二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
上 下
126 / 475

やはり孫

しおりを挟む
 事情を聞き誤解はとけて、本当に申し訳なかったとガンズたちに頭を下げるジンにエニシも一緒に謝ってくれた。
 謝ってくれたのだがーー

 「ちゃんと確認もしないで人様の家の前で大きな声で叫ぶなんて、マーガレットさんだって怒りますよきっと」

 「そ、そうだね。本当にごめんね。ただ早く助けないとってーー」

 「それで叫んで戸をバンバン叩くのはあまりにも早とちり過ぎませんか?私だって親としてお酒がダメなことくらい分かってます」

 今だ続く説教は止まらず、溜息をつきながら怒られるジンに周りの方がオロオロと心配そうだ。
 
 「縁、もうそのへんでーー」

 「貴方が叫び大騒ぎすることによって、ここに住んでいるランに迷惑がかかるんです。何かあったのかと変な噂でもたてられたらどうするんですか」

 獣人の彼が助け舟を出そうとしてくれたが、それを遮り説教は続く。
 
 「やっと少しずつ心を開いてくれていたのに、また怯えられたらどうしてくれるんですか」

 「本当にごめーー」

 「謝るだけで済むと思っているんですか?貴方が叩いていた戸だって半分外れかけていますよ」

 「そ、それはすぐに直すよう手配をーー」

 「何故そこで人任せなんですか。貴方が壊したんですから貴方が直すべきでしょう?」

 元冒険者であるジンの力のせいで戸が半壊するという事実に、謝ろうとするがエニシはそれだけでは許してくれなかった。

 「静かに作業するのが好きなランの邪魔までして、これからのお酒造りに支障が出たらどうしてくれるんですか」

 「分かった、分かったよ。私に手伝えることがあればーー」

 「ありがとうございます。では、お酒造りに必要な材料と道具の手配、それと販売できるような伝手があれば紹介をお願いします」

 ここぞとばかりに要求される数々に開いた口が塞がらなかった。
 にこにことさも当たり前ですよね?という顔で言われてしまえば、孫としてエニシを可愛いがっているジンには拒否権がないのであった。
 コクコクと頷けばやっとお許しが出たらしく、ありがとうござますと笑顔で言われた。
 怒り方がジンそっくりだと思ったが、言えばまた倍のものを求められそうなので黙っておいた。
 そして最後には自分の要求を押し通すところはマーガレットに似ているなと嬉しくなったのも内緒だ。

 「材料と道具は理解出来るが伝手というのは何だい?」

 今までも販売できていたのだとしたらジンが手伝うことなどないのではと思ったが、どうやら事情があるらしい。
 
 「あ、あの、エニシくん?お話しは、その、有難いんだけど、僕1人じゃそんなにーー」

 「お手伝いならそこにいるじゃないですか。お願いしますねガンズさん。これで心配しながら外で店をやらなくて済みますよ」

 「お前………分かったよ。あんがとな」

 どうやら2人のためにしたことらしく、ならば仕方ないと思えば全てが全てそうでもないらしい。

 「ギルドマスターであるマーガレットさんと、サブギルドマスターであるジンさんほどの方なら上の方との伝手もありますよね?」

 「ん?」

 「お2人を通してそうした方たちにこのお酒を販売して欲しいんです。とても美味しいお酒です。貴族の方でも満足していただけると思います。ですが人手が少なく量は作れない」

 それだけでエニシが何を言いたいのか分かった。
 売れる量が少ないのは辛いが、だからこそそこには価値が生まれる。
 エニシがそこまで言うのならと確認のためにも一口飲ませてもらえば、なるほどこれは良いものだと納得できた。

 「誰に売るかはジンさんたちの判断に任せます。もちろん売ってもらうにあたり手数料も売り上げから引いてもらって構いません」

 「あ、あの、エニシくん?それはーー」

 「大丈夫です。それを差し引いても今までよりきっと利益は上がります。ですよね?」

 そこまで言われて出来ないとは言えない。
 それに確かにこれほどの物を下町で細々と売るより、貴族相手に価値をつけて売ればかなりの利益になるだろう。
 その上、売り上げの一部を寄越すと言うのだから乗っておいて損はない。
 数がないからこそ価値は上がり、自分たちを通すことで彼らを守る盾とする。

 「分かった、その話し乗るよ。だがいいのかい?一部とは言え私たちがもらっても」

 「しっかりとした金額は売り上げの様子とガンズさんたちとで一緒に決めて下さい。それに無理を頼むんです。見返りがなければタダ働きになってしまう。お金も入り、上の方たちの機嫌もとれランたちも助かる。一石二鳥どころか一石三鳥ですね」

 どうジンたちが動くかにもよるが、繋がっておきたい者たちの機嫌をとることもできると言うことだ。
 商人になれるのでは?と思うほどあれよあれよと決められていく話しにジンは苦笑いするしかない。

 「やはり君はいいね。とてもいい」

 「ありがとうございます」

 ギルドマスターであるマーガレットやジンに可愛いがられながらも、しかしそれに頼ることなく、むしろ2人に利益を生み出すきっかけをくれるエニシに頭が上がらないのであった。
 やはり彼を孫にするしかない!!
 今一度、エニシ孫捕獲計画を立てるジンであった。

 
 
 

 




 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜

N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間) ハーレム要素あります。 苦手な方はご注意ください。 ※タイトルの ◎ は視点が変わります ※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます ※ご都合主義です、あしからず

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される

Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木) 読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!! 黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。 死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。 闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。 そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。 BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)… 連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。 拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。 Noah

偽物の番は溺愛に怯える

にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』 最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。 まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...