二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
上 下
249 / 475

出発!

しおりを挟む
 「では言ってきますね。明後日には帰ってきますのでそれまで4人のことお願いします」

 「「「ゔぇーーーん、やだー」」」

 セインたちに抱えられた繋たちがママと離れるのは嫌だと暴れまくっている。
 唯一アズだけが我慢するように俯き黙ってジークの足に抱きついている。

 「すぐ帰ってきますよ。寂しくなったらアズお兄ちゃんに頼めばお話しも出来ますから。ね?アズ?」

 「…………うん」

 そろそろいいだろうと先日アズにも通信出来る魔道具を買い渡してある。
 エルも一緒に行くので連絡はアズが頼りだ。

 「帰ってきたらまたみんなで海にでも遊びに行きましょうか。この前言っていた貝の取り方私にも教えて下さいね」

 「うん。アズ待ってる」

 約束だと言えば漸く笑ってくれた。

 「繋のためにも味噌に合うだろうものを探してきますね」

 「やだー。ママがいいー」

 あれま。繋の大好きな味噌で釣ってみたのだがダメだったらしい。
 ぐでんと背を反らし泣く繋にセインも苦笑いしかない。

 「大好きな繋のために美味しいお鍋の材料採ってきますから。繋に美味しいって喜んでほしいんです。繋のことが大好きだから」

 だから待っていてとお願いすれば泣きながらも何とか頷いてくれるのだった。

 「真と愛依は……うーん、そうですね……リルの世話をお願いしますね」

 これといって取り引き材料がなかった。

 「なにっ!?我を置いていく気か?」

 え?一緒に行く気だったのか?
 見れば子犬サイズのリルが足下にちょこんとお座りしていた。
 どうやら行く気満々だったらしい。

 「………一緒に行きたいんですか?」

 「うむ」

 どうしよう。
 縁的には連れて行くのは何ら問題はないのだが、フレックに確認してない上、双子へ待っていてもらう理由がなくなってしまう。

 「連れていってやれ」

 「ジーク?」

 「エルだけでも大丈夫だと思うが念のためな。俺たちには無理だからな」

 戦力が多くても無駄にはならないだろうと言われたが、そんなに危ない所なのだろうかと心配になってきた。

 「じゃあリルも一緒に行きましょうか。真と愛依はパパたちと仲良く待っていて下さいね」

 「「やだっ!」」

 ですよねー。
 
 「こら、我儘言ってると帰ってきてくれなくなるぞ」

 「「やーっ!」」

 それはイヤだと泣き喚く2人に笑いつつ、ギュッと抱きしめてやる。

 「必ず帰ってきますよ。真と愛依のことが大好きですからね。そうですね…ママが帰ってくるまでに木登り出来るようになっておいて下さい。あと少しだったでしょ?出来ないようならまたママも一緒に木登りしちゃいますからね」

 「「ダメっ」」

 ママとして、大人としてどうなんだという脅し文句だが、2人にはどうやら効いたようで頑張ると唸っている。
 こちらでもやはり縁の木登り挑戦は以前に失敗していた。
 落ちそうになった所をセインに助けられたのだが着地で足を捻って痛め双子に泣かれた。
 それからは一緒に走るのも木登りも拒否されている。

 「楽しみにしてますね。では行ってきます」

 「気をつけてな」
 「怪我はするなよ」
 「ちゃんと周りを見て歩けよ」
 「ねぇ何でオレは行っちゃダメなーー痛っ!」
 
 何をしでかすか分からないルーはダメです。
 みんなに見送られフレックたちとの待ち合わせ場所まで行けば、笑顔で出迎えられた。

 「よろしくお願いします」

 「こちらこそ。で、その…犬は?」

 縁が抱えていたリルを不思議そうに見るフレックに、一緒に連れていっていいか確認すれば意外にも快く了承された。

 「犬の嗅覚はバカに出来ませんからね。ラックもそうですが、モンスターなどが出る前に気付くことが出来ればと期待してます。ただやはり危ないことには変わりないので縁さんの側から離さないようにして下さいね」

 「………モンスター」

 流石の縁もモンスターは分かったが、縁の中のモンスターとは緑色をした人型ぐらいしか思い浮かばなかったのだった。

 「そのだんじょんという所までは歩いて行くんですか?」

 「いえ。それなりに距離がありますので今回は馬を使おうかと思いますけど……乗ったことは?」

 「昔1、2回程度なら」

 見栄を張っても仕方ないため正直に不安なことを伝えれば笑って頷いてくれた。

 「大丈夫です。なら私の馬にでもーー」

 「オレがエニシと乗るから問題ないよ」

 「エル馬乗れたんですね」

 すごいと驚けば、余裕と胸を張って言われた。
 リルもいるためその方がいいかとエルと乗ることを伝えれば、すぐさま用意してくれた。

 「乗れはするんでしょ?」

 「はい。ただ長時間乗った経験がないので大人しくエルに捕まっておくことにします」

 同行する兵士たちにも挨拶を済ませ馬に乗るが、縁はエルに掴まっているためリルをどうしようかと考えていればーー

 「うむ、我はここでよいぞ」

 「……危なくないですか?」

 ピョンと飛んだかと思えば器用にも馬の頭の上に着地していた。
 それは馬が嫌がるのではないかと思ったが、意外にも何も言わず頭を振ることもなかった。

 「賢いですね」

 「ソウダネ(可哀想なほど震えてるけど)」

 そう馬に接することが少なかった縁は小刻みに震える馬に気付いてやることが出来ないのであった。
 
 「(そらいつ殺されるか分かんないだから震えもするよね)」

 馬はちゃんとリル(フェンリル)に気付いているのだった。

 
  



 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜

N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間) ハーレム要素あります。 苦手な方はご注意ください。 ※タイトルの ◎ は視点が変わります ※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます ※ご都合主義です、あしからず

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される

Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木) 読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!! 黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。 死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。 闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。 そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。 BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)… 連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。 拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。 Noah

偽物の番は溺愛に怯える

にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』 最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。 まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...