二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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旅は道連れ

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 食事も無事終えるとエルと双子は再び獣を捕まえるため罠を張りにいった。
 貧血気味の縁はアズと仲良くお留守番。
 
 「この子をリルはどうしたいですか?」

 怪我も治り、腹も満たされた子狼は今は縁の膝でぐっすりお昼寝中だ。

 「どうとは?」

 縁を支えるように横になっていたリルが頭を上げる。

 「育てていく気があるかということです。ないならないで構いませんが、それなら早いこと離さないとずっとついてきちゃいますよ」

 野生は野生に帰さなければならない。
 ということではなく、育てる気もないのに同情し下手に手を伸ばすのは間違っていると思うのだ。

 「見殺しにしろと言うか?」

 「違います」

 この子狼を助けたリルの行動が間違っていると言っているわけではない。

 「こうして助かった命ではありますけど、助けたからにら最後まで責任を持たなければならないと思うんです」

 「責任?」

 リル自身が育てたいと言うのであればそれで問題はない。
 だがそうではないというのならば代わりにそれをしてくれる相手を探す必要があるのだ。

 「一人で生きていけるようになるまで、その方法を教え側にいること。リルはどうしますか?」

 もちろんリルが育てるというのであれば縁も手助けはいくらでもしよう。
 だがそれを頼りに決めるのでは意味がなく、それがなくとも育てるという覚悟があるかどうか。

 「………………我には出来ぬ」

 今まで一人で生きてきたリルには子育てどころか食事であるミルクをやることさえ出来ない。
 落ち込みシュンと力なく垂れる耳と尻尾がとても可愛い。

 「そう落ち込むことじゃないですよ。出来ないならば出来る人に任せればいいだけです」

 「どういうことだ?」

 「私もそれほど顔が広いわけではありませんが、助けてくれそうな人に心当たりがあるので頼んでみましょう」

 「其方の知り合いというならば信じられるな。よろしく頼む」

 心を許してくれているのかどうなのか野生と思えぬ仰向け姿で寝る子狼の隙だらけの腹を優しく撫でてやるのだった。





 「ということでどうでしょう?」

 「却下だ」

 呆気なく断られたがまだ諦めてはいない。

 「そもそも何故私なんだ?君ならもっと適任者に心当たりがあるだろう?」

 そう、縁が子狼を預けるに辺り最初に訪れたのが宰相であるレオナルドだった。
 大人しく縁の膝に収まる子狼だが、先程まで元気に部屋中を走り回っていた。

 「私が考えた中で一番の適任者が宰相様だったんです」

 「だからそれは何故だ?」

 それほど不思議なことだろうかと考えたが、よく考えたらそうかもしれない。
 一国の宰相に拾った狼を押し付ける。うん、おかしい。

 「理由はいくつかありますが、大きい理由は貴方のためということですかね。この子のためというより貴方のためです」

 「…………どういうことだ?」

 縁も子狼を預けるに辺りそれなりに考えた。
 マーガレットやランたちでも快く引き受けてくれたではあろうが、多少嫌がるかもしれないがレオナルドに頼んだ。

 「この子は魔獣ではないのでそこまで強くはなりませんが、人一人守るくらいには強くなると思います」

 宰相という立場上周りから狙われることも多々あるだろう。
 要は番犬だ。

 「物理的なこともそうですが、食事など人には気付きにくいこともこの子なら気付けるかもしれない」

 毒味係がいるとはいうがその人物さえ怪しい時はあるだろう。
 まだ幼いためそこまで出来はしないだろうが、訓練次第ではかなり鋭くなる……と思う。
 そうでなくとも彼らの嗅覚と聴覚は人間の何倍もすごい。

 「それだけか?」

 「いくつかある理由の一つです。あと当たり前ですがこの子も生きているのでご飯が必要です」

 「それぐらい誰でも分かる。私は私でなければならない理由を………」

 黙り込むレオナルドに彼も縁が言いたいことが分かったのだろう。

 「なので与えなければいけません。自分のことだけならばまだしも他の命を預かっているとなれば忘れはしないでしょう?もちろんも」

 狼の餌と自身の食事。

 「………」

 反論しないのは以前縁が注意をしたにもかかわらずまた無理をして仕事をしているからだ。
 寝食を惜しまず仕事をこなすのはすごいと思うが人間身体が資本だ。
 狼に与えるついでと言っては何だが一緒にとればいい。

 「体温も高くて温かいですし、ふわふわの毛はかなり魅力的ですよ」

 抱き枕にしろとは言わないが、縁は時々リルを抱っこしてお昼寝している。

 「だが私に育てることはーー」

 「ならば手を借りればいい。食事や就寝の時以外、まぁこの子が暇してると思ったらマルズス隊長たちが遊んで…いえ、訓練してくれるそうです」

 その許可はもうもらっていると言えば苦い顔をされたが。

 「貴方は人に頼ることを少しは覚えた方がいいですよ。何でもこなせるのは単純にすごいとは思いますけどそのせいでいらぬ仕事まで増える」

 「………分かってる」

 レオナルドも自覚があるのだろうが、彼の性格と今までの経験からそれも難しいのだろう。


 「それにーー」

 「?」

 「何があっても自分を信頼してくれる存在が側にいてくれるというのは心を軽くしてくれますよ」

 「…………」

 レオナルドが縁を信頼してくれているは知っている。
 だが縁とてずっと側にいてやることは出来ないのだ。
 それはマーガレットたちとて同じで、心の拠り所が人には必要だ。
 
 「名前は何にしますか?」

 「…………ポチ」

 流石の彼もネーミングセンスはなかったらしい。
 可哀想なので縁がラックと名付けてやるのだった。
 
 
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