二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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仕方ないですねぇ

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 そらから暫く泣き続ける男の背を撫でてやっていたが、このままでは逆上せてしまうと風呂から上がると部屋に戻る。
 着替える時以外はべったりと張り付いてくる男に呆れるが、性的なものを感じさせることはなく、迷子になっていた子どもがやっと見つけた親に必死に抱きついているような感じであり無理に引き剥がすのも忍びなく感じてしまう。

 「いい加減離れまーー」

 「やだ」

 「喉が渇いたんですが」

 「……どっか行かない?」

 「そのつもりなら一緒にお風呂に入ってませんよ」

 まだ完全に信用したわけではないが、今までの態度を見る限り無理矢理犯されるなんてことはないだろう。
 チラチラと様子を窺いながらも飲み物を取りに行ったのを確認すると、疲れを吐き出すように大きな溜め息をつく。
 何故あそこまで懐かれているのやら。
 一人が寂しいと嘆く気持ちは分かるが、それと縁に執着する意味が分からない。
 初めて会ったのだってつい最近であり、会った回数など片手の指で事足りる。
 気に入ったと言っていた容姿にしても、探せばいくらでも代わりもそれ以上も見つけられるだろう。

 「エルだって綺麗な分類だと思いますけどねぇ。あ、男だから産めないか」

 いや、子どもを産むためだけであればもう容姿などどうでもいいのでは?
 
 「魔力がないと駄目なのであれば魔族の女性に頼むとかすればーー」

 「やだ!オレはアンタがいいの!」

 縁が考えに耽っている間に戻ってきてしまったようだ。
 両手に持っていたグラスを近くのテーブルに置くと今にも泣きそうな顔で目の前まで駆け寄ってくる。
 ソファーに座る縁の前に膝をつくとギュッと両手を握られた。

 「お願い。オレの番になってーーいや、なって下さい!」

 お手本かのようなプロポーズに状況も忘れキュンとしたが、だからと言ってそう簡単に受け入れていい問題ではない。

 「私である必要はないでしょう?確かに私は貴方が気にいる容姿かもしれませんが、それだけで決めるにはまだ早いです。もしかしたらこれから出逢う人の中に本当に貴方が求める人が現れるかもしれません。そのためにもーー」

 「ちがう!それだけじゃない!オレ…オレはアンタがいいの。アンタじゃないとイヤなの」

 どうしたものか。

 「そう言われても……大体私は人間ですよ?貴方たちみたいに長生きなんて出来ません。一人が嫌だと泣くぐらいなら他の方がーー」

 「そ、それでも!……それでもア、アンタがいいって言ってるじゃん。なんでダメなの?オ、オレのことそんなキライ?」

 あ~あ~、やっと泣き止んだかと思ったのにまた泣いちゃいましたね。
 あのヘラヘラと笑っていた時が随分と懐かしい。

 「好きとか嫌いとかの問題ではなくーーって、だから嫌いとは言ってないでしょう?そんなに泣いて明日はヒドイことになりますよ」

 縁が嫌いと発言する度に流れる涙が増し縁の膝を濡らしていく。
 折角着替えた服が台無しだ。

 「一人が辛いのは分かります。けれどそれと私を番に望むのは違うでしょう?私を番にしてその後は?私が死ねば貴方はまたそうやって泣くんでしょう?子が出来なかったら?貴方はまた一人だと泣き喚くんですか?」

 「オレ、オレは……」

 彼が何を一番望んでいるかが問題なのだ。
 彼は縁を番にすれば全てが解決すると思っていたようだが、そんなことあるはずがない。
 まず縁にはすでに3人の番がいるため寂しいからと彼だけ構ってやるということは出来ない。
 ジークたちにしても寿命の長さを理解した上で番になった。
 セインとの間に子ども、繋が出来たことは喜ばしいことだが、それが他の番にも適応されるかは分からない。
 そもそも男であるため子が出来ないと分かっていてもアレンは縁を番にと望んでくれていた。
 きっと3人を残して先にいなくなるだろう自分に悩んだが、何より彼らが縁を愛していると伝えてくれたからこそ番になることを決めた。
 

 「貴方が嫌いで言っているわけではないんです。一人は嫌だと泣く貴方にだから言ってるんです。分かるでしょう?私は貴方の番にはなれなーー」

 「なんで!だって……だってオレ言ったじゃん!」

 「…?」

 「オレ、アンタがいいって言ったじゃん!そりゃ、一人になるのはイヤだけど…でも!アンタがいいってオレ言ったもん!アンタじゃなきゃイヤってオレ言ったもん!」

 もんって……
 痛いほど握られた両手にさらに力がこもる。

 「お願いだから…オレのものになってよ。もうペットになってなんて言わないから、もうアンタのガキ邪魔とか言わないから、もう怒鳴ったりしないから。もうワガママ言わないから、ねぇ……お願いだから嫌いにならないで……」 

 「………」

 震える手で引き寄せられ、小刻みに揺れる肩を見ればもうダメだと言ってやることが出来なかった。
 あれほど拒絶していたにも関わらずどうしてこうなったのやら。

 「お願いする前に私に言うことがあるでしょう?何故私なんですか?」

 彼が何故そうまでして縁を選んだかは分からない。
 それでもそうまでして縁がいいと言うのであれば、何故のか?ちゃんと言って欲しかった。



 
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