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遅れました
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「エニシくん!?」
「……あ?」
暫く会わない内にかなり変わってしまった縁の体型にランが叫ぶ。
別に太ったわけじゃ……いや、太ってはいるか。
「お久しぶりです。ちょっと遅れてしまいましたが報告に来ました」
戻りつつあるが、つい最近まで食欲が落ちていたため立ち寄ることがなかったランの家に、叔父であるガンズとまとめて報告しようと思い訪れてみれば縁の姿を見た途端ランが悲鳴を上げた。
「ど、どう、どうな、どう」
「お前は落ち着け」
混乱するランにガンズがツッコミを入れるが、やはりガンズも驚いているようで目を見開いていた。
6ヵ月に入ったお腹は最初と比べかなり膨らんでおり、歩くのが大変になってきた縁にセインたちが率先して抱っこしてくるようになった。
これでもまだ大きくなるのだから世の女性には尊敬しかない。
これほど大きなお腹を抱え歩くのはどれほど大変なのか
、こうなって初めて理解できた。
「驚かせてすいません。言っておきますが変な病気とかではないので安心して下さい。ただ妊娠中なだけです」
「「………」」
ガンズは大きな溜息をつき、ランは……後ろ向きにぶっ倒れた。
慌てて駆け寄ろうとすれば逆にガンズが慌てて縁を止め、隣でぶっ倒れるランの頰をペチペチ叩く。
「……う、ん?叔父さん?僕なんでーー」
「気がついて良かった。どこも怪我してませんか?」
かなり派手に倒れたランに頭など打ってないか確認すれば、お尻を少しぶつけたぐらいで大きい怪我はないようだ。
「あの、えっと、その、エニシくんその……」
「すごいでしょう?よければ触ってみますか?」
抱えてくれていたセインに下ろしてもらい、おいでおいでと手招きすればキョロキョロと周りの様子を伺いながらも近寄ってきた。
「人間ここまで膨らむんだと驚きましたが、この中に新しい命がいるのだと思うともっとすごいですよね」
「わぁ、パンパンだ」
針で刺せば割れるんじゃないかと思うほど膨らむお腹に、そっと触れたランも驚いている。
「お前さん女だったか?」
「あはははは、違いますよ。正真正銘男です。色々と事情はありますが」
簡単にだがセインたちと番の話しをすれば、かなり驚いていたようだが理解はしたようで頷いていた。
「すごい、ね。ぼっ、僕妊婦さんのお腹触ったの初めてだけど、なんか……感動した」
「お前さんにはよく驚かされるな。まさかガキが出来るとは」
「お騒がせしてすいません。もっと早く来るつもりだったんですけど、つわりやゴタゴタで来るのが遅れてしまいました」
来るのが遅れてごめんねと言えば、ランは首がとれるんじゃないかというぐらい振り、そんなこと気にしなくていいと笑ってくれた。
「言いにきてくれただけですごく嬉しい」
「男か女か分かりませんが、産まれたら抱っこしてあげて下さいね」
「うぇ!?ぼ、ぼくが?ぼく、なんかでいいの?」
「友達であるランがいいんです。もちろんガンズさんもお願いします」
「あぁ、なら無理すんじゃねぇぞ。お前も親父ならこいつをちゃんと見張ってろ」
そこで向いたガンズの目にセインは驚いていたようだが、ぎこちないながらも頷いていた。
「なんでみんなして私をそんな子ども扱いするんですかね?」
何故か会う人会う人、目を離すなとまるで縁が子どもかのように言ってくる。
これでも成人してるのに……
頰を膨らませる縁にガンズは笑って小突いてくる。
「お前さんは何しでかすか分かんねぇからな。止めれねぇんだから隣で誰かが見てるぐらいでいいんだよ」
「日頃の行いだな」
セインまでうんうんと頷き納得しているが、言われた本人は納得できない。
縁には些細なことでも、人によっては捉え方が違うのだと分かっていても複雑である。
「それならランだって同じじゃないですか。私ばかり言われるのはーー」
「エニシくーーん!大丈夫かーー!」
「ん?」
「あ?」
「え?」
「……なんだ?」
隣家にまで響くんじゃないかというくらいの大声は玄関の方から聞こえたようで、何事かと皆身構える。
なんだか聞いたことがある声なんですが……
「エニシくん!エニシくん!」
「……おい、アレお前さんの知り合いか?」
バンバンと戸を打ち鳴らす音にガンズが縁に尋ねるが、何とも嫌な予感がし答えるのを躊躇ってしまう。
「あれ、サブギルドマスターじゃないか?」
やはり耳がいいセインはいち早く気付いたようで、どうする?と縁を見てくる。
何しにここまで来たんでしょうか……
この状況で逃げるのは難しいだろうと諦めると溜息をつきつつ玄関に向かう。
「大きな声で叫ぶのはやめて下さい。ご近所迷惑です」
「エニシくん!!わっ」
抱きつこうとしてきたため反射的に避ければ、見事に顔から地面にダイブしていた。
痛む顔を撫でつつ立とうとしたため手を貸してやる。
「お腹に響くので叫ぶのはやめて下さい。それと、いったい何事ですか?」
あまりの大声にランたちに迷惑をかけてしまったではないかと怒れば、さすがにマズかったと思ったのか素直に謝ってくる。
「ご、ごめんね。エニシくんがこの酒造に入っていったのを見たって人がいてね。妊娠中にお酒はダメでしょ?だから早く止めないと思ってね」
それぐらい縁にだって分かっている。
それ以前に全く飲めないのだが。
ランとガンズに迷惑をかけてしまったのは申し訳ないが、それも縁を心配してゆえだと言われてしまえばもう何も言えないのであった。
「……あ?」
暫く会わない内にかなり変わってしまった縁の体型にランが叫ぶ。
別に太ったわけじゃ……いや、太ってはいるか。
「お久しぶりです。ちょっと遅れてしまいましたが報告に来ました」
戻りつつあるが、つい最近まで食欲が落ちていたため立ち寄ることがなかったランの家に、叔父であるガンズとまとめて報告しようと思い訪れてみれば縁の姿を見た途端ランが悲鳴を上げた。
「ど、どう、どうな、どう」
「お前は落ち着け」
混乱するランにガンズがツッコミを入れるが、やはりガンズも驚いているようで目を見開いていた。
6ヵ月に入ったお腹は最初と比べかなり膨らんでおり、歩くのが大変になってきた縁にセインたちが率先して抱っこしてくるようになった。
これでもまだ大きくなるのだから世の女性には尊敬しかない。
これほど大きなお腹を抱え歩くのはどれほど大変なのか
、こうなって初めて理解できた。
「驚かせてすいません。言っておきますが変な病気とかではないので安心して下さい。ただ妊娠中なだけです」
「「………」」
ガンズは大きな溜息をつき、ランは……後ろ向きにぶっ倒れた。
慌てて駆け寄ろうとすれば逆にガンズが慌てて縁を止め、隣でぶっ倒れるランの頰をペチペチ叩く。
「……う、ん?叔父さん?僕なんでーー」
「気がついて良かった。どこも怪我してませんか?」
かなり派手に倒れたランに頭など打ってないか確認すれば、お尻を少しぶつけたぐらいで大きい怪我はないようだ。
「あの、えっと、その、エニシくんその……」
「すごいでしょう?よければ触ってみますか?」
抱えてくれていたセインに下ろしてもらい、おいでおいでと手招きすればキョロキョロと周りの様子を伺いながらも近寄ってきた。
「人間ここまで膨らむんだと驚きましたが、この中に新しい命がいるのだと思うともっとすごいですよね」
「わぁ、パンパンだ」
針で刺せば割れるんじゃないかと思うほど膨らむお腹に、そっと触れたランも驚いている。
「お前さん女だったか?」
「あはははは、違いますよ。正真正銘男です。色々と事情はありますが」
簡単にだがセインたちと番の話しをすれば、かなり驚いていたようだが理解はしたようで頷いていた。
「すごい、ね。ぼっ、僕妊婦さんのお腹触ったの初めてだけど、なんか……感動した」
「お前さんにはよく驚かされるな。まさかガキが出来るとは」
「お騒がせしてすいません。もっと早く来るつもりだったんですけど、つわりやゴタゴタで来るのが遅れてしまいました」
来るのが遅れてごめんねと言えば、ランは首がとれるんじゃないかというぐらい振り、そんなこと気にしなくていいと笑ってくれた。
「言いにきてくれただけですごく嬉しい」
「男か女か分かりませんが、産まれたら抱っこしてあげて下さいね」
「うぇ!?ぼ、ぼくが?ぼく、なんかでいいの?」
「友達であるランがいいんです。もちろんガンズさんもお願いします」
「あぁ、なら無理すんじゃねぇぞ。お前も親父ならこいつをちゃんと見張ってろ」
そこで向いたガンズの目にセインは驚いていたようだが、ぎこちないながらも頷いていた。
「なんでみんなして私をそんな子ども扱いするんですかね?」
何故か会う人会う人、目を離すなとまるで縁が子どもかのように言ってくる。
これでも成人してるのに……
頰を膨らませる縁にガンズは笑って小突いてくる。
「お前さんは何しでかすか分かんねぇからな。止めれねぇんだから隣で誰かが見てるぐらいでいいんだよ」
「日頃の行いだな」
セインまでうんうんと頷き納得しているが、言われた本人は納得できない。
縁には些細なことでも、人によっては捉え方が違うのだと分かっていても複雑である。
「それならランだって同じじゃないですか。私ばかり言われるのはーー」
「エニシくーーん!大丈夫かーー!」
「ん?」
「あ?」
「え?」
「……なんだ?」
隣家にまで響くんじゃないかというくらいの大声は玄関の方から聞こえたようで、何事かと皆身構える。
なんだか聞いたことがある声なんですが……
「エニシくん!エニシくん!」
「……おい、アレお前さんの知り合いか?」
バンバンと戸を打ち鳴らす音にガンズが縁に尋ねるが、何とも嫌な予感がし答えるのを躊躇ってしまう。
「あれ、サブギルドマスターじゃないか?」
やはり耳がいいセインはいち早く気付いたようで、どうする?と縁を見てくる。
何しにここまで来たんでしょうか……
この状況で逃げるのは難しいだろうと諦めると溜息をつきつつ玄関に向かう。
「大きな声で叫ぶのはやめて下さい。ご近所迷惑です」
「エニシくん!!わっ」
抱きつこうとしてきたため反射的に避ければ、見事に顔から地面にダイブしていた。
痛む顔を撫でつつ立とうとしたため手を貸してやる。
「お腹に響くので叫ぶのはやめて下さい。それと、いったい何事ですか?」
あまりの大声にランたちに迷惑をかけてしまったではないかと怒れば、さすがにマズかったと思ったのか素直に謝ってくる。
「ご、ごめんね。エニシくんがこの酒造に入っていったのを見たって人がいてね。妊娠中にお酒はダメでしょ?だから早く止めないと思ってね」
それぐらい縁にだって分かっている。
それ以前に全く飲めないのだが。
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