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悪い夢
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泣き疲れ眠った少女を抱き上げると起こさないよう静かにベッドに寝かせる。
「寝たようだね。その子の両親が来たようだから一緒に来てくれるかい?」
漸く見つかったようで、詳しい説明をするためにも縁が呼ばれた。
「「ありがとうございましたっ」」
部屋に入り椅子に腰掛けるなりそう言って頭を下げられた。
「どうか頭を上げて下さい。娘さんを助けられて良かったです」
早く無事を確かめたいだろうにこうして頭を下げてくる2人に縁も申し訳なくなる。
「大丈夫、今は泣き疲れて眠っています」
「本当にありがとうございました。私共もまさかこんなことになるとは……」
貴族ならば身代金目的の誘拐も考えられただろうが、今回のことは誰も予想出来ていなかったに違いない。
縁が間に合い最悪なことにならずには済んだが、今回のことで本人も今まで以上に気をつけるだろう。
「どうか今回のことは娘さんには話さないであげて下さい」
「「え?」」
本人の状態にもよるが話しを蒸し返すことによって恐怖まで一緒に蘇ってしまうかもしれない。
「今後気をつけることは必要ですが、本人が話しをしたいと言うまで触れないであげて下さい」
「ですが……」
忘れろというわけではない。
本人がそうしたいと思えばそれでもいいが、あの怯えようではすぐに元通りとは難しいだろう。
「可哀想にと気をつかうのではなく、もう大丈夫だと安心させてあげて下さい」
「………安心」
不安そうな両親の表情に、縁は膝に乗る繋をぎゅっと抱きしめてやる。
「もしかしたら恐怖で泣き出すかもしれない。その時はお母様がこうして抱きしめてあげて下さい。必ずそばにいると、教えてあげて下さい」
涙を流しながらも頷く母親に微笑むと父親に目を向ける。
「お父様はもう大丈夫だと背を撫でてあげて下さい。怖いものは父さんが全て追い払うと」
「ーーはい、必ず」
「今まで愛し大切に育ててきた御二人だからこそ意味があり信じられるんです」
腫れ物に触るように距離を置くのではなく、何があっても側にいるという言葉が力になる。
いくら身体の傷を治そうが心の傷は本人にしか治せない。
だがその手助けは出来る。
「もしそれでも無理そうなら話しを聞いてあげて下さい。大丈夫、最悪なことにはなっていません。将来のことで不安はあれど機に病むことは何もない」
傷物と罵られることも蔑まれることもない。
「はい」
「ありがとうございます」
深く頭を下げてる2人に縁も頭を下げる。
「私こそ偉そうに申し訳ありませんでした。同じ子を持つ親として娘さんが元気になることを祈っています」
心配だろう2人を部屋へ案内すると静かに後にするのだった。
「アンタは本当に何者なんだい?」
はて?
部屋に戻った途端そう言われ何事かと思った。
「極々普通の一般人ですね」
「最近親になったばかりのアンタがよくあんなこと言えたもんだね」
うーーーーん。どうしたものか。
確かに中身は若者ではない。
「言い方は悪いけどマーガレットも感謝してるんだよ。それにしても繋ちゃんの魔法はすごいね」
褒められて嬉しかったのかえっへんと胸を張っている。
親バカではあるが可愛い。
「か、可愛いっ」
「ヤバいっ」
こちらはじじバカならぬばばバカである。
「少しずつですが覚えさせているんです。本人に自覚はありませんが」
魔法を教えると言って教えているわけではない。
普段の生活の中で使うことが出来るものをこうしたら出来ると教えているのだ。
高い高い然り、いたいのいたいのとんでけ然り。
「こりゃ将来が楽しみだね」
「アル爺も言ってました。未だに嫌われてますけど」
あれ以来顔を合わせても警戒して近寄ろうとはしないのだ。
「ありゃ自業自得さ」
「そうだよ。いい気味だ」
そんなアル爺の落ち込む姿を見るのが楽しいのかマーガレットたちは一切フォローしようとはしない。
縁も頑張ってはみたのだが、話しを聞き興奮したアル爺の姿を見て更に敵対意識が出来たらしい。
逆にランには凄く懐き、会う度嬉しそうに遊んでもらっている。
「そういえば宰相様に今度お城に来るように言われたんですけど……」
「けど?」
「どうやら用があるのは隊長さんらしくて。私……怒られるんですかね?」
特に何かしたというわけではないが、縁本人がしてないと思っているだけで無意識に何かしている可能性もある。
行ってみないことには分からないのだが、念のため何かあれば聞いておきたい。
「隊長?…ってあの筋肉バカかい?」
やはり知り合いのようだ。
それにしてもこの国の兵隊長を筋肉バカとは酷い言いようである。
「たぶんその方だと思います。本人も会議や書類仕事が苦手だと言っていたので」
副隊長にも注意されていたので間違いないだろう。
「あのバカがアンタに用って……今度は何をやらかしたんだい?」
本人には自覚がないため何とも言えない。
「いや、あのバカのことだからきっとそんな深い理由はないと思うよ」
ヤバい。
縁が名前を聞き忘れたばかりに彼の呼び名がバカになってしまっている!!
「まぁ、何か言われたら私らに言いな。代わりに説教してやるから」
何故か縁ではなく、隊長が怒られるこになってしまっているのだった。
「寝たようだね。その子の両親が来たようだから一緒に来てくれるかい?」
漸く見つかったようで、詳しい説明をするためにも縁が呼ばれた。
「「ありがとうございましたっ」」
部屋に入り椅子に腰掛けるなりそう言って頭を下げられた。
「どうか頭を上げて下さい。娘さんを助けられて良かったです」
早く無事を確かめたいだろうにこうして頭を下げてくる2人に縁も申し訳なくなる。
「大丈夫、今は泣き疲れて眠っています」
「本当にありがとうございました。私共もまさかこんなことになるとは……」
貴族ならば身代金目的の誘拐も考えられただろうが、今回のことは誰も予想出来ていなかったに違いない。
縁が間に合い最悪なことにならずには済んだが、今回のことで本人も今まで以上に気をつけるだろう。
「どうか今回のことは娘さんには話さないであげて下さい」
「「え?」」
本人の状態にもよるが話しを蒸し返すことによって恐怖まで一緒に蘇ってしまうかもしれない。
「今後気をつけることは必要ですが、本人が話しをしたいと言うまで触れないであげて下さい」
「ですが……」
忘れろというわけではない。
本人がそうしたいと思えばそれでもいいが、あの怯えようではすぐに元通りとは難しいだろう。
「可哀想にと気をつかうのではなく、もう大丈夫だと安心させてあげて下さい」
「………安心」
不安そうな両親の表情に、縁は膝に乗る繋をぎゅっと抱きしめてやる。
「もしかしたら恐怖で泣き出すかもしれない。その時はお母様がこうして抱きしめてあげて下さい。必ずそばにいると、教えてあげて下さい」
涙を流しながらも頷く母親に微笑むと父親に目を向ける。
「お父様はもう大丈夫だと背を撫でてあげて下さい。怖いものは父さんが全て追い払うと」
「ーーはい、必ず」
「今まで愛し大切に育ててきた御二人だからこそ意味があり信じられるんです」
腫れ物に触るように距離を置くのではなく、何があっても側にいるという言葉が力になる。
いくら身体の傷を治そうが心の傷は本人にしか治せない。
だがその手助けは出来る。
「もしそれでも無理そうなら話しを聞いてあげて下さい。大丈夫、最悪なことにはなっていません。将来のことで不安はあれど機に病むことは何もない」
傷物と罵られることも蔑まれることもない。
「はい」
「ありがとうございます」
深く頭を下げてる2人に縁も頭を下げる。
「私こそ偉そうに申し訳ありませんでした。同じ子を持つ親として娘さんが元気になることを祈っています」
心配だろう2人を部屋へ案内すると静かに後にするのだった。
「アンタは本当に何者なんだい?」
はて?
部屋に戻った途端そう言われ何事かと思った。
「極々普通の一般人ですね」
「最近親になったばかりのアンタがよくあんなこと言えたもんだね」
うーーーーん。どうしたものか。
確かに中身は若者ではない。
「言い方は悪いけどマーガレットも感謝してるんだよ。それにしても繋ちゃんの魔法はすごいね」
褒められて嬉しかったのかえっへんと胸を張っている。
親バカではあるが可愛い。
「か、可愛いっ」
「ヤバいっ」
こちらはじじバカならぬばばバカである。
「少しずつですが覚えさせているんです。本人に自覚はありませんが」
魔法を教えると言って教えているわけではない。
普段の生活の中で使うことが出来るものをこうしたら出来ると教えているのだ。
高い高い然り、いたいのいたいのとんでけ然り。
「こりゃ将来が楽しみだね」
「アル爺も言ってました。未だに嫌われてますけど」
あれ以来顔を合わせても警戒して近寄ろうとはしないのだ。
「ありゃ自業自得さ」
「そうだよ。いい気味だ」
そんなアル爺の落ち込む姿を見るのが楽しいのかマーガレットたちは一切フォローしようとはしない。
縁も頑張ってはみたのだが、話しを聞き興奮したアル爺の姿を見て更に敵対意識が出来たらしい。
逆にランには凄く懐き、会う度嬉しそうに遊んでもらっている。
「そういえば宰相様に今度お城に来るように言われたんですけど……」
「けど?」
「どうやら用があるのは隊長さんらしくて。私……怒られるんですかね?」
特に何かしたというわけではないが、縁本人がしてないと思っているだけで無意識に何かしている可能性もある。
行ってみないことには分からないのだが、念のため何かあれば聞いておきたい。
「隊長?…ってあの筋肉バカかい?」
やはり知り合いのようだ。
それにしてもこの国の兵隊長を筋肉バカとは酷い言いようである。
「たぶんその方だと思います。本人も会議や書類仕事が苦手だと言っていたので」
副隊長にも注意されていたので間違いないだろう。
「あのバカがアンタに用って……今度は何をやらかしたんだい?」
本人には自覚がないため何とも言えない。
「いや、あのバカのことだからきっとそんな深い理由はないと思うよ」
ヤバい。
縁が名前を聞き忘れたばかりに彼の呼び名がバカになってしまっている!!
「まぁ、何か言われたら私らに言いな。代わりに説教してやるから」
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