二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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本当の自分

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 物心つく頃にはもう1人だった。
 なぜここにいるのか、なぜ1人なのかも分からず、しかし生きるためにと食べ物を探し時にはゴミも漁りギリギリのところで生きてきた。
 あの日も何か食べるものをと探しているところを人間に見つかり逃げはしたが結局は捕まり殴り蹴られ石を投げられもした。
 痛いと声を上げても止めるどころか笑い更に暴力を振るわれる。
 なぜ自分がこんな目に合わなければいけないのか?
 このまま死ぬしかないのかと諦めていれば、突如掴まれた手に最後の抵抗だとばかりに噛み付いてやった。
 お前も痛い思いをすればいいと更に爪で引っ掻いてやるが、それでも離れない手に何とか逃げようと暴れる。

 「いってぇ!おいこら、俺はお前を助けてやったんだぞ!なんで噛むんだよ。って、こら待て逃げんなっ!」

 そう言ってまた暴力を振るうに決まってる。
 人間なんか信じてやるもんか!

「ごめんね。もう大丈夫ですよ。私たちは君を傷付けたりしませんからね」

 なのにそう言い触れられた手の温かさと、それまで感じていた身体の痛みがなくなり驚いた。
 そればかりか水を差し出され、食べなさいと出されたリンゴの味をきっと一生忘れない。
 なぜ彼らの言葉を理解出来るのか自分でも分からなかったが、その話し方と笑顔に今までの人間とは違うのは分かった。
 優しく撫でてくる手に擦り寄ればいい子と言うように微笑まれる。
 この人は自分を傷付けたりなんかしない。
 この人ならきっと自分を守ってくれる。
 そう思い言われるままついていけばママと呼び近寄ってくる子どもに、先程まで暴力を振るってきた人間を思い出し吠えて威嚇した。
 結果それも止められてしまったが、怒っているわけではないと撫でられた温かい手にホッとした。
 それから色々あり彼の家族に怒られはしたが、一緒にいることは許してもらえたようだ。
 なのにーー

 「ミャー、ミャミャミャ!」

 顔色悪く倒れる彼に起きてと声を上げるが、閉じた瞳が開く様子はない。
 運ぼうに自分の小さな身体では難しく、裾を咥えて引っ張ってはみたがピクリとも動かない。
 どうしようどうしようと考え、助けを求めるため走り出せば目についたその男の足に噛み付いた。

 「いってぇ!」

 「ミャミャミャ!」

 助けて!と見上げるが首根っこを掴まれ持ち上げられる。

 「てめぇ、いい加減にしろよ。縁が言うからおいてやってるけど本当はみんな反対しーーってだから噛むんじゃねぇ!」

 「ミャミャミャミャ!」

 そんなことどうだっていい!
 彼がいてくれさえすればそれでいいのだ。
 だから早く助けろと叫ぶが、当たり前だがその言葉が届くことはなくどっか行けとばかりに追い払われる。

 「俺は忙しいんだよ。お前はそこら辺で遊んでろ」

 なんで!なんで自分の声は届かない!
 あちらの言葉は理解出来るのに、こちらの意思が届くことはない苛立ちに全身の毛が逆立つ。
 早く、早く早く早く。
 早くあの人を助けて。
 自分にも彼らのような手があれば、自分にも彼らのような頭があれば、自分にも彼らのように声を上げることが出来ればーー

 「ーーーけ、て」

 「だから忙しいって言ってんだろ。お前の相手をしてる暇なんか………あ?」

 今までない身体の動きに、しかしそんなこと今はどうでもいいと必死に手を伸ばす。

 「ーすけ、て。たーけ、て……た、す、けて」

 「……お前…それ…」

 「たす、けて。あ、のひと。た、すけ、て」

 驚きに目を見張る男に、お願いだから助けてと動かしづらい手を持ち上げ裾を引っ張る。

 「たお、れ……いた、い」

 「ーーー縁のことか?」

 そうだと頷けば案内しろと言われ、元の姿に戻ると倒れ込む彼の元まで連れて行く。

 「縁っ!」

 自分の時はびくともしなかった彼を男は軽々抱き起こすと腕に抱き抱えた。
 
 「くそっ、なんで…朝まで元気そうだっただろ。ジークっ!ジークっ、セインっ!縁が倒れた!」

 駆けていく男の背を追いかけていけば、バタバタと走り寄ってくるみんなに早く彼を助けてと願う。
 願うだけで何も出来ない自分に腹が立ちながらも、未だに顔色悪く目を閉じる彼に起きてと願うことしか出来ない。

 「とりあえず寝かせろ。熱は?少し熱いな。アズ風を送ってやれ。エルは水を汲んできてくれ」

 「熱中症か?」

 「だとしたらもっと熱いはずだろ。貧血か?」

 青い顔色に、しかし今まで貧血で倒れたことはないだろうと話し合っている。
 そんなこといい、そんなこといいから早く助けて!

 「ミャ、ミャミャ……け、て、…おき、て」

 「「「「「は?」」」」」

 眠る彼の枕元に飛び乗ると起きてとペチペチと頬を叩く。

 「あ?お前…獣人だったのか?」

 「その姿……は?どういうことだ?」

 周りで何か言っているがどうでもいい。
 お願いと猫の姿の時より少しは大きくなっただろう手で叩いていれば震えた目蓋に息を吐いた。

 「…………?…何、が……ん?この子は?」

 「縁っ」

 良かったと抱き着こうとしたが、それより早く横から伸びてきた手に奪われてしまい苛立ちにその背を叩く。
 しかし人の姿では威力はなく、ならばと元の姿に戻るとその爪を突き立てるのだった。

 「いってぇ!だからやめろっつってんだろ!」
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