228 / 475
寝耳に水
しおりを挟む
「それに隊長だけ戦ってどうするんですか。隊の強さを競うのであれば全隊員でなければ意味がないでしょう?模擬戦とは実戦訓練を兼ねたものであり日々みなさんがどれだけ鍛え協力出来ているか上に知らしめる行為でもあるんですから」
驚いた。
しかし納得出来てしまい、そう言われれば何故自分たちは今までそうしなかったのだろうと不思議になってくる。
「……そう、ですね。隊長が勝ったからと言って私たちが強くなるわけではないんですよね」
いくは隊長が勝ったと喜ぼうが、結局自分たちの強さは自分たちで示すしかないのだ。
上は結果しか見ない。
以前も言われたにもかかわらず全く考えられていなかった。
「私たちも参加するべきだったんですね」
「模擬戦と言うのであればですね。ただ隊長たちの練習試合とかであるならばそれでいいと思いますけど」
これは自分たちの力を示す場だったのだと今更ながら気がついた。
「今からでも間に合いますかね?」
「宰相に聞いてみるか。ダメならダメで次回から出来るように頼んでみようぜ」
隊長も賛成だと頷いてくれる。
「試合の規模が変わりますからね。難しいかもしれませんがそれならそれでそれだけの意味を見出せばいいんです」
「意味ですか?」
どういうことだろうか?
「剣を作るお金足りないんですよね?ならばその試合で稼げばいいんじゃないですか?」
「どういうこった?」
「私は見たことないので何とも言えませんが貴族でも平民でも呼んでみなさんの勇姿を見てもらうとか。少しでも見物料なり入場料なりもらえれば足しになりませんか?」
「「………」」
この子の頭の中はどうなっているのか。
隊長も驚いたように見つめている。
「娯楽にもなり、自国の戦力を確認することもでき、お金も稼げる。その剣の良さを知ればもしかしたら援助してくれる方も現れるかもしれません」
次々に上げられる可能性に理解が追いつかない。
立ち尽くしていた隊長も気が抜けたようにその場に座り込んだ。
見る側からすれば確かに娯楽にもなり、その強さから安心して日々暮らせるかもしれない。
出る側もその勇姿を大勢に見せられ、戦いの勉強にもなり、隊の資金源になるかもしれないのだ。
戦で戦うだけが全てではない。
「もしかしたら憧れから隊に入りたいという人が現れるかもしれませんよ。私は嫌ですけど」
マジか。
「いや、もう入れよ」
フレックも頷くが断固として断られる。
「子どもに嫌われたくないので嫌です」
「お前ガキいたのかよ!」
「お子さんいたんですか!」
勝手に未婚だとばかり思っていた。
自分より華奢で可愛らしい姿に子どもだとばかり。
「いますよ。4人」
「「っ!?」」
しかも4人!聞いてない!
「1人は血が繋がってませんが。そんなに驚くことですか?お2人だって結婚されてますよね?」
「してねぇ」
「してません」
「………あれ?」
隊長は年齢的にも確かに結婚してないのはマズいが、その性格から難しいのは分かりきっていた。
フレックにしても仕事の忙しさから結婚とは程遠い生活を送っていた。
別に彼が悪いわけではないのだが明らかに仲間だと思っていた上、歳下に先越されたと分かり何とも複雑である。
「お前さん……綺麗な顔してヤルことヤーー痛って!」
「何てこと言うんですか!」
子どもの前で!と言おうとしたが子どもではなかったのだと混乱するばかりである。
「まぁこればかりは出会いですからね。お2人共素敵なのですぐ見つかりますよ」
頑張って見つけようと決心するのであった。
しかしこれで子持ちとは凄いなぁと見つめていると、何を思ったのか今度連れてくると言われた。
「いや何か疑われているみたいだったので。それに私の子も多少魔法が使えるのでーー」
「よし、連れてこい!」
隊長が食い気味に返事していた。
よもや子どもにまであれこれやれと無茶振りしないことを祈るばかりである。
「ってか何で入ったら嫌われんだよ。カッコイイとか言われるかもしれねぇだろ」
「そうですねぇ。私もそう言われたくはあるんですけど……」
何を思ったか隊長に向かって手を差し出したかと思えば、先程まで隊長が振り回していた剣を構え心持ちキラキラした目でこちらを見てくる。
「似合います?」
「「…………」」
こりゃ無理だわ。
今まで色んな人間を見てきてはいたが、これほど似合わない人間もいまい。
そもそも剣の大きさと彼の身体の大きさが合っておらずかなり重そうである。
逆に危なく見え味方にまで被害が出そうだ。
どうするんだと隊長を小突けば、あの隊長でさえどうしたものかと視線を彷徨わせている。
「あー、なんだ、お前さんはこう……あれだ、作戦とか考えんのなら向いて……」
「それここに入る意味あります?」
「「………」」
負けを認めた。
ならば時々でいいから見学しにきて意見があれば言って欲しいと頼めば漸く頷いてくれるのであった。
そうしてエニシを見送ると模擬戦の新たな提案書を提出するため隊長と2人相談するのであった。
驚いた。
しかし納得出来てしまい、そう言われれば何故自分たちは今までそうしなかったのだろうと不思議になってくる。
「……そう、ですね。隊長が勝ったからと言って私たちが強くなるわけではないんですよね」
いくは隊長が勝ったと喜ぼうが、結局自分たちの強さは自分たちで示すしかないのだ。
上は結果しか見ない。
以前も言われたにもかかわらず全く考えられていなかった。
「私たちも参加するべきだったんですね」
「模擬戦と言うのであればですね。ただ隊長たちの練習試合とかであるならばそれでいいと思いますけど」
これは自分たちの力を示す場だったのだと今更ながら気がついた。
「今からでも間に合いますかね?」
「宰相に聞いてみるか。ダメならダメで次回から出来るように頼んでみようぜ」
隊長も賛成だと頷いてくれる。
「試合の規模が変わりますからね。難しいかもしれませんがそれならそれでそれだけの意味を見出せばいいんです」
「意味ですか?」
どういうことだろうか?
「剣を作るお金足りないんですよね?ならばその試合で稼げばいいんじゃないですか?」
「どういうこった?」
「私は見たことないので何とも言えませんが貴族でも平民でも呼んでみなさんの勇姿を見てもらうとか。少しでも見物料なり入場料なりもらえれば足しになりませんか?」
「「………」」
この子の頭の中はどうなっているのか。
隊長も驚いたように見つめている。
「娯楽にもなり、自国の戦力を確認することもでき、お金も稼げる。その剣の良さを知ればもしかしたら援助してくれる方も現れるかもしれません」
次々に上げられる可能性に理解が追いつかない。
立ち尽くしていた隊長も気が抜けたようにその場に座り込んだ。
見る側からすれば確かに娯楽にもなり、その強さから安心して日々暮らせるかもしれない。
出る側もその勇姿を大勢に見せられ、戦いの勉強にもなり、隊の資金源になるかもしれないのだ。
戦で戦うだけが全てではない。
「もしかしたら憧れから隊に入りたいという人が現れるかもしれませんよ。私は嫌ですけど」
マジか。
「いや、もう入れよ」
フレックも頷くが断固として断られる。
「子どもに嫌われたくないので嫌です」
「お前ガキいたのかよ!」
「お子さんいたんですか!」
勝手に未婚だとばかり思っていた。
自分より華奢で可愛らしい姿に子どもだとばかり。
「いますよ。4人」
「「っ!?」」
しかも4人!聞いてない!
「1人は血が繋がってませんが。そんなに驚くことですか?お2人だって結婚されてますよね?」
「してねぇ」
「してません」
「………あれ?」
隊長は年齢的にも確かに結婚してないのはマズいが、その性格から難しいのは分かりきっていた。
フレックにしても仕事の忙しさから結婚とは程遠い生活を送っていた。
別に彼が悪いわけではないのだが明らかに仲間だと思っていた上、歳下に先越されたと分かり何とも複雑である。
「お前さん……綺麗な顔してヤルことヤーー痛って!」
「何てこと言うんですか!」
子どもの前で!と言おうとしたが子どもではなかったのだと混乱するばかりである。
「まぁこればかりは出会いですからね。お2人共素敵なのですぐ見つかりますよ」
頑張って見つけようと決心するのであった。
しかしこれで子持ちとは凄いなぁと見つめていると、何を思ったのか今度連れてくると言われた。
「いや何か疑われているみたいだったので。それに私の子も多少魔法が使えるのでーー」
「よし、連れてこい!」
隊長が食い気味に返事していた。
よもや子どもにまであれこれやれと無茶振りしないことを祈るばかりである。
「ってか何で入ったら嫌われんだよ。カッコイイとか言われるかもしれねぇだろ」
「そうですねぇ。私もそう言われたくはあるんですけど……」
何を思ったか隊長に向かって手を差し出したかと思えば、先程まで隊長が振り回していた剣を構え心持ちキラキラした目でこちらを見てくる。
「似合います?」
「「…………」」
こりゃ無理だわ。
今まで色んな人間を見てきてはいたが、これほど似合わない人間もいまい。
そもそも剣の大きさと彼の身体の大きさが合っておらずかなり重そうである。
逆に危なく見え味方にまで被害が出そうだ。
どうするんだと隊長を小突けば、あの隊長でさえどうしたものかと視線を彷徨わせている。
「あー、なんだ、お前さんはこう……あれだ、作戦とか考えんのなら向いて……」
「それここに入る意味あります?」
「「………」」
負けを認めた。
ならば時々でいいから見学しにきて意見があれば言って欲しいと頼めば漸く頷いてくれるのであった。
そうしてエニシを見送ると模擬戦の新たな提案書を提出するため隊長と2人相談するのであった。
21
お気に入りに追加
3,696
あなたにおすすめの小説
【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜
N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間)
ハーレム要素あります。
苦手な方はご注意ください。
※タイトルの ◎ は視点が変わります
※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます
※ご都合主義です、あしからず
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される
Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木)
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!
黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。
死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。
闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。
そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。
BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)…
連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
偽物の番は溺愛に怯える
にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』
最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。
まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる