151 / 475
挨拶
しおりを挟む
「さぁ、行きましょう!」
そんな縁の言葉に部屋に入ろうとしていたジークは手を止めた。
「いやいや、どこにだよ」
「え?おばあさんに会いにですけど……あれ?言ってませんでしたっけ?」
聞いてない。
準備万端とばかりに繋とアズ、スノーを連れた縁に、しかしそんなこと聞いてないぞと文句を言う。
「あれ?昨日言ーーあ、言ったのはセインでした。すいません」
言ったは言ったようだが、相手が違ったらしい。
「えーと、ならエルにでも頼みーー」
「今準備すっから待ってろ」
1人で行こうとしないのはまだいいが、エルは場所を知らない上、ならば自分がと縁が道案内すれば迷うことは確実である。
どうせ休みなのだ、予定があるわけでもないので問題ない。
素早く準備すると、縁たちを抱え隠れ家を後にした。
「アズたちは何色が好きですか?」
「うーん、うーんとね…し…きいろ!」
「白じゃないんですか?」
「しろ、もすき。でもママのいろだから」
なるほど。
縁の金色の瞳をどうやら黄色と言ったようだ。
「ありがとう。あ、スノーは白ですね。ではこれも入れて……完成!」
「アズもできた!」
スノーが咥えてきた白い花も入れ、花束と花冠を作る。
以前喜ばれたため、また作って持っていこうということなったのだ。
眠る繋にも小さな花冠を作って被せてやっていた。
「ジークも欲しいですか?」
「いらねぇ」
繋を見つめていれば、何を思ったのか欲しいのかと聞かれた。
可愛いなと思っていただけで羨ましいなど思ってなんかいないと言えば、笑って冗談ですと言われる。
仕返しに軽く小突いておいた。
「こんにちは」
「あらあら、可愛いお客さんね。それにたくさん。嬉しいわ」
迷うことなく着いた女性の家に、さすがジークですと謎の感心をされつつ中に入る。
「今日はご挨拶とご報告にきました」
「……こんにちは」
縁の後ろに隠れながらもアズが挨拶すれば、スノーも驚かせないようにか小さく頭を出しながら頭を下げている。
「あらあらあら、こんにちは。また来てくれて嬉しいわ。そっちの子は初めてね。大丈夫よ、怖くないわ」
それなりに大きく育ってきたスノーにも怖がることなく笑顔で挨拶してくれた。
「あと、最近産まれた子で繋と言います。私の子です」
「あら?エニシさんの子?」
やはり男が産むという考えがないため混乱しているようだ。
「少々特殊な状況なんですが、ちゃんと私がお腹を痛めて産んだ子です」
「……そうなの、頑張ったのね。とても可愛い子だわ。女の子かしら?」
「はい」
やはりというか彼女は何も言うことなく、縁が産んだというのを受け入れたようだ。
「こんなに可愛いなら将来大変ね。お父さんも今から心配なんじゃない?」
「……まぁ」
こちらに話しかけてくるとは思っておらず、反応が遅れたがジークのことを繋の父親と思っているようだ。
「そうなんですよ。これでこの子が一生1人だったらどうするんだと言い聞かせてます」
縁も否定することはなく、ジークが親バカになりつつあることを注意してきた。
「俺は、変な虫がつかないようにだなーー」
「はいはい。そんなこと言って…もしかしたらいい虫…じゃない、いい人かもしれないでしょ?それに気が早すぎます」
「………」
過保護であることは自覚しているため言い返せない。
そんなジークたちを彼女は笑っていた。
人様の前でする話しではないと思い、戸惑い縁に張り付いているアズを見ると預かっていた花冠を渡してやる。
「お前が作ったんだから自分で渡せよ」
「………あげる」
まだ慣れていないようだが、アズは嫌がることなく歩いていくとちゃんと作った花冠を渡していた。
「まぁ、私に?ありがとう。エニシさんが言っていた通りね、とても上手だわ」
「ママがおしえてくれたの」
「そうなの、すてきね。ちゃんと飾るわね」
褒められて嬉しいのか緊張しながらも嬉しそうに頷いていた。
それからみんなでお茶を飲み、たわいない話をしながら普段1人では出来ないだろう力仕事などを手伝った。
主にジークが。
「本当に助かったわ。ありがとう。良かったらまた遊びに来てちょうだい、もちろんみんなでね」
「ありがとうございます」
「ありがとう」
お土産にとたくさんの採れたて野菜をもらい帰ろうとしたのだが、またもや縁が突拍子も無いことを言い出した。
「狩りに行きましょう」
「……理由は?」
「筋肉作りのために」
「………」
狩り=筋肉という発想が理解できない。
「ジンさんが筋肉作りにはお肉を食べればいいと言っていました」
余計なことを言ってくれたものだ。
そんなことしなくていいと言いたかったが、縁の張り切りようと、よく考えればそんなに量が食べれない縁には無理だろうと開き直り付いて行くのだった。
「というか、アイツ狩りなんてしたことあったか?」
ズンズンと進んでいく縁に、そんな探し方で見つかるわけないだろと思ったが言わないでおく。
見つかっても問題ないのだが、どうせなら見つからないことを祈るのだった。
そんな縁の言葉に部屋に入ろうとしていたジークは手を止めた。
「いやいや、どこにだよ」
「え?おばあさんに会いにですけど……あれ?言ってませんでしたっけ?」
聞いてない。
準備万端とばかりに繋とアズ、スノーを連れた縁に、しかしそんなこと聞いてないぞと文句を言う。
「あれ?昨日言ーーあ、言ったのはセインでした。すいません」
言ったは言ったようだが、相手が違ったらしい。
「えーと、ならエルにでも頼みーー」
「今準備すっから待ってろ」
1人で行こうとしないのはまだいいが、エルは場所を知らない上、ならば自分がと縁が道案内すれば迷うことは確実である。
どうせ休みなのだ、予定があるわけでもないので問題ない。
素早く準備すると、縁たちを抱え隠れ家を後にした。
「アズたちは何色が好きですか?」
「うーん、うーんとね…し…きいろ!」
「白じゃないんですか?」
「しろ、もすき。でもママのいろだから」
なるほど。
縁の金色の瞳をどうやら黄色と言ったようだ。
「ありがとう。あ、スノーは白ですね。ではこれも入れて……完成!」
「アズもできた!」
スノーが咥えてきた白い花も入れ、花束と花冠を作る。
以前喜ばれたため、また作って持っていこうということなったのだ。
眠る繋にも小さな花冠を作って被せてやっていた。
「ジークも欲しいですか?」
「いらねぇ」
繋を見つめていれば、何を思ったのか欲しいのかと聞かれた。
可愛いなと思っていただけで羨ましいなど思ってなんかいないと言えば、笑って冗談ですと言われる。
仕返しに軽く小突いておいた。
「こんにちは」
「あらあら、可愛いお客さんね。それにたくさん。嬉しいわ」
迷うことなく着いた女性の家に、さすがジークですと謎の感心をされつつ中に入る。
「今日はご挨拶とご報告にきました」
「……こんにちは」
縁の後ろに隠れながらもアズが挨拶すれば、スノーも驚かせないようにか小さく頭を出しながら頭を下げている。
「あらあらあら、こんにちは。また来てくれて嬉しいわ。そっちの子は初めてね。大丈夫よ、怖くないわ」
それなりに大きく育ってきたスノーにも怖がることなく笑顔で挨拶してくれた。
「あと、最近産まれた子で繋と言います。私の子です」
「あら?エニシさんの子?」
やはり男が産むという考えがないため混乱しているようだ。
「少々特殊な状況なんですが、ちゃんと私がお腹を痛めて産んだ子です」
「……そうなの、頑張ったのね。とても可愛い子だわ。女の子かしら?」
「はい」
やはりというか彼女は何も言うことなく、縁が産んだというのを受け入れたようだ。
「こんなに可愛いなら将来大変ね。お父さんも今から心配なんじゃない?」
「……まぁ」
こちらに話しかけてくるとは思っておらず、反応が遅れたがジークのことを繋の父親と思っているようだ。
「そうなんですよ。これでこの子が一生1人だったらどうするんだと言い聞かせてます」
縁も否定することはなく、ジークが親バカになりつつあることを注意してきた。
「俺は、変な虫がつかないようにだなーー」
「はいはい。そんなこと言って…もしかしたらいい虫…じゃない、いい人かもしれないでしょ?それに気が早すぎます」
「………」
過保護であることは自覚しているため言い返せない。
そんなジークたちを彼女は笑っていた。
人様の前でする話しではないと思い、戸惑い縁に張り付いているアズを見ると預かっていた花冠を渡してやる。
「お前が作ったんだから自分で渡せよ」
「………あげる」
まだ慣れていないようだが、アズは嫌がることなく歩いていくとちゃんと作った花冠を渡していた。
「まぁ、私に?ありがとう。エニシさんが言っていた通りね、とても上手だわ」
「ママがおしえてくれたの」
「そうなの、すてきね。ちゃんと飾るわね」
褒められて嬉しいのか緊張しながらも嬉しそうに頷いていた。
それからみんなでお茶を飲み、たわいない話をしながら普段1人では出来ないだろう力仕事などを手伝った。
主にジークが。
「本当に助かったわ。ありがとう。良かったらまた遊びに来てちょうだい、もちろんみんなでね」
「ありがとうございます」
「ありがとう」
お土産にとたくさんの採れたて野菜をもらい帰ろうとしたのだが、またもや縁が突拍子も無いことを言い出した。
「狩りに行きましょう」
「……理由は?」
「筋肉作りのために」
「………」
狩り=筋肉という発想が理解できない。
「ジンさんが筋肉作りにはお肉を食べればいいと言っていました」
余計なことを言ってくれたものだ。
そんなことしなくていいと言いたかったが、縁の張り切りようと、よく考えればそんなに量が食べれない縁には無理だろうと開き直り付いて行くのだった。
「というか、アイツ狩りなんてしたことあったか?」
ズンズンと進んでいく縁に、そんな探し方で見つかるわけないだろと思ったが言わないでおく。
見つかっても問題ないのだが、どうせなら見つからないことを祈るのだった。
21
お気に入りに追加
3,696
あなたにおすすめの小説
【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜
N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間)
ハーレム要素あります。
苦手な方はご注意ください。
※タイトルの ◎ は視点が変わります
※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます
※ご都合主義です、あしからず
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される
Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木)
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!
黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。
死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。
闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。
そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。
BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)…
連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
偽物の番は溺愛に怯える
にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』
最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。
まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる