137 / 475
誓い
しおりを挟む
死が2人を分かつまで愛することを誓う。
昔出席した友人の結婚式か、はたまた映画の中で聞いた言葉かもう覚えていないが、誓いの言葉にそんなのがあったのを覚えている。
あの頃ならば神聖な誓いで素敵だなと思えた。
しかしこの世界に来て、アレンに出会い、セインにジーク、3人の愛する伴侶に巡り合って少し考えが変わった。
3人が3人とも縁がいないと生きていけないと、縁が死んだら自分も死ぬと言う。
重たいとすら思える言葉に、しかし愛故にそう言う彼らを縁は愛している。
それほど愛してくれる彼らに自分の代わりに長く生きて欲しいとも思うが、それで彼らが苦しむというのならばしなくていいとも思えた。
縁がいなくなり辛く苦しい一生を過ごすというのなら、残念ではあるが苦しまなくていいよう後を追ってもいいとアレンに言った。
「いいのか?」
驚いたように見てくるアレンに笑ってしまう。
やはり止めると思っていたのだろう。
「止めたところでアレンは聞かないでしょう?それに…私も1人は寂しいですからね。アレンならきっと死んでもあの世で私を探してくれそうです」
「はは、任せとけ」
嘘だ。本当は生きて欲しい。
でもそれより強く、自分のせいで苦しんで欲しくないと思う。
自分はエリーのように強くはなれない。
苦しむと分かっているのに生きて欲しいと、生きたくないと言うアレンたちに生きて欲しいと言うことができない。
エリーを否定するわけではない。
ジークに出会わせてくれたエリーにはもちろん感謝しているが、エリーと縁の愛し方は違うのだ。
どちらが正しいとも、どちらが間違っているとも言えない。
エリーがジークを誰より愛していたように、縁も縁なりに彼らを愛している。
ならば彼らが望むままでいい。
死が2人を分かつまで……それもいいが、死して尚求めてくれる彼らにまた出会いたいと思う。
死ぬまで可能な限り愛し、愛され、死んだなら探しに行く。
それでいいのだ。
「疲れたでしょう?簡単ですがご飯を作りました。エルが戻ってきたらーーって、そんなにお腹空いてたんですか?」
一緒に食べようと言う前に焼いた肉に齧り付くアレンに笑ってしまう。
男らしくガッツリ齧り付く姿はカッコいいが、意外によく食べるエルのためにも待ってあげて欲しかった。
「エルの分も残しておいてあげて下さいね。スノーもおいで」
スノーには冷ましたものを食べやすく小さく切ってやる。
美味しいか聞けば可愛らしく鳴くのでよかったと撫でてやった。
「しかし彼らもまだここへ来たばかりだったようですね。人が暮らすにはあまり物がありませんでした」
「ふぅーん」
アレンにとってはもうどうでもいいのだろう。
肉ばかりでは喉が乾くだろうと水を出してやり、しばらくして帰ってきたエルにも渡してやる。
「お疲れ様でした。ケガはしてませんか?」
「ない。っていうかそれオレが言う方だし。まぁ、無事ならよかった」
「ありがとう。嫌なことを頼んでごめんなさい」
「あれぐらいなんでもないし。だいじょーぶ、もう2度とここには来ないって約束させた」
いい笑顔だ。それが逆に怖いが。
彼らが望むなら助けようと思っていた。
だがアレンとエルが説得してもダメだったならば仕方ないと諦める。
「なら安心ですね。ご飯を食べたら少し掃除でもしましょか」
スノーだけなら問題ないが、縁たちが寝泊まりするには少々散らかっており邪魔な石などもどかさなければならない。
「え?泊まんの?」
「いえ今日は帰ります。ただスノーを慣らすためにもこれから何度か泊まろうと思うのでその準備ですね」
いきなり「今日からスノーはここで暮らしなさい」と言ったところで可哀想だろう。
今は無理だがこれから少しずつ慣らしていき、時々会いに来ても大丈夫なように寝泊まりできる場所も作っておきたいのだ。
「今まではアレンとスノーのお母さんだけだったのでそれほど物がなくても困らなかったかもしれませんが、これからはエルもアズも、それにこの子もいますからね。みんなが安心できる場所を作りましょう」
「かなりの大所帯だね。まぁ楽しくていいけど」
縁が来るならば1人ということはなく、少なくとも3、4人は来るだろうから場所を作っておきたい。
「このまま岩を掘り進めていけばそれなりの広さになるでしょう。奥の方に私たちの部屋を作っておけばスノーが生活するにも邪魔になりませんし」
さすがに道具が揃ってないこの世界では、外で泊まると言ってもテントもなければ寝袋もない。
あることにはあるが日本で売っていたようなしっかりしたものではなく、ほとんど野宿と変わりないようなものばかりである。
キャンプ気分では無理がある。
「危なくないように周りに罠でも張っておこっか」
「それは構いませんが……気をつけて下さいね」
「そんな危ないことしないよ?」
「いえ、私が間違ってかかってしまわないように」
「そっちか!……分かった、なるべく安全なものにしとく」
安全な罠とは?
落とし穴的なものだろうか?
しかし穴も深すぎれば死ぬこともあるためどうなのだろうか。
「アレンはスノーに獲物の捕り方を教えて上げて下さい」
まだ早いと思うが、見ているだけでも勉強になるだろう。
本来なら親が教えることだが、いないからには誰かが教えなければならない。
その点、アレンはスノーのお母さんと長く一緒にいたためやり方も分かるだろう。
では開始!と手を打てば各々が動き出したのだった。
昔出席した友人の結婚式か、はたまた映画の中で聞いた言葉かもう覚えていないが、誓いの言葉にそんなのがあったのを覚えている。
あの頃ならば神聖な誓いで素敵だなと思えた。
しかしこの世界に来て、アレンに出会い、セインにジーク、3人の愛する伴侶に巡り合って少し考えが変わった。
3人が3人とも縁がいないと生きていけないと、縁が死んだら自分も死ぬと言う。
重たいとすら思える言葉に、しかし愛故にそう言う彼らを縁は愛している。
それほど愛してくれる彼らに自分の代わりに長く生きて欲しいとも思うが、それで彼らが苦しむというのならばしなくていいとも思えた。
縁がいなくなり辛く苦しい一生を過ごすというのなら、残念ではあるが苦しまなくていいよう後を追ってもいいとアレンに言った。
「いいのか?」
驚いたように見てくるアレンに笑ってしまう。
やはり止めると思っていたのだろう。
「止めたところでアレンは聞かないでしょう?それに…私も1人は寂しいですからね。アレンならきっと死んでもあの世で私を探してくれそうです」
「はは、任せとけ」
嘘だ。本当は生きて欲しい。
でもそれより強く、自分のせいで苦しんで欲しくないと思う。
自分はエリーのように強くはなれない。
苦しむと分かっているのに生きて欲しいと、生きたくないと言うアレンたちに生きて欲しいと言うことができない。
エリーを否定するわけではない。
ジークに出会わせてくれたエリーにはもちろん感謝しているが、エリーと縁の愛し方は違うのだ。
どちらが正しいとも、どちらが間違っているとも言えない。
エリーがジークを誰より愛していたように、縁も縁なりに彼らを愛している。
ならば彼らが望むままでいい。
死が2人を分かつまで……それもいいが、死して尚求めてくれる彼らにまた出会いたいと思う。
死ぬまで可能な限り愛し、愛され、死んだなら探しに行く。
それでいいのだ。
「疲れたでしょう?簡単ですがご飯を作りました。エルが戻ってきたらーーって、そんなにお腹空いてたんですか?」
一緒に食べようと言う前に焼いた肉に齧り付くアレンに笑ってしまう。
男らしくガッツリ齧り付く姿はカッコいいが、意外によく食べるエルのためにも待ってあげて欲しかった。
「エルの分も残しておいてあげて下さいね。スノーもおいで」
スノーには冷ましたものを食べやすく小さく切ってやる。
美味しいか聞けば可愛らしく鳴くのでよかったと撫でてやった。
「しかし彼らもまだここへ来たばかりだったようですね。人が暮らすにはあまり物がありませんでした」
「ふぅーん」
アレンにとってはもうどうでもいいのだろう。
肉ばかりでは喉が乾くだろうと水を出してやり、しばらくして帰ってきたエルにも渡してやる。
「お疲れ様でした。ケガはしてませんか?」
「ない。っていうかそれオレが言う方だし。まぁ、無事ならよかった」
「ありがとう。嫌なことを頼んでごめんなさい」
「あれぐらいなんでもないし。だいじょーぶ、もう2度とここには来ないって約束させた」
いい笑顔だ。それが逆に怖いが。
彼らが望むなら助けようと思っていた。
だがアレンとエルが説得してもダメだったならば仕方ないと諦める。
「なら安心ですね。ご飯を食べたら少し掃除でもしましょか」
スノーだけなら問題ないが、縁たちが寝泊まりするには少々散らかっており邪魔な石などもどかさなければならない。
「え?泊まんの?」
「いえ今日は帰ります。ただスノーを慣らすためにもこれから何度か泊まろうと思うのでその準備ですね」
いきなり「今日からスノーはここで暮らしなさい」と言ったところで可哀想だろう。
今は無理だがこれから少しずつ慣らしていき、時々会いに来ても大丈夫なように寝泊まりできる場所も作っておきたいのだ。
「今まではアレンとスノーのお母さんだけだったのでそれほど物がなくても困らなかったかもしれませんが、これからはエルもアズも、それにこの子もいますからね。みんなが安心できる場所を作りましょう」
「かなりの大所帯だね。まぁ楽しくていいけど」
縁が来るならば1人ということはなく、少なくとも3、4人は来るだろうから場所を作っておきたい。
「このまま岩を掘り進めていけばそれなりの広さになるでしょう。奥の方に私たちの部屋を作っておけばスノーが生活するにも邪魔になりませんし」
さすがに道具が揃ってないこの世界では、外で泊まると言ってもテントもなければ寝袋もない。
あることにはあるが日本で売っていたようなしっかりしたものではなく、ほとんど野宿と変わりないようなものばかりである。
キャンプ気分では無理がある。
「危なくないように周りに罠でも張っておこっか」
「それは構いませんが……気をつけて下さいね」
「そんな危ないことしないよ?」
「いえ、私が間違ってかかってしまわないように」
「そっちか!……分かった、なるべく安全なものにしとく」
安全な罠とは?
落とし穴的なものだろうか?
しかし穴も深すぎれば死ぬこともあるためどうなのだろうか。
「アレンはスノーに獲物の捕り方を教えて上げて下さい」
まだ早いと思うが、見ているだけでも勉強になるだろう。
本来なら親が教えることだが、いないからには誰かが教えなければならない。
その点、アレンはスノーのお母さんと長く一緒にいたためやり方も分かるだろう。
では開始!と手を打てば各々が動き出したのだった。
31
お気に入りに追加
3,728
あなたにおすすめの小説

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

俺が総受けって何かの間違いですよね?
彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。
17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。
ここで俺は青春と愛情を感じてみたい!
ひっそりと平和な日常を送ります。
待って!俺ってモブだよね…??
女神様が言ってた話では…
このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!?
俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!!
平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣)
女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね?
モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる