二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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 「ドラゴンの卵なんて初めて見たよ」

 「ですよね。私もこれが初めてです」

 なんてことないようにエニシは言っているが、その卵を産んだ本人の落ち着きように逆に驚く。
 ルーの子を産んだと聞いたのはつい数日前。
 その前に何度か会っていたがそんな素振りも見せていなかったので驚き、いつの間に!?と思ったが彼にも予想外だったらしい。
 人とは違い腹の外で育てるのだと聞き、そういえばアイツはドラゴンだったかとその時思い出した。

 「意外に小さいんだね」

 あの巨体からして卵もさぞかしデカいのかと思っていたが、いざ見てみれば両手の平に収まるほどの大きさだった。

 「これでも大きくなったんですよ。最初は鶏の玉子ほどでした」

 そう言われればかなり成長しているのだろう……が

 「………殻がどうやったら成長するんだい?」
 
 中身が成長するのならば分かるが、卵の殻ごと大きくなるなど初めて聞いた。
 どういうことだと聞いてみれば、暫く悩んだ後可愛いらしい笑顔で分かりませんとあっさり言われた。
 仕方がないので許した。

 「時々子どもたちとお昼寝するんですけど、起きたら卵に抱きついて寝てるんですよ。とても可愛かったです」

 それは是非とも見たかったっ!!
 卵のことには驚いたが、体調にも問題もないようでよかったと一安心ーー

 「そんなっ!そんな貴重な瞬間に立ち会えなかっただなんて!」

 「………繋が驚くだろ。騒ぐんじゃないよ」

 ジンの突然の叫びに膝に乗る繋がきょとんとしていたが、大丈夫だと言ってやれば再びオヤツを食べ始めていた。
 騒ぐのは勝手だが孫たちの邪魔だけは許さない。

 「ご、ごめん。……けど私も見たかったなぁ」

 見られるものならマーガレットも見てみたいと思うが、そのために今から昼寝しろとは流石に言えない。
 
 「まぁ、また機会があったら。それでククルさんの方はどうですか?」

 「それなんだが……」

 今回エニシを呼び出したのは卵のこともそうだが、以前話したミソの販売についての話しもあったからだ。

 「ククルに聞いた話しどうにも芳しくないらしい。全くとは言わないが……やはり見た目がね。食べてみれば分かるとは思うんだが、珍しい調味料に手を出すのは誰でも難しくはあるだろうね」

 食べたことがあるマーガレットたちはその美味しさを知ってはいるが、知らぬ者には未知の食材だろう。

 「そうですか………あの、これからククルさんに会うことは出来ますか?」

 何か案があるのかもしれないと言われるまま連絡をとり呼び出せば30分たたずして駆け込んできたククルに皆が驚いた。

 「神からのお呼び出しと聞き急ぎ参上いたしました!お久しぶりです!」

 「「…………」」

 「お忙しい中ありがとうございます。その節はお世話になりました」

 ククルの奇行にも驚いたが、そのククルを気にすることなく普通に話しかけるエニシにもジンと2人驚いた。
 この子はどうすれば驚くのか。
 その内見られるだろうと自分を納得させながらも、これからのことについて話し合っていく。

 「ククルさんは飲食店は経営されていたりはしませんか?」

 「してないですね。私は専ら売る方を主にしてますので」

 「そうですか。なら小さくていいのでお店の中で試食出来るような場所を作ることは可能でしょうか?」

 「「「試食?」」」

 どういうことかと聞けば買う前にその味を知ってもらい購入意欲を上げてはどうかと言うことらしい。

 「けどそれで買ってもらえるかなんて保証出来ないんじゃないかい?食べてそれで終わりにでもなったら赤字にしかならないよ」

 マーガレットもジンと同じ意見だと頷く。

 「さっき言ってましたよね。知らないからこそ手が出ないと。ならば少量でも食べて味を知ってもらい、その時に一緒に調理方法も教えれば問題はないかと。最初こそ利益は出ないかもしれませんが波に乗れば元はとれると思います」

 確かにそれならいけるかもしれない。
 日によって調理法も変えればより効果的だと言うエニシに、ククルも真剣な顔で考え込んでいる。
 マーガレットたちは良い案だと思うが、商売に関しては知識がないため彼の意見を聞くしかない。

 「価格はそれなりにしているのですがそれでもですか?」

 「高いということであれば高過ぎなければ問題ないかと。基本味噌はそのままではなく薄めて使うことが多いのでそれほど早く消費することはないでしょう。保存方法なども教えば買う方も安心出来ると思います」

 味、調理法、保存方法。
 ある意味新しい商売方法だが客として見るなら有り難く大賛成だ。
 
 「………ふふ、ふふふ……はははははははっ」

 急に笑い出したククルに嫌な予感がし、サッとエニシを引き寄せ背に隠せば数秒前までエニシがいた場所にククルが倒れていた。
 やはり感動のあまり抱きつこうとしていたのだろう。

 「ーーなぜ邪魔するんですかっ!この感動を今伝えずいつ伝えろと!」

 「一生伝えなくていいよ」

 バネでも入っているんじゃないかというほど勢いよく跳ね起きてきたククルに恐怖しかない。
 しかしこれならば大丈夫そうだとホッと息をつくのだった。
 
 
 
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