二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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感謝します

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 「ここは一つ、殴り合いの喧嘩でもしてみますか?」

 「「「「やめろ!」」」」

 その場にいた全員に止められた。
 まさかの喧嘩を売ってきた本人まで。

 「悪かった。俺も言い過ぎたから無茶はやめろ」

 本当に申し訳ないと謝る隊長の姿に、これ以上怒るのも大人気ないと許してやる。
 レオナルドとは仲直り(?)出来た縁だったが、マルズス達とは話せていなかったことを言えば引き摺られるように訓練場に連れて来られたのだ。
 誰にって?意外にもレオナルドにだ。

 「君は何も悪いことをしたわけではないのだから私達に変に気を使うことはない。子どものことは……なんだ、驚きはしたがそれだけだ。あの子はとてもいい子で、君も立派に母親をしているのだからそれを卑下することはない」

 「………私はとてもいい友人を持てたようですね」

 「そうだろ。感謝としてもっとアイスとやらを献上してきてもいいぞ」

 「お腹を壊しそうなのでダメです」

 「…………」

 彼のことだ。
 食事の代わりにアイスばかり食べかねないためダメだと言えば、図星なのかそっと顔を逸らすのだった。
 そして連れてこられた訓練場では今日も今日とて一心不乱に身体を鍛える隊長の姿に縁は無意識にレオナルドの背後に隠れてしまった。
 だがそれを見てもレオナルドは何も言わず、普段通り挨拶すると預けていたラックを受け取っていた。

 「……あー、なんだその、アイツはどうしてる?」

 「アイツとは?」

 大きなレオナルドの背に隠れながらも話しを聞いていれば、隊長には珍しく気まずそうに顔を逸らしながらも縁の様子を尋ねてくる。

 「エニシだよ。なんだ……その、この前は驚いちまって何も言えなかったからな。変な態度とっても悪ぃかと思って会ってないんだが……」

 「それならーーー」

 「あいつ本当は女だったんだな。知らなかったとは言え今まで悪かったなと」

 「「……………」」

 は?
 あまりのことに何も言えなかった。

 「前から綺麗な面してんなとは思ってたけどな。まぁ男にしては綺麗過ぎるよな。ガキだから小せぇのかとも思ってたし、女にしては胸もなさすぎだろ」

 これは………喧嘩を売られているのだろうか?
 胸がないのは当たり前だ、縁は男なのだから。
 確かにはっきりと自分の性別を口に出したわけではないが、的外れ過ぎる勘違いに驚く。

 「言われてみりゃ身体もガリガリだったしな。ありゃちゃんと飯食ってんのか?抱えた時は軽過ぎて驚いたぞ」

 私は貴方の勘違いに驚いてます。
 大体彼に比べれば大概の一般人は皆ガリガリと言えるのではないだろうか。
 そしていい加減拉致同然に抱えていくのはおかしいと気がついてほしい。
 流石のレオナルドもあまりの勘違いに言葉をなくしており、これはどうしたものかと思っていればポンと優しく肩に手を置かれた。

 「………フレックさん」

 「あ?フレック?ってエニシ、お前いたのかよ!」

 思わず声を出してしまったが、そんな縁にフレックは微笑むと頭を下げられた。

 「え?あの?……」

 「アルバトロス様に聞きました。確かに驚きはしましたけどそれで貴方を遠ざけようだなんて思っていません。もしこの前の私たちの態度を気にしているようなのであれば謝りますので許して下さい」

 フレックが謝る理由が分からない。
 騙していたというわけではないが、縁の少々特殊な事情を普通なら受け入れられる人は少ないだろう。
 レオナルドは受け入れてくれたが、それを彼らにも強要しようとは思っていなかった。
 
 「優しい貴方は私たちのことを気にして距離をおこうとしてくれたのかもしれませんが、貴方のおかげで私は今こうして笑って毎日過ごせているんです。そのことに感謝こそすれ、気持ち悪いなどと思うことなどありえません」
 
 その笑顔は今まで見てきたフレックのもので、その中に縁に対する不快感などは見えなかった。
 泣きそうになりながらも笑ってありがとうございますと言えばフレックもまた笑い返してくれるのだった。
 
 「おい、俺のことを忘れんじゃねぇよ。どういうこった?」

 あ、忘れてた。
 勘違いしている隊長にも説明すれば、またもやかなり驚かれたが気にすんなと力強く背中を叩かれ、あまりの強さに咽せ皆に心配された。

 「何だよ、俺はてっきり女に乱暴したのかと思って焦っちまったぜ!」

 「男性だろうと貴方の行動は褒めたられたものではありませんけどね」

 確かに。
 小脇に抱えられ運ばれたことは数知れず、力強く叩かれ咽せたことも何度もある。
 とは言え、こうして受け入れてくれたことが何より嬉しい。

 「お前はもっと太れ、肉をつけろ!」

 知り合いのおばちゃんみたいなことを言い出した。
 フレックが呆れたように止めようとしてくれるが、鍛えることが大好きおじさんは止まらない。

 「そんなヒョロヒョロだから俺だって勘違いしちまうんだよ。身長は無理そうなんだから他にーー」

 「私はもしかして遠回しに馬鹿にされているんですかね?」

 すいませんと謝ってくるフレックにそんなことはないと思うが、面と向かって言われるのは何とも堪える。

 「これでも男だと証明するためにも、ここは一つ殴り合いの喧嘩でもしてみますか?」

 体格も腕力も違えど縁には魔法があるため勝機はある。
 なればやってみるかと言えば、その場にいた全員に止められるのであった。
 
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