二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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決意

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 ルーの手を借り何とか家まで戻ると慌てて駆け寄ってきた家族に何があったか全て話した。
 自分だけで解決出来るわけもなく、ならば彼らの手を借りなければいけないからだ。
 案の定話しを聞き怒りに顔を歪ませる男たちにごめんなさいと謝る。

 「何がだ?アズは縁を守ろうとしてくれたんだろ?」

 「そうだ。悪いのは縁を攫ったその男でアズじゃない。怪我をしているんだろう?手当てしてやるからこっちにーー」

 「でも!でもまもれなかった!まもるっていったのにできなかった!アズのせいでママたおれて………ママつれてかれた」

 自分のせいだ。
 自分があの時手を出したから自分を庇おうとしたエニシが反撃にあい倒れてしまった。
 あのまま会話を長引かせていればルーが来て男が去ってくれたかもしれなかったのに自分のせいで大切な人を傷付け目の前で連れ去られた。
 後悔に涙が滲む。

 「そんなこと言ったらオレがもっと早く迎えにいけなかったのが悪いんじゃん。オレこそごめん」

 頭を下げ謝るルーにちがうと首を振る。
 自分のせいだ。自分が全て悪いのだ。
 予感は感じていたのに結局何も出来なかった。
 
 「……なぁアズ、悔しいのは分かるがこれはお前が悪いんじゃない。悪いのはその男だ。そいつが縁を攫おうとなんかしなければこんなことにはならなかったんだ」

 「だな。だからもう自分を責めるな」

 お前は悪くないとジークたちは慰めてくれるが連れ去られたエニシが今どうなっているか分からず不安と後悔でいっぱいだった。
 エニシ自身が気になっているならば殺される確率は極めて低い。
 だが魔力に惹かれているだけならば彼に意思など関係なく死なぬギリギリまで追い詰められ魔力だけを吸い続けられる可能性だってある。
 もうあの優しい声で自分を呼んでくれないのでは?
 もうあの綺麗な瞳で微笑みかけてくれないのでは?
 もうあの温かい腕に抱きしめてもらえないのでは?
 考えれば考えるほど不安に押し潰されそうになる。

 「アズはここで待ってろ。縁は俺たちが取り戻してくる」

 妹たちを頼むと出て行こうとするジークたちにダメだとその前に立ちはだかる。

 「やだ!アズも行く!」

 危険だとは分かっているが自分も連れて行ってくれと頼む。
 
 「………アズ。分かった、お前も一緒に来い。エルお前は本当にいいのか?」

 「え?何が?」

 「もしそいつが縁を傷付けるようなことがあったら……俺たちはお前の父親であろうとその男をーー殺すぞ」

 自分と違い暫くは父親の元で育ってきた兄。
 自分にとっては父親どころか赤の他人に近い存在のため倒すことに異論はないが、兄にとってはそうでもないのかもしれないと不安になる。
 もし自分たちを止めるつもりなら……

 「いいよ。あれはもう父上じゃない。あれはもう……敵だ。エニシにも、アズライトにも手を出したんだから。それに……あの人オレのこと分かってなかった。オレのこと憶えてすらないよ」

 迷わなかったわけではないが、もう決めたからという兄の手をそっと握る。
 
 「あの人にとっては自分以外どうでもいい存在なんだよ。昔からそうだった。息子とすら認識してたかすら怪しいよ」

 どこか寂しそうに俯いていたエルだが、次の瞬間パッと顔を上げると手を繋いでいた手を引かれ抱きしめられる。

 「オレの家族はここにいる。オレの家族はここにいるみんなで、オレのこと家族だって言ってくれたエニシだけなんだ。だからーーだから迷わない。オレの家族を傷付けるっていうなら血が繋がってようが、父親だろうが倒すよ」

 何も想わないわけがない。
 それでも選んでくれた。自分たちを家族を。
 
 「ありがとう………お兄ちゃん」

 「っ……うん。ははっ、やっと呼んでくれた。すごく……嬉しい」

 自分からも腕を伸ばし抱きしめ返せば、苦しいぐらいに抱きしめられたがイヤだとは思わなかった。
 呼ぶことはいつでも出来た。
 それでもずっとそう呼ばなかったのは自信がなかったから。
 エニシを傷付けようとしたことを忘れたわけではない。
 それも全て自分のためにとしたことだと言われれば責めることは出来ず、しかし心のどこかで納得出来ずにいた。
 自分のためにならエニシが傷付くのは許すのかと。

 「ママたすけたいの」

 「うん。分かってる。エニシはオレにとっても大切なママだからね。ママを助けに行こう?一緒に」

 「うん!」

 今なら信じられる。
 大切だと言った。
 一緒にと言ってくれた。
 ママを助けるために一緒に戦おうと。
 危険でも一緒に行き、たとえ血の繋がった父であろうと倒すと。
 この人は本当に自分の兄なのだ。

 「決まったみたいだな。なら繋たちは仲間に預けていーー」

 「「「ヤーーーーーっ!」」」
 「ぎゃうーーーーーっ!」

 妹たちの大絶叫に耳がやられたかと思った。
 抱きしめられていたおかげで何とか助かったが、逆に抱きしめていた兄は犠牲になりピクピクと肩が震えていた。
 耳がいい獣人であるパパたちといえば………

 「おっ、お前ら……」

 「み、耳が……」

 衝撃に打ち震えるのだった。

 
 
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