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まさか
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「この場所がいつまでも安全だとは限らないでしょ?人だって増えるだろうし、今すぐには無理だとしても何かあった時のために避難場所兼新しい住処があればみんな安心出来ます」
そんなことを考えてくれていたとは思っておらず驚いた。
確かに今までが大丈夫だからと言って、これからも安全だとは限らないのだ。
増える仲間に部屋数も限られており、いつかは足りなくなることもあるだろう。
しかしそんな未来をも縁は見据え、対策し行動する。
自分がいなくなった後でも皆が困らないように、ジークがエリーとした約束を守り続けられるように考えてくれたのだ。
ならば反対する理由などあるはずもなく、協力も惜しまない。
ならば手が必要だろうと数人連れて行こうとするが、とりあえず現状確認をするため人手はいいと言う。
「この2人と私、あと繋も連れて行こうと思います。アズたちは聞いてみないと分かりませんが、残るようなら任せても大丈夫ですか?」
「俺を置いていく気かよ」
「え、一緒に来てくれるんですか?」
意外とでも言いたそうな縁に、当たり前だろと小突く。
「でもジークがいないとここのみんなが困りませんか?」
「数日なら大丈夫だろ。それに俺がいなくても大丈夫なようにも慣らしていかねぇとな」
将来のためにも新たな住処を作るというのであれば尚更だ。
ジークとていつまで生きられるのか分からないのだ。
自身がいなくなっても対処出来るようにも、少しずつではあるが頑張ってもらわなくてはならない。
「そうですか。ではジークも一緒に行きましょう。アレンとセインはどうしましょうかね。出来れば残ってほしいんですが……」
いきなり戦力であるジーク、アレン、セイン3人がいなくなるのはさすがにまずいだろう。
「……ね、ねぇオレは?オレも留守番?」
明らかに行きたそうなエルだが、連絡手段を持っているのはエルと縁だけのため悪いが残ってもらうことにする。
ならば安全面も考えアズにも残ってもらおうとアズにも相談すれば、予想通り嫌だと言われた。
「やだ!アズもママといく!」
「すぐ帰ってきますから。あちらはいつ倒れるか分からないような建物ばかりなんです。もしアズが怪我なんてしたら私はとても悲しいです」
「ゔー、やだやだ」
普段の生活では数時間会わないということもあるが、それが数日ともなればアズが渋るのも分かる。
だが危険がある以上アズを連れて歩くわけにはいかない。
「連れてってやればいいじゃん」
「サッズ?」
ちょうど通りがかったサッズがアズも一緒に行けばいいと言う。
「勝手に聞いて悪かったですけど、アンタらみんなで行ってくればいいすよ。アレンにセインだってエニシがいなきゃ使いもんにならなさそうだし」
確かに。
だがーー
「聞いてたなら分かんだろ。危ないんだよ。アズが怪我でもしたら……」
「そこの兄弟の家は大丈夫なんでしょ?出かける時だけそこに置いていけばいいじゃないすか」
「ここでの仕事だってだなーー」
「数日なら大丈夫ですよ。使えないヤツ置いていかれる方が迷惑」
「………」
言い方は酷いが、それでもジークたちのことを想ってのことだろう。
「分かったよ。3日だ、3日で帰ってくるからそれまで頑張ってくれ」
「それでいいんすよ。まったく、歳とると判断力まで鈍くなるんスかねぇ」
とりあえず一発殴っておいた。
この口の悪さは誰に似たのだろうか。
そして手分けして準備を済ませるとルーの背中に乗せられドラゴンの国に向かうのだった。
「まったく、世話が焼ける頭だよ」
小さくなっていく後ろ姿にしょうがない奴らだと笑うと、同じく見送りに来ていたシンクが隣で笑っている。
「今まで頼りっぱなしだったスからね。これで少しはオレたちにも頼ってくれるようになればいいスけど」
「だな。あの人が休まないと俺たちだって休めないんだつーの」
「あはははっ、まぁそこが頭のいいとこっスよ。それにエニシさんの提案もいいことばっかじゃないっスか」
そう、新しい住処を作るというエニシの提案はここに住む全ての住人の未来を考えてくれたものだった。
きっかけは違うかもしれないが、その先に自分たち獣人の未来を繋げようとしてくれている。
「頭も最高の番を見つけたもんだな。うらやましいわ」
「スね。オレもエニシさんみたいな嫁さんほしいっス。綺麗だし、可愛いし、何より料理が上手いっス!」
人間でありながら自分たち獣人を1人の個として見てくれる。
非力ながら少しでもみんなの力になろうと考え行動し、どんなに頑張っても解きほぐせなかったジークの心をも救ってくれた。
その上自分たちに未来までくれたのだ。
男の番を見たのはサッズもシンクも初めてだったが、楽しく笑うジークたちに何も違和感はなかった。
愛する番に、幸せだねと笑う家族。羨ましい限りだ。
「ハハッ、ならエニシに頼んでみたらどうだ?オレも番にしてくれって」
「それは頭に殺されるっスから勘弁してくださいっス」
本気で嫌がるシンクにサッズは笑いが止まらないのだった。
そんなことを考えてくれていたとは思っておらず驚いた。
確かに今までが大丈夫だからと言って、これからも安全だとは限らないのだ。
増える仲間に部屋数も限られており、いつかは足りなくなることもあるだろう。
しかしそんな未来をも縁は見据え、対策し行動する。
自分がいなくなった後でも皆が困らないように、ジークがエリーとした約束を守り続けられるように考えてくれたのだ。
ならば反対する理由などあるはずもなく、協力も惜しまない。
ならば手が必要だろうと数人連れて行こうとするが、とりあえず現状確認をするため人手はいいと言う。
「この2人と私、あと繋も連れて行こうと思います。アズたちは聞いてみないと分かりませんが、残るようなら任せても大丈夫ですか?」
「俺を置いていく気かよ」
「え、一緒に来てくれるんですか?」
意外とでも言いたそうな縁に、当たり前だろと小突く。
「でもジークがいないとここのみんなが困りませんか?」
「数日なら大丈夫だろ。それに俺がいなくても大丈夫なようにも慣らしていかねぇとな」
将来のためにも新たな住処を作るというのであれば尚更だ。
ジークとていつまで生きられるのか分からないのだ。
自身がいなくなっても対処出来るようにも、少しずつではあるが頑張ってもらわなくてはならない。
「そうですか。ではジークも一緒に行きましょう。アレンとセインはどうしましょうかね。出来れば残ってほしいんですが……」
いきなり戦力であるジーク、アレン、セイン3人がいなくなるのはさすがにまずいだろう。
「……ね、ねぇオレは?オレも留守番?」
明らかに行きたそうなエルだが、連絡手段を持っているのはエルと縁だけのため悪いが残ってもらうことにする。
ならば安全面も考えアズにも残ってもらおうとアズにも相談すれば、予想通り嫌だと言われた。
「やだ!アズもママといく!」
「すぐ帰ってきますから。あちらはいつ倒れるか分からないような建物ばかりなんです。もしアズが怪我なんてしたら私はとても悲しいです」
「ゔー、やだやだ」
普段の生活では数時間会わないということもあるが、それが数日ともなればアズが渋るのも分かる。
だが危険がある以上アズを連れて歩くわけにはいかない。
「連れてってやればいいじゃん」
「サッズ?」
ちょうど通りがかったサッズがアズも一緒に行けばいいと言う。
「勝手に聞いて悪かったですけど、アンタらみんなで行ってくればいいすよ。アレンにセインだってエニシがいなきゃ使いもんにならなさそうだし」
確かに。
だがーー
「聞いてたなら分かんだろ。危ないんだよ。アズが怪我でもしたら……」
「そこの兄弟の家は大丈夫なんでしょ?出かける時だけそこに置いていけばいいじゃないすか」
「ここでの仕事だってだなーー」
「数日なら大丈夫ですよ。使えないヤツ置いていかれる方が迷惑」
「………」
言い方は酷いが、それでもジークたちのことを想ってのことだろう。
「分かったよ。3日だ、3日で帰ってくるからそれまで頑張ってくれ」
「それでいいんすよ。まったく、歳とると判断力まで鈍くなるんスかねぇ」
とりあえず一発殴っておいた。
この口の悪さは誰に似たのだろうか。
そして手分けして準備を済ませるとルーの背中に乗せられドラゴンの国に向かうのだった。
「まったく、世話が焼ける頭だよ」
小さくなっていく後ろ姿にしょうがない奴らだと笑うと、同じく見送りに来ていたシンクが隣で笑っている。
「今まで頼りっぱなしだったスからね。これで少しはオレたちにも頼ってくれるようになればいいスけど」
「だな。あの人が休まないと俺たちだって休めないんだつーの」
「あはははっ、まぁそこが頭のいいとこっスよ。それにエニシさんの提案もいいことばっかじゃないっスか」
そう、新しい住処を作るというエニシの提案はここに住む全ての住人の未来を考えてくれたものだった。
きっかけは違うかもしれないが、その先に自分たち獣人の未来を繋げようとしてくれている。
「頭も最高の番を見つけたもんだな。うらやましいわ」
「スね。オレもエニシさんみたいな嫁さんほしいっス。綺麗だし、可愛いし、何より料理が上手いっス!」
人間でありながら自分たち獣人を1人の個として見てくれる。
非力ながら少しでもみんなの力になろうと考え行動し、どんなに頑張っても解きほぐせなかったジークの心をも救ってくれた。
その上自分たちに未来までくれたのだ。
男の番を見たのはサッズもシンクも初めてだったが、楽しく笑うジークたちに何も違和感はなかった。
愛する番に、幸せだねと笑う家族。羨ましい限りだ。
「ハハッ、ならエニシに頼んでみたらどうだ?オレも番にしてくれって」
「それは頭に殺されるっスから勘弁してくださいっス」
本気で嫌がるシンクにサッズは笑いが止まらないのだった。
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