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言っちゃった
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「…………お婆ちゃん」
「言っとくが私は一応反対したからね!」
そんな力一杯言わずとも。
そもそも縁はまだ何も言ってはいない。
「繋、いくら私でもそれはちょっと無理ですね」
「ママ、や?」
可愛らしく小首を傾げる姿は抱きしめたいほど可愛い。
可愛いが、縁も男であるため譲れないものがあるのだ。
「ばーば、かわいいって。だからママも」
「うーーーーん……」
差し出される小さな手の平には可愛らしい赤いリボンが握られている。
縁が頼んだ通りマーガレットは繋と愛依のために女の子らしい服や髪飾りなど色々見繕ってくれたようだが、何を思ったか繋はその一部を縁にも差し出してくるのだ。
娘のお願いならば叶えてやりたいのは山々だが、縁も男として譲れないものがある。
「繋がつけたらもっと可愛くなりますよ。だからママの分は繋が持っていて下さい」
「やっ!ママといっしょがいい!」
「くっ」
可愛い。可愛いが……
頭にリボンを飾る自分の姿を想像し……
「ないですね」
「そうか?君なら似合いそうだが」
いつの間に近づいてきていたのかレオナルドが背後から手元を覗き込んできていた。
「いや、私だって男なんですから似合うわけないでしょ。というか付ける意味が分からない」
何をもって可愛いらしいリボンを男である自分が付けなければいけないのか。
「娘のためでいいじゃないか。娘の可愛いおねだりを聞いてやる。うん、何もおかしいことはない」
いやいやいや。いや、いやいやいや。
「おかしくないですけど、おかしいです。私だって娘のお願いならばもちろん聞いてあげたいですけど、出来ること出来ないことがあるんです」
丸め込まれてなるものか。
「出来ることだろ?リボンを付けるくらい」
「…………なら宰相様が付ければいいじゃないですか」
八つ当たり気味にそう言えば笑って断られた。
「君の娘が、誰でもない君に、頼んでいるんだ。私が付けたところで意味がないだろう?」
正論なだけに憎たらしい。
そんなこと分かっているとばかりに睨みつけてやるが、レオナルドはどこ吹く風だ。
「ママいっしょ、や?」
いやではない。娘とのお揃いとは嬉しいものだが、物が物過ぎる!
「私ではなく、ばーばと一緒ではダメですか?」
「あ、私はもう買ってあるよ。ほれ」
見れば綺麗に編み込まれていた髪には繋とお揃いの赤いリボンが器用に織り込まれている。
よく考えれば分かったものだ。
あのマーガレットが繋とお揃いのものを買わないわけがないと。
逃げ場がない!
どうしようと助けを求めるように視線を彷徨わせれば、にこにことこちらを見るジンと目が合った。
助けて!と目で訴える。だがーー
「私もぜひ見てみたいな」
あっさりと裏切られた。
「いくらなんでもそれは可哀ーーぐへぇっ」
助け舟を出そうとしてくれた隊長は一瞬にしてジンの手によって沈められた。
先程ちゃんと助けておけば良かったと今更後悔した。
「フレックさん!フレックさんはどう思います!?」
最後の砦とばかりに助けを呼べば、倒された隊長を一瞬見て顔を引きつらせ、縁を見て憐みの表情を浮かべている。
「…………縁さんなら似合うとは思いますが……えーと、その……そう、ですね。あー、色があれですから、違う色にしてみるとか……」
それがフレックが出来る最大限の助力だったに違いない。
「そう、そうですね!繋、リボンは違う色じゃダメですか?」
「ちがうの?」
きょとんと見上げてきた繋がガサゴソとポケットを探ったかと思えば数本のリボンが出てきた。
「これ?」
「…………」
まさかのピンク。悪化した。
数ある中で何故それを選んだのか。
無言になった縁にフレックが申し訳なさそうな顔をしていた。
「………やっぱり赤にしておきます」
もう助けはないと諦めると笑顔で赤いリボンを差し出してくる繋の頭を撫でてやるのだった。
「…………あの、今更なんですが何故その子はエニシさんをママと呼んでいるのでしょうか?」
あ、説明するの忘れてた。
リボンの衝撃が強く、みんなも繋が縁をママと呼ぶのを気にせず話していたので気付かなかった。
「私がこの子を産んだからです」
「「「は?」」」
さらりと言った縁に、質問したフレックだけでなく側で聞いていたレオナルドや隊長も驚いている。
確かに縁も他の誰かが同じことを言えば今の彼らと同じように驚いたことだろう。
「色々あり私がこの子を産みました。なのでこの子にとって私は俗に言うママという立場にあります」
「「「……………」」」
無言になる3人にこれ以上何か言っても仕方ないだろう。
挨拶を済ませると繋を抱えマーガレットたちと帰路に着く。
「………言わない方が良かったですかね?」
彼らの衝撃はかなりのものだろう。
だが縁は繋たちを産んだことを後悔してはいないし、恥ずかしいことをしたとも思っていないため隠すことをしたくはなかった。
それはこれまでよくしてくれた彼らだからこそでもある。
「いいや。アンタは立派な繋たちのママなんだから隠す必要なんて何もないんだ。胸を張ってな」
「そうだよ。これでアイツらが何か言ってきたら私たちに言いなさい。今日の比じゃないくらい地獄を見せてやるからね」
ふふふと笑うジンとマーガレットが恐ろしかったが、そこまで想われているということに縁は嬉しくも感謝するのであった。
「言っとくが私は一応反対したからね!」
そんな力一杯言わずとも。
そもそも縁はまだ何も言ってはいない。
「繋、いくら私でもそれはちょっと無理ですね」
「ママ、や?」
可愛らしく小首を傾げる姿は抱きしめたいほど可愛い。
可愛いが、縁も男であるため譲れないものがあるのだ。
「ばーば、かわいいって。だからママも」
「うーーーーん……」
差し出される小さな手の平には可愛らしい赤いリボンが握られている。
縁が頼んだ通りマーガレットは繋と愛依のために女の子らしい服や髪飾りなど色々見繕ってくれたようだが、何を思ったか繋はその一部を縁にも差し出してくるのだ。
娘のお願いならば叶えてやりたいのは山々だが、縁も男として譲れないものがある。
「繋がつけたらもっと可愛くなりますよ。だからママの分は繋が持っていて下さい」
「やっ!ママといっしょがいい!」
「くっ」
可愛い。可愛いが……
頭にリボンを飾る自分の姿を想像し……
「ないですね」
「そうか?君なら似合いそうだが」
いつの間に近づいてきていたのかレオナルドが背後から手元を覗き込んできていた。
「いや、私だって男なんですから似合うわけないでしょ。というか付ける意味が分からない」
何をもって可愛いらしいリボンを男である自分が付けなければいけないのか。
「娘のためでいいじゃないか。娘の可愛いおねだりを聞いてやる。うん、何もおかしいことはない」
いやいやいや。いや、いやいやいや。
「おかしくないですけど、おかしいです。私だって娘のお願いならばもちろん聞いてあげたいですけど、出来ること出来ないことがあるんです」
丸め込まれてなるものか。
「出来ることだろ?リボンを付けるくらい」
「…………なら宰相様が付ければいいじゃないですか」
八つ当たり気味にそう言えば笑って断られた。
「君の娘が、誰でもない君に、頼んでいるんだ。私が付けたところで意味がないだろう?」
正論なだけに憎たらしい。
そんなこと分かっているとばかりに睨みつけてやるが、レオナルドはどこ吹く風だ。
「ママいっしょ、や?」
いやではない。娘とのお揃いとは嬉しいものだが、物が物過ぎる!
「私ではなく、ばーばと一緒ではダメですか?」
「あ、私はもう買ってあるよ。ほれ」
見れば綺麗に編み込まれていた髪には繋とお揃いの赤いリボンが器用に織り込まれている。
よく考えれば分かったものだ。
あのマーガレットが繋とお揃いのものを買わないわけがないと。
逃げ場がない!
どうしようと助けを求めるように視線を彷徨わせれば、にこにことこちらを見るジンと目が合った。
助けて!と目で訴える。だがーー
「私もぜひ見てみたいな」
あっさりと裏切られた。
「いくらなんでもそれは可哀ーーぐへぇっ」
助け舟を出そうとしてくれた隊長は一瞬にしてジンの手によって沈められた。
先程ちゃんと助けておけば良かったと今更後悔した。
「フレックさん!フレックさんはどう思います!?」
最後の砦とばかりに助けを呼べば、倒された隊長を一瞬見て顔を引きつらせ、縁を見て憐みの表情を浮かべている。
「…………縁さんなら似合うとは思いますが……えーと、その……そう、ですね。あー、色があれですから、違う色にしてみるとか……」
それがフレックが出来る最大限の助力だったに違いない。
「そう、そうですね!繋、リボンは違う色じゃダメですか?」
「ちがうの?」
きょとんと見上げてきた繋がガサゴソとポケットを探ったかと思えば数本のリボンが出てきた。
「これ?」
「…………」
まさかのピンク。悪化した。
数ある中で何故それを選んだのか。
無言になった縁にフレックが申し訳なさそうな顔をしていた。
「………やっぱり赤にしておきます」
もう助けはないと諦めると笑顔で赤いリボンを差し出してくる繋の頭を撫でてやるのだった。
「…………あの、今更なんですが何故その子はエニシさんをママと呼んでいるのでしょうか?」
あ、説明するの忘れてた。
リボンの衝撃が強く、みんなも繋が縁をママと呼ぶのを気にせず話していたので気付かなかった。
「私がこの子を産んだからです」
「「「は?」」」
さらりと言った縁に、質問したフレックだけでなく側で聞いていたレオナルドや隊長も驚いている。
確かに縁も他の誰かが同じことを言えば今の彼らと同じように驚いたことだろう。
「色々あり私がこの子を産みました。なのでこの子にとって私は俗に言うママという立場にあります」
「「「……………」」」
無言になる3人にこれ以上何か言っても仕方ないだろう。
挨拶を済ませると繋を抱えマーガレットたちと帰路に着く。
「………言わない方が良かったですかね?」
彼らの衝撃はかなりのものだろう。
だが縁は繋たちを産んだことを後悔してはいないし、恥ずかしいことをしたとも思っていないため隠すことをしたくはなかった。
それはこれまでよくしてくれた彼らだからこそでもある。
「いいや。アンタは立派な繋たちのママなんだから隠す必要なんて何もないんだ。胸を張ってな」
「そうだよ。これでアイツらが何か言ってきたら私たちに言いなさい。今日の比じゃないくらい地獄を見せてやるからね」
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