は言う。

 「……そんなこと出来るはずない。人間はーー」

 「敵、ですか?でも私も人間です」

 分かってる。
 縁が言いたいことは分かるが……

 「繋もセインの血をひいてますが人間です。けど……ねぇアレン、貴方も同じ人間でしょう?」

 「ちがう」

 「ちがいません。獣人は獣と人の中間地点。どちらでもあり、どちらでもない」

 「ちがう!」

 ちがうちがうちがう!
 俺たちは獣人だ!人間なんて非情な生き物にはならない!
 聞きたくないと耳を塞ごうとするが、先程から握られた手にそれもできない。

 「認めたくないだろうけど貴方の中にも少なからず人の血が流れているんです。そのおかげで私は貴方に出会えた。貴方を愛せた。獣ではなく、人として出会えたからこそ人としてのアレンを愛すことが出来た」

 獣ではなく、人として暮らし考え人格を持ってたからこそ愛し合えたのだと縁は言う。

 「人だからこそこうして手を握ることも、愛していると言葉にすることも出来る」

 理解は出来るが納得はできない。
 獣と人の間の存在というなら何故自分たち獣人はこうも同じ人に怯え暮らさなければいけないのか。
 何故獣如きと見下されなければいけないのか。
 昨日の蔑むような男の言葉も目も許すことなど出来はしない。

 「全てが全て、私や彼のように考えを改めてくれる人ばかりではないと言うことです。だから全ての人間を許さなくたっていい。憎いと恨んだままでもいいんです。けど、ごめんなさいと泣いて謝ってくれた彼は許してあげてくれませんか?」

 「………俺は謝られてない」

 言われたのは縁であって自分ではないと屁理屈を言えば、寝てるのを起こしてまで謝りに行って良かったんですかと言われ何も言い返せなかった。
 起きてくるまで待っていたのだと言われれば、今まで寝ていた自分が悪いとしか言いようがない。

 「ちゃんとアレンにも謝りたいと言ってましたよ」

 「もし許せなかったら?」

 「その時はその時です。私が優先すべきはアレンたち家族なので彼とは距離を置くなり離れるなりしますよ」

 まさかそこまで言ってくれるとは思っておらず驚いた。
 会わないように気を使うくらいだとばかり思っていたが、まさか離れるとまで言うとは。

 「元々彼らの世話をすることはあってもされることはなかったので会わなくても問題はないんですよ」

 あまりにあっさりとした言いように本当にそうなったとしてもきっと未練はないのだろう。

 「謝ってくれなかったら許す気もなかったのでそう変わらないですね」

 彼らには悪いがそれほど自分たちを優先してくれるのが嬉しい。
 ならばここまで言ってくれた縁のため少し様子を見てみようと子どもたちの元へ向かうのだった。

 
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