二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
上 下
152 / 475

しつこい

しおりを挟む
 ジークたちと共に肉探……動物捕………狩りに来たのだが、何故だか動物1匹見当たらない。
 これではマズイと目を皿のようにして探すがそれでも見つからない。

 「私の存在に恐れをなしていなくなったーーわけではないですよね?」

 「だろうな。むしろお前なら動物たちの方から寄ってきそうだ」

 それは……いや、深く考えないでおこう。
 それにしても普段よく見るはずの鹿や兎、それどころか鳥1匹見当たらずジークもおかしいと感じているようだ。

 「なんだ?こんなにいないのもーー」

 「ジーク?」

 言葉を止めたジークに首を傾げれば、静かにするようにと言われ木の上を指差される。

 「?……ん?」

 何か赤いヒラヒラしたものが見えたかと思えば、その先に人のような姿が見えた。
 というのも、あまりに木が高すぎて縁の身長では枝や葉に隠れてそれっぽいとしか確認できなかったのだ。

 「あんなところで何してるんですかね?お昼寝?いや、あの人も動物を追ーーはっ!忍者ですかね!?」

 もしかしたらとジークを見れば、やはり忍者というのが分からないらしく不思議そう……いや、何かまた変なこと考えてんなという呆れた感じで縁を見ていた。

 「冗談ですよ、冗談。それよりあんな所で何してるんですかね?お昼寝するにしても場所が悪過ぎます」

 「いや、昼寝って決まったわけじゃねぇからな」

 「でも木の上ですることって他にありますか?」

 「………偵察、とかか?」

 こんな木に囲まれた場所で?
 登ったところで山か森しか見えるものはないだろう。
 ジークもそう思ったのか自信なさげである。

 「ママ、いこう」

 それまで黙ってジークたちの会話を聞いていたアズが突如縁の手を引きもう行こうという。

 「アズ?どうしました?」

 「アズ、あいつきらい」

 挨拶するどころか顔を合わせていないにもかかわらず、アズは会いたくないとばかりにさっさと行こうと縁を引っ張る。

 「アズ?もしかして知ってる人ですか?」

 「しらない。けどきもちわるいの。やだ」

 元々人見知りではあったが、ここまで拒絶反応を示すアズにジークと2人驚き顔を見合わせる。

 「気持ち悪い?怖いってことか?」

 「わかんない。せなかきもちわるいの」

 やだやだと首を振るアズに、落ち着くようにと腕に抱え上げる。
 大丈夫だと背中を撫でてやればギュッと抱きついてきた。

 「ここまでアズが嫌がるのも珍しいですね。けど何かあってはいけませんから今日は帰りましょう」

 今のところそれほど影響はなさそうだが、ここまで嫌がるのを連れて歩くのも可哀想だ。
 縁はアズを抱えているため繋はジークに任せる。

 「大丈夫ですよ。もう帰りますからね」

 俯いたまま顔を上げないアズにそう言えば、言葉はないが肩で頷いたのが分かった。

 「スノーは大丈夫ですか?」

 「キュー」

 少し元気がないようだが、動けるようではあるので申し訳ないが自身で歩いてもらう。
 その代わり擦り寄ってきた頭を撫でてやれば嬉しそうに鳴いていた。

 「繋は…大丈夫そうですね。早く帰りーー」

 「ルーーイ帰ったぞーー」

 「んあ?おっせぇよ兄貴」

 どこからともなくそんな声が聞こえたかと思えば、目の前に赤い何かが落ちてきた。
 勢いで髪が跳ね上がりハラリと舞い上がり、服と同じその赤い瞳がこちらを見る。

 「「………」」

 うーん、見てない。私は何も見ていない。
 関わってはいけないと感じ回れ右すると足早にその場を離れる。

 「ねぇ、どこ行くの?」

 「………」

 「ねぇってば、無視?無視なの?ねぇぇ~」

 「………」

 やはり面倒くさいタイプだ。
 個人的にも合わない気がする。
 震え出したアズに大丈夫だと安心させるように抱く腕に力を込める。
 小走りではあるが足早に歩く縁たちに、男は無視されているにもかかわらず楽しそうに笑いながら付いてくる。

 「ねぇ~、アンタ人間?人間だよね?ならさ、オレのペットになんない?」

 誰がなるか!!

 「ちょっと聞いてる?ねぇねぇ、ペットになってよ。オレ大事にするよ。ちゃんとメシもやるし、遊んでやるよ」

 「………」

 聞いてもなければ、何も答えない縁に何が楽しいのかずっと話しかけてくる。

 「アンタ見た目いいしさ、バカっぽくなさそうだしオレのペットにピッタリじゃない?ほら、やっぱ見た目だけで中身空っぽのバカとかいんじゃん?それにオレ見てもビクビクしねぇし。あれ見ててイライラすんだよね」

 こちらは現在進行形で貴方にイライラしてます!
このまま男を連れて帰るわけにもいかず、ジークの様子を伺いながら森の中を歩き回る。

 「ねぇペットになってよ。何が問題?大事にするって言ってんじゃん。このオレが」

 人のことをペットにしようとしている時点で問題であり、信用できるわけがない。
 なんとか撒きたいが、先程から縁たちと話しながら並走しているにもかかわらず男が息を上げる様子はない。
 逆に元々そんなに体力がない上に、ずっとアズを抱えている縁の方が疲れてきた。

 「マジ聞いてよ。あ、もしかして命令されたい系?そうなの?ならオレ得意ーー」

 「ルイ!!どこ行くんだよ!あれほど待ってろって言っーーあ」

 聞き覚えのある声に足を止めれば、後ろから見覚えのある男の姿が。

 「…また貴方ですか」

 一気に力が抜け、アズを抱えたままその場に座り込むのだった。

 
 
 


 
 

 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜

N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間) ハーレム要素あります。 苦手な方はご注意ください。 ※タイトルの ◎ は視点が変わります ※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます ※ご都合主義です、あしからず

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される

Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木) 読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!! 黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。 死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。 闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。 そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。 BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)… 連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。 拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。 Noah

偽物の番は溺愛に怯える

にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』 最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。 まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

王太子殿下は悪役令息のいいなり

白兪
BL
「王太子殿下は公爵令息に誑かされている」 そんな噂が立ち出したのはいつからだろう。 しかし、当の王太子は噂など気にせず公爵令息を溺愛していて…!? スパダリ王太子とまったり令息が周囲の勘違いを自然と解いていきながら、甘々な日々を送る話です。 ハッピーエンドが大好きな私が気ままに書きます。最後まで応援していただけると嬉しいです。 書き終わっているので完結保証です。

処理中です...