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大袈裟な
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その日は午後からまたエバンスの所にお邪魔していた。
というのも昼食を食べ終え一旦部屋に戻ろうとしていた所を拉致されたのだ。
無言で腕を掴まれたと思えば驚く縁を無視し作業部屋に連れていかれた。
「座れ」
言われるまま用意された椅子に座れば小刀を手に近寄ってくるエバンス。
あれ?私殺されちゃいます?
仲良しとは言えずともそれなりに話せる仲になったと思っていたのだが。
「何か怒らせるようなことしてしまいましたかね?」
「?」
首を傾げる縁にエバンスも不思議そうだ。
「それでエバンスさんは何を切ろうとしているのでしょうか?」
縁の首でないことを切に願う。
「髪」
エバンスは何を当たり前のことをと言いたそうだったが、分かるわけがない!
……ん?髪?…あっ
先日エルによって少しではあるが切られたのを思い出したのだ。
切られたというより刃があたったという感じではあったが。
「もしかして短いとこがありました?なるほど、それで切ろうとしてくれてたんですね。エバンスさんなら器用なので安心してお任せできます」
理由が分かれば話しは早かった。
どうぞどうぞと頭を差し出せば、どれくらいまで切るか聞かれたためならばとバッサリ切ってもらうことにした。
「暑いのでバッサリお願いします。とくに思い入れもありませんし、男なので伸ばしてもあれでしょう」
角刈りとは言わずともある程度までなら大丈夫だと伝えれば、分かった頷くエバンスに全てを任せた。
まさかそのせいで総攻めに合うとも思わず。
「終了」
30分程かけ丁寧にカットしてくれたエバンスに礼を言えば、切った髪をもらってもいいかと聞かれた。
「構いませんけど……まさか私、呪われたりしませんよね?」
髪を使う理由が呪いの藁人形しか思いつかなかった縁であった。
「?。言っている意味が分からないが、スノーの装身具に使いたい」
「私の髪をですか?」
頷くエバンスにふざけている様子はないため本気なのだろうが、髪など使う理由が分からなかった。
「アンタの髪は綺麗だし長さもある。編み込めば使える」
使えるのは分かったがそれが何故縁の髪である必要があるのか分からなかった。
「まぁ……よく分かりませんが、エバンスさんが使いたいと言うのであれば使って下さい。私が持っていても捨てるしか使い道がありませんから」
髪など切ったら捨てるものとしか思ってなかったが、エバンスが使えるというのであれば使えるのであろう。
縁にもなんら問題はないので好きに使って下さいと託したのであった。
「………」
「………ママ?」
「そうですけど…そんな顔も分からなくなるほど私は髪の毛の印象が強いんでしょうか」
確かに肩下まであった髪をバッサリ頸が出るほどまで切ったが別人に見えるほどではないと思う。
「アレン?どうーーひっ」
縁を見つめたまま固まるアレンたちに話しかけようとすれば、凄い勢いで近づいてきたアレンによって頭をガシッと掴まれた。
「なんだコレはっ!!」
なんだコレって……頭ですけど。
まさかアレンには尻にでも見えているのだろうか。
そうならもはや病気だろうが。
「髪…あの髪が……なんでこんなことになってんだっ!」
うるさい。
切ったことに驚いているのは分かったが、耳元で大音量でで叫ぶのはやめてほしい。
「アレンうるさいです。髪は先程エバンスさんに切ってもらいました」
少しは男らしく見えるかと嬉しそうに報告すれば、アレンは今にも泣きそうな顔で叫んできた。
「バカっ!なんで切っちゃうんだよ、俺の…俺のお気に入りの髪が……」
いつの間に縁の髪はアレンのものになったのだろう。
「髪なんてどうでもいいでしょう。長くても邪魔になるだけです」
何故そこまで嘆くのかが分からない。
アレンだって短いのだから縁に何の問題があるというのだろうか。
「アズどうですか?」
「ママきれい」
「………ありがとうございます」
出来ればカッコイイと言って欲しかったのだが。
未だ嘆くアレンは放っておき、アズを抱えると部屋へ向かおうとして今度はセインとエルに捕まった。
縁を見てかたや固まるセインと、かたや顔を青くするエル。
エルに関しては何故そんなことになったのか心当たりがあったからだろうが、それはきっかけにすぎずここまで切ることを決めたのは縁だ。
「オレ………」
「縁……その頭……」
2人とも何か言おうとして言葉が出ないのか黙ってしまう。
アレンもそうだがみんな気にし過ぎではないだろうか。
生きていれば髪ぐらい嫌でも伸びてくるのだから、今少し切ったくらいで一生生えてこないわけではないのに。
これが薄毛が悩みの50代なら話しは別だろうが。
気にするなとエルの頭を撫でてやっていれば、後ろからその腕を掴む手があった。
「ジーク」
「お前……なんで切っちまうんだよ。まぁそれも似合ってるけどな」
「ありがとうございます。少しは男らしくなりましたかね?」
「「「………」」」
ちょっとなんでみんな黙るんですか。
不服そうな縁だが事実を言わないジークたちが大人だった。
実際髪を切った縁は長い時と比べ大人っぽくアズが言っていた通り綺麗なのだ。
今まではどこか幼さが残る可愛さがあったが、短い今は顔の輪郭がはっきりとし小さな顔が尚のこと強調されている。
「まぁ大人っぽくなったんじゃねぇか」
番としては綺麗になった縁を周りに見せたくはないジークだが、拗ねる縁にそう言って褒めてやれば嬉しそうに笑っていた。
「アズもきる?」
「いいえ。私は暑くて切っただけなのでアズが切りたいと思うまではそのままでいいですよ」
縁が切ったからといってアズまで切る必要はない。
「それに私はアズの髪が好きですからもったいないです」
「アズきらない」
ママが好きならそれでいいと笑うアズに、その隣では俺たちも縁の髪が好きだったのにと恨みがましく見てくる番たちの姿があったが見なかったことにするのだった。
たかが髪、されど髪なのだ。
というのも昼食を食べ終え一旦部屋に戻ろうとしていた所を拉致されたのだ。
無言で腕を掴まれたと思えば驚く縁を無視し作業部屋に連れていかれた。
「座れ」
言われるまま用意された椅子に座れば小刀を手に近寄ってくるエバンス。
あれ?私殺されちゃいます?
仲良しとは言えずともそれなりに話せる仲になったと思っていたのだが。
「何か怒らせるようなことしてしまいましたかね?」
「?」
首を傾げる縁にエバンスも不思議そうだ。
「それでエバンスさんは何を切ろうとしているのでしょうか?」
縁の首でないことを切に願う。
「髪」
エバンスは何を当たり前のことをと言いたそうだったが、分かるわけがない!
……ん?髪?…あっ
先日エルによって少しではあるが切られたのを思い出したのだ。
切られたというより刃があたったという感じではあったが。
「もしかして短いとこがありました?なるほど、それで切ろうとしてくれてたんですね。エバンスさんなら器用なので安心してお任せできます」
理由が分かれば話しは早かった。
どうぞどうぞと頭を差し出せば、どれくらいまで切るか聞かれたためならばとバッサリ切ってもらうことにした。
「暑いのでバッサリお願いします。とくに思い入れもありませんし、男なので伸ばしてもあれでしょう」
角刈りとは言わずともある程度までなら大丈夫だと伝えれば、分かった頷くエバンスに全てを任せた。
まさかそのせいで総攻めに合うとも思わず。
「終了」
30分程かけ丁寧にカットしてくれたエバンスに礼を言えば、切った髪をもらってもいいかと聞かれた。
「構いませんけど……まさか私、呪われたりしませんよね?」
髪を使う理由が呪いの藁人形しか思いつかなかった縁であった。
「?。言っている意味が分からないが、スノーの装身具に使いたい」
「私の髪をですか?」
頷くエバンスにふざけている様子はないため本気なのだろうが、髪など使う理由が分からなかった。
「アンタの髪は綺麗だし長さもある。編み込めば使える」
使えるのは分かったがそれが何故縁の髪である必要があるのか分からなかった。
「まぁ……よく分かりませんが、エバンスさんが使いたいと言うのであれば使って下さい。私が持っていても捨てるしか使い道がありませんから」
髪など切ったら捨てるものとしか思ってなかったが、エバンスが使えるというのであれば使えるのであろう。
縁にもなんら問題はないので好きに使って下さいと託したのであった。
「………」
「………ママ?」
「そうですけど…そんな顔も分からなくなるほど私は髪の毛の印象が強いんでしょうか」
確かに肩下まであった髪をバッサリ頸が出るほどまで切ったが別人に見えるほどではないと思う。
「アレン?どうーーひっ」
縁を見つめたまま固まるアレンたちに話しかけようとすれば、凄い勢いで近づいてきたアレンによって頭をガシッと掴まれた。
「なんだコレはっ!!」
なんだコレって……頭ですけど。
まさかアレンには尻にでも見えているのだろうか。
そうならもはや病気だろうが。
「髪…あの髪が……なんでこんなことになってんだっ!」
うるさい。
切ったことに驚いているのは分かったが、耳元で大音量でで叫ぶのはやめてほしい。
「アレンうるさいです。髪は先程エバンスさんに切ってもらいました」
少しは男らしく見えるかと嬉しそうに報告すれば、アレンは今にも泣きそうな顔で叫んできた。
「バカっ!なんで切っちゃうんだよ、俺の…俺のお気に入りの髪が……」
いつの間に縁の髪はアレンのものになったのだろう。
「髪なんてどうでもいいでしょう。長くても邪魔になるだけです」
何故そこまで嘆くのかが分からない。
アレンだって短いのだから縁に何の問題があるというのだろうか。
「アズどうですか?」
「ママきれい」
「………ありがとうございます」
出来ればカッコイイと言って欲しかったのだが。
未だ嘆くアレンは放っておき、アズを抱えると部屋へ向かおうとして今度はセインとエルに捕まった。
縁を見てかたや固まるセインと、かたや顔を青くするエル。
エルに関しては何故そんなことになったのか心当たりがあったからだろうが、それはきっかけにすぎずここまで切ることを決めたのは縁だ。
「オレ………」
「縁……その頭……」
2人とも何か言おうとして言葉が出ないのか黙ってしまう。
アレンもそうだがみんな気にし過ぎではないだろうか。
生きていれば髪ぐらい嫌でも伸びてくるのだから、今少し切ったくらいで一生生えてこないわけではないのに。
これが薄毛が悩みの50代なら話しは別だろうが。
気にするなとエルの頭を撫でてやっていれば、後ろからその腕を掴む手があった。
「ジーク」
「お前……なんで切っちまうんだよ。まぁそれも似合ってるけどな」
「ありがとうございます。少しは男らしくなりましたかね?」
「「「………」」」
ちょっとなんでみんな黙るんですか。
不服そうな縁だが事実を言わないジークたちが大人だった。
実際髪を切った縁は長い時と比べ大人っぽくアズが言っていた通り綺麗なのだ。
今まではどこか幼さが残る可愛さがあったが、短い今は顔の輪郭がはっきりとし小さな顔が尚のこと強調されている。
「まぁ大人っぽくなったんじゃねぇか」
番としては綺麗になった縁を周りに見せたくはないジークだが、拗ねる縁にそう言って褒めてやれば嬉しそうに笑っていた。
「アズもきる?」
「いいえ。私は暑くて切っただけなのでアズが切りたいと思うまではそのままでいいですよ」
縁が切ったからといってアズまで切る必要はない。
「それに私はアズの髪が好きですからもったいないです」
「アズきらない」
ママが好きならそれでいいと笑うアズに、その隣では俺たちも縁の髪が好きだったのにと恨みがましく見てくる番たちの姿があったが見なかったことにするのだった。
たかが髪、されど髪なのだ。
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