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今日の敵は今日も敵?
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「やはり大切なのは食事なんですね。私はあまり多く食べられないですが…頑張ります!」
そんな言葉にどっと疲れたエルたちは良かったねと言いつつマーガレットたちと別れギルドを後にーー
「待ってたぞ、お前たち!」
「「……あ」」
完全に忘れていた。
エニシによる筋肉話に気をとられ何故ギルドに行ったのか忘れていた。
精神的に疲れきっている中、これ以上の頭痛の種はいらない。
「もう帰ってよ。邪魔」
「キサマっ、よく俺にそんな口がきけるな!」
うっざ。
今この瞬間に爆ぜて死ね。
早く死んでくれないかなぁと心の中で願っていると、トントンと肩を叩かれた。
「……なに?」
振り返ればにこにこと笑顔のエニシが。
「私、とっておきの魔法の言葉知ってますよ」
とっておき?魔法の…言葉?
確かにエニシにはいくつかの魔法を教えはしたし、応用をきかせることができるエニシならば可能かもしれない。
だが基本詠唱を必要としないエニシが魔法ではなく、魔法の言葉と言ったことが引っかかった。
「なにそれ」
どういうことか聞けば、今しがた出てきたばかりのギルドの扉を開く。
「オジイチャーン、怪しい人がいまーす」
「ーー私の孫に手を出す不届き者はどこだーー!!」
数秒足らずして駆けてきたジンはそのまま飛び上がるとーー
「あ?なんだいっーーぐはぁっ」
「………」
「……あらあら」
華麗に決まった飛び蹴り。
ちょっと待て。いや待って。
目の前で起こったことに頭がついていかない。
その元凶である人物は隣で困りましたねぇとたいして困ってないような顔で言っている。
「てめぇごときがオレの孫に手を出そうなんて100年はえぇーんだよ!」
……いや、誰?
そしてにこにこと楽しそうに隣で笑っているアナタも何?
「あれがジンさんの素みたいですね」
あれが?
だとしたら見たくなかった。
自分も大概だとは思うが、言動に時々難ありだがそれなりに出来る人だと思っていたジンがガラ悪く叫ぶ姿は見たくなかった。
「怖くないの?」
「ジンさんですか?怖くないですよ。というか、今はそうでもないですけど最初に会った時のジンさん笑ってるのにかなり胡散臭く感じてたんですよね」
「…あぁ」
それは自分も感じてはいた。
「そもそも冒険者だったジンさんがあんな話し方だったわけないんですよ。マーガレットさんもそうでしょ?」
確かにマーガレットは女性にしては言動が…あれだ。
「それに私たちを想ってああなっているんですから怖く感じるどころか頼もしいですね」
「マジか!じゃあこれからはこっちでーー」
「ですが、ケイが真似しても困るので普段は控えて下さいね」
「…はい」
やはり孫には敵わないらしい。
「じゃ、じゃあ!せめて、その、呼び方は、その……」
いや、いい歳したジジイがもじもじしないでほしい。
「お爺ちゃんですか?けど私も一応は冒険者なのでそんな呼び方しては周りに示しがつかないのでは?」
自分で一応というのはどうかと思うが、確かにサブとはいえギルドマスターであるジンをお爺ちゃんと呼ぶのは良くないだろう。
「大丈夫!そんなこと言うヤツここにはいないよ。むしろやっとかって喜んでくれるさ」
いやいや何でだよ!どんなギルドだよ!
「そうなんですか?分かりました」
分かったの!?何を?
何の説得力もないのに何が分かったのか。
先程から心の中でツッコミ続けエルはヘトヘトだった。
腕の中のケイの存在だけが心の支えだ。
「へへへへへ、へへへへへ」
やばい。
嬉しさのあまりかジンが壊れた。
倒れた男を足蹴にしたまま、不気味に笑う年寄り。
……怖い、怖すぎる。
「では助けてもらってありがとうございました。今度またケイを連れて遊びに来ますね、お爺ちゃん」
「いつでも待ってるよ!」
「………」
もう何でもいい。
早くお家に帰りたい。
「いやいやいや、待てよ!俺のこと忘れんーーぐぇっ」
あ、バカだなぁ。
ぐりぐりとジンに踏み付けられる男にバカだなと思っても同情はしない。
エニシに手を出したのが悪いのだ。
「あまり…無理しないで下さいね」
それはどっちに対してだろうか?
「さっきも言いましたが、怪我なんかしたら大変なんですから」
ジンに対してだったらしい。
「ありがとう。けど私もそれなりに鍛えているからね。これぐらい何でもないよ。君たちは安心して帰りーー」
「ちょーーと、待ったぁ!」
あぁ、いつになったら帰れるのやら。
諦めの境地にエルは唯一の癒しであるケイを見れば、こんな状況にも関わらずスヤスヤと眠っているのであった。
これは確実にエニシ似であると確信した。
「マーガレットさん?どうしました?」
「ジンがお、お爺ちゃんなら、わ、私はお婆ちゃんだろ!」
「「「………」」」
夫婦とはここまで似るものなのか。
というかいつから見てた!
さぁ呼ぶがいい!とばかりにこちらを見るマーガレットにさすがのエニシも驚きキョトンとしていた。
「……えーと、さすがにマーガレットさんをお婆ちゃんと呼ぶのは……それに女性にその呼び方は失礼では?」
やんわりと断わろうとすれば、これまたマーガレットは絶望したかのような顔になる。
「あー、その、分かりました。マーガレットさんがそれでいいのであれば…その、これからもよろしくお願いしますね、お婆ちゃん」
「任せときな!」
とても男らしい一言だった。
そんな言葉にどっと疲れたエルたちは良かったねと言いつつマーガレットたちと別れギルドを後にーー
「待ってたぞ、お前たち!」
「「……あ」」
完全に忘れていた。
エニシによる筋肉話に気をとられ何故ギルドに行ったのか忘れていた。
精神的に疲れきっている中、これ以上の頭痛の種はいらない。
「もう帰ってよ。邪魔」
「キサマっ、よく俺にそんな口がきけるな!」
うっざ。
今この瞬間に爆ぜて死ね。
早く死んでくれないかなぁと心の中で願っていると、トントンと肩を叩かれた。
「……なに?」
振り返ればにこにこと笑顔のエニシが。
「私、とっておきの魔法の言葉知ってますよ」
とっておき?魔法の…言葉?
確かにエニシにはいくつかの魔法を教えはしたし、応用をきかせることができるエニシならば可能かもしれない。
だが基本詠唱を必要としないエニシが魔法ではなく、魔法の言葉と言ったことが引っかかった。
「なにそれ」
どういうことか聞けば、今しがた出てきたばかりのギルドの扉を開く。
「オジイチャーン、怪しい人がいまーす」
「ーー私の孫に手を出す不届き者はどこだーー!!」
数秒足らずして駆けてきたジンはそのまま飛び上がるとーー
「あ?なんだいっーーぐはぁっ」
「………」
「……あらあら」
華麗に決まった飛び蹴り。
ちょっと待て。いや待って。
目の前で起こったことに頭がついていかない。
その元凶である人物は隣で困りましたねぇとたいして困ってないような顔で言っている。
「てめぇごときがオレの孫に手を出そうなんて100年はえぇーんだよ!」
……いや、誰?
そしてにこにこと楽しそうに隣で笑っているアナタも何?
「あれがジンさんの素みたいですね」
あれが?
だとしたら見たくなかった。
自分も大概だとは思うが、言動に時々難ありだがそれなりに出来る人だと思っていたジンがガラ悪く叫ぶ姿は見たくなかった。
「怖くないの?」
「ジンさんですか?怖くないですよ。というか、今はそうでもないですけど最初に会った時のジンさん笑ってるのにかなり胡散臭く感じてたんですよね」
「…あぁ」
それは自分も感じてはいた。
「そもそも冒険者だったジンさんがあんな話し方だったわけないんですよ。マーガレットさんもそうでしょ?」
確かにマーガレットは女性にしては言動が…あれだ。
「それに私たちを想ってああなっているんですから怖く感じるどころか頼もしいですね」
「マジか!じゃあこれからはこっちでーー」
「ですが、ケイが真似しても困るので普段は控えて下さいね」
「…はい」
やはり孫には敵わないらしい。
「じゃ、じゃあ!せめて、その、呼び方は、その……」
いや、いい歳したジジイがもじもじしないでほしい。
「お爺ちゃんですか?けど私も一応は冒険者なのでそんな呼び方しては周りに示しがつかないのでは?」
自分で一応というのはどうかと思うが、確かにサブとはいえギルドマスターであるジンをお爺ちゃんと呼ぶのは良くないだろう。
「大丈夫!そんなこと言うヤツここにはいないよ。むしろやっとかって喜んでくれるさ」
いやいや何でだよ!どんなギルドだよ!
「そうなんですか?分かりました」
分かったの!?何を?
何の説得力もないのに何が分かったのか。
先程から心の中でツッコミ続けエルはヘトヘトだった。
腕の中のケイの存在だけが心の支えだ。
「へへへへへ、へへへへへ」
やばい。
嬉しさのあまりかジンが壊れた。
倒れた男を足蹴にしたまま、不気味に笑う年寄り。
……怖い、怖すぎる。
「では助けてもらってありがとうございました。今度またケイを連れて遊びに来ますね、お爺ちゃん」
「いつでも待ってるよ!」
「………」
もう何でもいい。
早くお家に帰りたい。
「いやいやいや、待てよ!俺のこと忘れんーーぐぇっ」
あ、バカだなぁ。
ぐりぐりとジンに踏み付けられる男にバカだなと思っても同情はしない。
エニシに手を出したのが悪いのだ。
「あまり…無理しないで下さいね」
それはどっちに対してだろうか?
「さっきも言いましたが、怪我なんかしたら大変なんですから」
ジンに対してだったらしい。
「ありがとう。けど私もそれなりに鍛えているからね。これぐらい何でもないよ。君たちは安心して帰りーー」
「ちょーーと、待ったぁ!」
あぁ、いつになったら帰れるのやら。
諦めの境地にエルは唯一の癒しであるケイを見れば、こんな状況にも関わらずスヤスヤと眠っているのであった。
これは確実にエニシ似であると確信した。
「マーガレットさん?どうしました?」
「ジンがお、お爺ちゃんなら、わ、私はお婆ちゃんだろ!」
「「「………」」」
夫婦とはここまで似るものなのか。
というかいつから見てた!
さぁ呼ぶがいい!とばかりにこちらを見るマーガレットにさすがのエニシも驚きキョトンとしていた。
「……えーと、さすがにマーガレットさんをお婆ちゃんと呼ぶのは……それに女性にその呼び方は失礼では?」
やんわりと断わろうとすれば、これまたマーガレットは絶望したかのような顔になる。
「あー、その、分かりました。マーガレットさんがそれでいいのであれば…その、これからもよろしくお願いしますね、お婆ちゃん」
「任せときな!」
とても男らしい一言だった。
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