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失言
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「こんなに副隊長さんが疲れるまで頑張っても何も知らない上の方々は隊長さんを評価するだけで副隊長は評価されないんですよ」
そんなつもりはなかった。
ただ苦手な書類仕事をフレックが代わりにやってくれるのが当たり前になってしまっていたのだ。
「その分戦いでは役目を果たして下さいよ」
そう言い文句を言いながらもやってくれる彼に甘えていた。
だがそれを知っているのは仲間内だけであって、確かに上の連中は知らないだろう。
「貴方の仕事だからやりなさいということではありません。向き不向きは誰でもありますがフレックさんにやってもらうにしても全てを任せるのではなく、自分なりに出来る範囲で手伝えばいいんです。分からなかれば聞けばいいですし、1人でやるより2人でやる方が捗るでしょう?」
まさか年下である少年に説教されるとは思わなかったが、お前の仕事だからお前がやれと言うわけではなく、無理せず出来る範囲でいいと言われ納得出来た。
「信頼しているからこそお互い任せ、任せられるお2人は素晴らしいです。ですがそれを見て育った他の兵士さんたちはどうなるでしょう?」
どうなる?
「もし彼らが隊長にまで登りつめた時、彼らもやりたくない仕事は誰かに任せておけばいい、と考える可能性はありませんか?」
「「…………」」
耳が痛かった。
黙り込むマルズスたちにエニシも苦笑いしている。
「可能性の話しです。ここにいる方たちはお2人のことをちゃんと理解していると思いますよ」
仕事仲間とは言え、1日の大半を一緒に過ごす彼らはマルズスにとって家族のようなものだった。
だからこそ副隊長に叱られる隊長という普通なら情けないだろう姿も見せられた。
「これは私の考えであって提案なだけです。けど頑張れと応援されるより一緒に頑張ろうと言われる方が誰だって嬉しいでしょう?」
「………そうですね」
苦労は分かち合う。
つまりはそういうことだろう。
互いが互いに出来ることを補うということは出来ないことを全て任せるということではない。
出来ないにも出来ないなりに頑張り、それでも出来なかった時に手を借り支え合うこと。
「そもそも作戦を立てるのが好きではないと言いますが、隊長さんだって戦う時にこいつならここを任せられるとか考えるぐらいはするでしょう?」
「そら当たり前だろ」
どいつが何が得意であり、ここなら後は任せられるか判断するのは自分の役目なのだ。
「作戦会議なんてその延長線上ですよ。こうすれば奇襲出来るとか考えるのではなく、彼らの才能をどうしたら活かせるのかと考えればいいんです」
なるほど。
こいつの能力なら出来る、あいつならこれが出来るからやらせてみると考えればそう難しくはない。
誰が何を出来るか知っている自分だからこそ出来ることだ。
「貴方が仲間ではないことが悔やまれますね」
「だよな~。やっぱ入らないか?」
「お断りします」
あまりの笑顔に交渉の余地はないだろう。
それでももしかしたらと今後少しずつ交渉していこうとフレックと2人頷き合うのだった。
「というか何でフレックは名前で、俺は隊長さんなんだよ」
「呼びたくないんじゃないですか?」
そんなわけあるか!そんなわけ……
自信がなくなってきた。
「いえ単純に隊長さんの方が呼びやすかっただけなんですけど。それにここの皆さんも隊長って呼んでましたし」
「ならフレックだって副隊長さんでいいじゃねぇか」
「ちょっと、私を巻き込まないで下さいよ。エニシさん気にしなくていいですからね。今後も私のことはフレックと気軽に呼んで下さい」
おい、コラ!
自慢気に笑うフレックに腹が立ち睨みつけるがどこ吹く風だ。
「分かりました。なら今後はマルズス隊長とーー」
「だから隊長から放れろよ!」
隊長呼びが気にくわないのに何故そこでそうなるのか。
「私なんかが名前を呼んでいいものですかね?」
「本人がいいつってんだからいいだろ。ってかフレックとかエリックはよくて何で俺がダメなんだよ」
王子であるエリックでさえ親し気に名前で呼んでいたのに、何故自分はダメなのか。
「マルズスって若干言いにくいんですよね。こう………マル…マー…いや、マス………マルスさんでは?」
「………………………いいぞ」
名案!とばかりに提案されたがなぜ短縮されたのか。
それでもその方が呼びやすいというなら仕方がないが、とりあえず隣で爆笑しているフレックは後で絶対殴る。
「これからよろしくお願いします。で、剣なんですが魔道具に改造してしまえばいいのでは?」
説教……もとい話しをしながらもちゃんと考えてくれていたらしい。
「で、使う時にでも嵌め込むようなものにしてもらえば普段は普通に使えると思うのですが」
……いいな。
詳しく話すためにもフレックと協力して仕事を素早く終わらせるのだった。
そんなつもりはなかった。
ただ苦手な書類仕事をフレックが代わりにやってくれるのが当たり前になってしまっていたのだ。
「その分戦いでは役目を果たして下さいよ」
そう言い文句を言いながらもやってくれる彼に甘えていた。
だがそれを知っているのは仲間内だけであって、確かに上の連中は知らないだろう。
「貴方の仕事だからやりなさいということではありません。向き不向きは誰でもありますがフレックさんにやってもらうにしても全てを任せるのではなく、自分なりに出来る範囲で手伝えばいいんです。分からなかれば聞けばいいですし、1人でやるより2人でやる方が捗るでしょう?」
まさか年下である少年に説教されるとは思わなかったが、お前の仕事だからお前がやれと言うわけではなく、無理せず出来る範囲でいいと言われ納得出来た。
「信頼しているからこそお互い任せ、任せられるお2人は素晴らしいです。ですがそれを見て育った他の兵士さんたちはどうなるでしょう?」
どうなる?
「もし彼らが隊長にまで登りつめた時、彼らもやりたくない仕事は誰かに任せておけばいい、と考える可能性はありませんか?」
「「…………」」
耳が痛かった。
黙り込むマルズスたちにエニシも苦笑いしている。
「可能性の話しです。ここにいる方たちはお2人のことをちゃんと理解していると思いますよ」
仕事仲間とは言え、1日の大半を一緒に過ごす彼らはマルズスにとって家族のようなものだった。
だからこそ副隊長に叱られる隊長という普通なら情けないだろう姿も見せられた。
「これは私の考えであって提案なだけです。けど頑張れと応援されるより一緒に頑張ろうと言われる方が誰だって嬉しいでしょう?」
「………そうですね」
苦労は分かち合う。
つまりはそういうことだろう。
互いが互いに出来ることを補うということは出来ないことを全て任せるということではない。
出来ないにも出来ないなりに頑張り、それでも出来なかった時に手を借り支え合うこと。
「そもそも作戦を立てるのが好きではないと言いますが、隊長さんだって戦う時にこいつならここを任せられるとか考えるぐらいはするでしょう?」
「そら当たり前だろ」
どいつが何が得意であり、ここなら後は任せられるか判断するのは自分の役目なのだ。
「作戦会議なんてその延長線上ですよ。こうすれば奇襲出来るとか考えるのではなく、彼らの才能をどうしたら活かせるのかと考えればいいんです」
なるほど。
こいつの能力なら出来る、あいつならこれが出来るからやらせてみると考えればそう難しくはない。
誰が何を出来るか知っている自分だからこそ出来ることだ。
「貴方が仲間ではないことが悔やまれますね」
「だよな~。やっぱ入らないか?」
「お断りします」
あまりの笑顔に交渉の余地はないだろう。
それでももしかしたらと今後少しずつ交渉していこうとフレックと2人頷き合うのだった。
「というか何でフレックは名前で、俺は隊長さんなんだよ」
「呼びたくないんじゃないですか?」
そんなわけあるか!そんなわけ……
自信がなくなってきた。
「いえ単純に隊長さんの方が呼びやすかっただけなんですけど。それにここの皆さんも隊長って呼んでましたし」
「ならフレックだって副隊長さんでいいじゃねぇか」
「ちょっと、私を巻き込まないで下さいよ。エニシさん気にしなくていいですからね。今後も私のことはフレックと気軽に呼んで下さい」
おい、コラ!
自慢気に笑うフレックに腹が立ち睨みつけるがどこ吹く風だ。
「分かりました。なら今後はマルズス隊長とーー」
「だから隊長から放れろよ!」
隊長呼びが気にくわないのに何故そこでそうなるのか。
「私なんかが名前を呼んでいいものですかね?」
「本人がいいつってんだからいいだろ。ってかフレックとかエリックはよくて何で俺がダメなんだよ」
王子であるエリックでさえ親し気に名前で呼んでいたのに、何故自分はダメなのか。
「マルズスって若干言いにくいんですよね。こう………マル…マー…いや、マス………マルスさんでは?」
「………………………いいぞ」
名案!とばかりに提案されたがなぜ短縮されたのか。
それでもその方が呼びやすいというなら仕方がないが、とりあえず隣で爆笑しているフレックは後で絶対殴る。
「これからよろしくお願いします。で、剣なんですが魔道具に改造してしまえばいいのでは?」
説教……もとい話しをしながらもちゃんと考えてくれていたらしい。
「で、使う時にでも嵌め込むようなものにしてもらえば普段は普通に使えると思うのですが」
……いいな。
詳しく話すためにもフレックと協力して仕事を素早く終わらせるのだった。
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