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やはり孫
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事情を聞き誤解はとけて、本当に申し訳なかったとガンズたちに頭を下げるジンにエニシも一緒に謝ってくれた。
謝ってくれたのだがーー
「ちゃんと確認もしないで人様の家の前で大きな声で叫ぶなんて、マーガレットさんだって怒りますよきっと」
「そ、そうだね。本当にごめんね。ただ早く助けないとってーー」
「それで叫んで戸をバンバン叩くのはあまりにも早とちり過ぎませんか?私だって親としてお酒がダメなことくらい分かってます」
今だ続く説教は止まらず、溜息をつきながら怒られるジンに周りの方がオロオロと心配そうだ。
「縁、もうそのへんでーー」
「貴方が叫び大騒ぎすることによって、ここに住んでいるランに迷惑がかかるんです。何かあったのかと変な噂でもたてられたらどうするんですか」
獣人の彼が助け舟を出そうとしてくれたが、それを遮り説教は続く。
「やっと少しずつ心を開いてくれていたのに、また怯えられたらどうしてくれるんですか」
「本当にごめーー」
「謝るだけで済むと思っているんですか?貴方が叩いていた戸だって半分外れかけていますよ」
「そ、それはすぐに直すよう手配をーー」
「何故そこで人任せなんですか。貴方が壊したんですから貴方が直すべきでしょう?」
元冒険者であるジンの力のせいで戸が半壊するという事実に、謝ろうとするがエニシはそれだけでは許してくれなかった。
「静かに作業するのが好きなランの邪魔までして、これからのお酒造りに支障が出たらどうしてくれるんですか」
「分かった、分かったよ。私に手伝えることがあればーー」
「ありがとうございます。では、お酒造りに必要な材料と道具の手配、それと販売できるような伝手があれば紹介をお願いします」
ここぞとばかりに要求される数々に開いた口が塞がらなかった。
にこにことさも当たり前ですよね?という顔で言われてしまえば、孫としてエニシを可愛いがっているジンには拒否権がないのであった。
コクコクと頷けばやっとお許しが出たらしく、ありがとうござますと笑顔で言われた。
怒り方がジンそっくりだと思ったが、言えばまた倍のものを求められそうなので黙っておいた。
そして最後には自分の要求を押し通すところはマーガレットに似ているなと嬉しくなったのも内緒だ。
「材料と道具は理解出来るが伝手というのは何だい?」
今までも販売できていたのだとしたらジンが手伝うことなどないのではと思ったが、どうやら事情があるらしい。
「あ、あの、エニシくん?お話しは、その、有難いんだけど、僕1人じゃそんなにーー」
「お手伝いならそこにいるじゃないですか。お願いしますねガンズさん。これで心配しながら外で店をやらなくて済みますよ」
「お前………分かったよ。あんがとな」
どうやら2人のためにしたことらしく、ならば仕方ないと思えば全てが全てそうでもないらしい。
「ギルドマスターであるマーガレットさんと、サブギルドマスターであるジンさんほどの方なら上の方との伝手もありますよね?」
「ん?」
「お2人を通してそうした方たちにこのお酒を販売して欲しいんです。とても美味しいお酒です。貴族の方でも満足していただけると思います。ですが人手が少なく量は作れない」
それだけでエニシが何を言いたいのか分かった。
売れる量が少ないのは辛いが、だからこそそこには価値が生まれる。
エニシがそこまで言うのならと確認のためにも一口飲ませてもらえば、なるほどこれは良いものだと納得できた。
「誰に売るかはジンさんたちの判断に任せます。もちろん売ってもらうにあたり手数料も売り上げから引いてもらって構いません」
「あ、あの、エニシくん?それはーー」
「大丈夫です。それを差し引いても今までよりきっと利益は上がります。ですよね?」
そこまで言われて出来ないとは言えない。
それに確かにこれほどの物を下町で細々と売るより、貴族相手に価値をつけて売ればかなりの利益になるだろう。
その上、売り上げの一部を寄越すと言うのだから乗っておいて損はない。
数がないからこそ価値は上がり、自分たちを通すことで彼らを守る盾とする。
「分かった、その話し乗るよ。だがいいのかい?一部とは言え私たちがもらっても」
「しっかりとした金額は売り上げの様子とガンズさんたちとで一緒に決めて下さい。それに無理を頼むんです。見返りがなければタダ働きになってしまう。お金も入り、上の方たちの機嫌もとれランたちも助かる。一石二鳥どころか一石三鳥ですね」
どうジンたちが動くかにもよるが、繋がっておきたい者たちの機嫌をとることもできると言うことだ。
商人になれるのでは?と思うほどあれよあれよと決められていく話しにジンは苦笑いするしかない。
「やはり君はいいね。とてもいい」
「ありがとうございます」
ギルドマスターであるマーガレットやジンに可愛いがられながらも、しかしそれに頼ることなく、むしろ2人に利益を生み出すきっかけをくれるエニシに頭が上がらないのであった。
やはり彼を孫にするしかない!!
今一度、エニシ孫捕獲計画を立てるジンであった。
謝ってくれたのだがーー
「ちゃんと確認もしないで人様の家の前で大きな声で叫ぶなんて、マーガレットさんだって怒りますよきっと」
「そ、そうだね。本当にごめんね。ただ早く助けないとってーー」
「それで叫んで戸をバンバン叩くのはあまりにも早とちり過ぎませんか?私だって親としてお酒がダメなことくらい分かってます」
今だ続く説教は止まらず、溜息をつきながら怒られるジンに周りの方がオロオロと心配そうだ。
「縁、もうそのへんでーー」
「貴方が叫び大騒ぎすることによって、ここに住んでいるランに迷惑がかかるんです。何かあったのかと変な噂でもたてられたらどうするんですか」
獣人の彼が助け舟を出そうとしてくれたが、それを遮り説教は続く。
「やっと少しずつ心を開いてくれていたのに、また怯えられたらどうしてくれるんですか」
「本当にごめーー」
「謝るだけで済むと思っているんですか?貴方が叩いていた戸だって半分外れかけていますよ」
「そ、それはすぐに直すよう手配をーー」
「何故そこで人任せなんですか。貴方が壊したんですから貴方が直すべきでしょう?」
元冒険者であるジンの力のせいで戸が半壊するという事実に、謝ろうとするがエニシはそれだけでは許してくれなかった。
「静かに作業するのが好きなランの邪魔までして、これからのお酒造りに支障が出たらどうしてくれるんですか」
「分かった、分かったよ。私に手伝えることがあればーー」
「ありがとうございます。では、お酒造りに必要な材料と道具の手配、それと販売できるような伝手があれば紹介をお願いします」
ここぞとばかりに要求される数々に開いた口が塞がらなかった。
にこにことさも当たり前ですよね?という顔で言われてしまえば、孫としてエニシを可愛いがっているジンには拒否権がないのであった。
コクコクと頷けばやっとお許しが出たらしく、ありがとうござますと笑顔で言われた。
怒り方がジンそっくりだと思ったが、言えばまた倍のものを求められそうなので黙っておいた。
そして最後には自分の要求を押し通すところはマーガレットに似ているなと嬉しくなったのも内緒だ。
「材料と道具は理解出来るが伝手というのは何だい?」
今までも販売できていたのだとしたらジンが手伝うことなどないのではと思ったが、どうやら事情があるらしい。
「あ、あの、エニシくん?お話しは、その、有難いんだけど、僕1人じゃそんなにーー」
「お手伝いならそこにいるじゃないですか。お願いしますねガンズさん。これで心配しながら外で店をやらなくて済みますよ」
「お前………分かったよ。あんがとな」
どうやら2人のためにしたことらしく、ならば仕方ないと思えば全てが全てそうでもないらしい。
「ギルドマスターであるマーガレットさんと、サブギルドマスターであるジンさんほどの方なら上の方との伝手もありますよね?」
「ん?」
「お2人を通してそうした方たちにこのお酒を販売して欲しいんです。とても美味しいお酒です。貴族の方でも満足していただけると思います。ですが人手が少なく量は作れない」
それだけでエニシが何を言いたいのか分かった。
売れる量が少ないのは辛いが、だからこそそこには価値が生まれる。
エニシがそこまで言うのならと確認のためにも一口飲ませてもらえば、なるほどこれは良いものだと納得できた。
「誰に売るかはジンさんたちの判断に任せます。もちろん売ってもらうにあたり手数料も売り上げから引いてもらって構いません」
「あ、あの、エニシくん?それはーー」
「大丈夫です。それを差し引いても今までよりきっと利益は上がります。ですよね?」
そこまで言われて出来ないとは言えない。
それに確かにこれほどの物を下町で細々と売るより、貴族相手に価値をつけて売ればかなりの利益になるだろう。
その上、売り上げの一部を寄越すと言うのだから乗っておいて損はない。
数がないからこそ価値は上がり、自分たちを通すことで彼らを守る盾とする。
「分かった、その話し乗るよ。だがいいのかい?一部とは言え私たちがもらっても」
「しっかりとした金額は売り上げの様子とガンズさんたちとで一緒に決めて下さい。それに無理を頼むんです。見返りがなければタダ働きになってしまう。お金も入り、上の方たちの機嫌もとれランたちも助かる。一石二鳥どころか一石三鳥ですね」
どうジンたちが動くかにもよるが、繋がっておきたい者たちの機嫌をとることもできると言うことだ。
商人になれるのでは?と思うほどあれよあれよと決められていく話しにジンは苦笑いするしかない。
「やはり君はいいね。とてもいい」
「ありがとうございます」
ギルドマスターであるマーガレットやジンに可愛いがられながらも、しかしそれに頼ることなく、むしろ2人に利益を生み出すきっかけをくれるエニシに頭が上がらないのであった。
やはり彼を孫にするしかない!!
今一度、エニシ孫捕獲計画を立てるジンであった。
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