79 / 475
バカ
しおりを挟む
「魔族の方って苦手な食べ物あったりするんでしょうか?」
そう聞かれた瞬間思ったのが「こいつバカなのか?」だった。
誘拐犯にそんな聞くバカがいるだろうか?
あぁ、ここにいたな。
攫われたと理解しているくせに泣きも叫びもせず、魔族と知ってからもこの反応だ。
うるさくないのは助かるが、今までにない反応に苛立つ。
「なに?アンタそんなにオレらのことバカにしてんの?殺すよ?」
さっきから何だと言うんだ。
苦手なものはなんだの、危険なものはなんだとそれをいま聞いてくる意味が分からない。
知ったところでどうなると言うのか。
「何を怒られているか分かりませんが、先程話した私の子どもが魔族なので何か注意すべきことがあれば教えてもらえたらなと思ったのですが……」
「はぁ?」
魔族?子どもが?
何言ってんだコイツ。
「えーと、私も知らずに引き取ったんですが歳が歳なので子育てもしたことがなく、誰かに聞こうにも知っていそうな知り合いもいないので出来れば教えていただければと」
引き取った?知らずに?
聞く人間がいない?当たり前だ。
そんなこと教えてくれる人間いるわけない。
「アンタさ、それ本気で聞いてんの?」
「え?冗談で聞く人いるんですか?」
「………」
んなヤツいるわけねぇだろ!
あぁイライラするっ。
会話してるようで話しが噛み合っていない。
「今この状況でそんなこと考えてるバカ見たことねぇし、そんなこと聞いてくるバカ聞いたことねぇし、そもそもそんなことオレに聞くアンタはバカでかしねぇよ」
「……すいません」
なんでそこで落ち込むんだよ!
さっきまでバカみたいにバカなこと聞いてきた勢いはどこにいったんだよ。
「はぁー、アンタそのガキどうする気なの?」
「どうする?……別に、何も?元気に育ってくれればなぁと」
それが本心なのか本当に不思議な顔をしている。
元気にねぇ……
「……名前」
「名前?あぁ子どもですか?アズライトと言うんですが私はアズとよーー」
「はぁぁ!?マジかよ!」
聞き覚えのある名にまさかと思った。
「目は赤か?髪は?歳は?」
確かめずにはいられなかった。
もしかしたらーー
「目は赤ですね。髪は白で、歳ははっきりとは分かりませんが3歳ぐらいだとーー」
「マジか!?今どこ!」
見つけた!
今すぐに会わなければ。
逸る気持ちに男を急かすが、不思議そうに首を傾げている。
早く教えろよ!
苛立ち懐からナイフを取り出すと男を押し倒し馬乗りになる。
顔のすぐ横にナイフを突き立てれば驚いたような表情に肩まで伸びていた髪が数本パラパラと散った。
「早くっ、言えよ!」
「何をだ?」
「あ?」
誰の声だと振り向こうとして、その瞬間弾き飛ばされた。
壁に叩きつけられるほどの威力と脇腹の痛みに蹴り飛ばされたのは分かったがあまりの痛みに起き上がることができない。
「セイン、アレン、ジーク!」
嬉しそうなその声になんとか顔を起こせば、見知らぬ大柄の獣人が3人立っていた。
興奮するあまり警戒を怠っていた。
後ろには倒れた仲間たちの姿に負けを悟る。
だがーー
「動くなっ、コイツがどうなってもいいのか?」
気力だけで立ち上がると男を人質に獣人たちの動きを止める。
「「「縁っ!?」」」
睨むようにこちらを見てくる獣人たちをナイフを首に当てることで押しとどめる。
仲間はやられたようだが全てが終わったわけではない。
まだ聞き出したいこともあると男を引きずりながら入り口に向かうと叫ぶような声に動きを止めた。
「ママっ!」
「アズ!?なんでここに!」
一番大きな獣人の背中から現れたその姿に息が止まった。
いた!見つけた!
「アズライト!」
もういらないと男を突き飛ばすとアズライトに駆け寄る。
「ママっ、こないで!」
「ぐっ!」
その途端激しい魔力の塊に吹き飛ばされ床に押し付けてられる。
徐々に重くなるそれに膝もついていることができず、崩れ落ちればさらに威力が強くなる。
「アズ!やめなさい!」
「やだ!ママのこといじめた!」
自分の知るその声は明らかにこちらを敵視しており、やっと会えた喜びが萎んでいく。
「アズっ!!」
「なんで?ソイツママのこといじめたもん。いじめはダメってママいったもん!」
潰される身体にすでに力は入らず意識も遠のいていく。
やっと会えたのな……
「アズお願いだからやめて下さい。私は大丈夫だから。ね?ほらおいで」
「ママっ!」
パタパタと走りぬける音とともにそれまでの全身への圧迫感が消えた。
急激に入ってくる空気に咽せ咳き込んでいれば、再び床に押し付けてられる。
「くそっ、離しやがれ!」
「バカか?離すわけねぇだろ」
「楽に死ねると思うなよ」
「狙う相手を間違えたな」
冷たく見下ろす3人に睨み返すが明らかに結果は目に見えている。
それでも諦めきれず力の限り暴れるが多勢に無勢。
体格も力も劣る自分が3人に勝てるわけがない。
「くそっ!」
やっと会えたのに。
「アレンやめて下さい」
「なんで!」
「その方はたぶんアズのお兄さんです。ですよね?」
アズライトを抱きしめ、にこりと微笑む姿に驚きを隠せなかった。
そう聞かれた瞬間思ったのが「こいつバカなのか?」だった。
誘拐犯にそんな聞くバカがいるだろうか?
あぁ、ここにいたな。
攫われたと理解しているくせに泣きも叫びもせず、魔族と知ってからもこの反応だ。
うるさくないのは助かるが、今までにない反応に苛立つ。
「なに?アンタそんなにオレらのことバカにしてんの?殺すよ?」
さっきから何だと言うんだ。
苦手なものはなんだの、危険なものはなんだとそれをいま聞いてくる意味が分からない。
知ったところでどうなると言うのか。
「何を怒られているか分かりませんが、先程話した私の子どもが魔族なので何か注意すべきことがあれば教えてもらえたらなと思ったのですが……」
「はぁ?」
魔族?子どもが?
何言ってんだコイツ。
「えーと、私も知らずに引き取ったんですが歳が歳なので子育てもしたことがなく、誰かに聞こうにも知っていそうな知り合いもいないので出来れば教えていただければと」
引き取った?知らずに?
聞く人間がいない?当たり前だ。
そんなこと教えてくれる人間いるわけない。
「アンタさ、それ本気で聞いてんの?」
「え?冗談で聞く人いるんですか?」
「………」
んなヤツいるわけねぇだろ!
あぁイライラするっ。
会話してるようで話しが噛み合っていない。
「今この状況でそんなこと考えてるバカ見たことねぇし、そんなこと聞いてくるバカ聞いたことねぇし、そもそもそんなことオレに聞くアンタはバカでかしねぇよ」
「……すいません」
なんでそこで落ち込むんだよ!
さっきまでバカみたいにバカなこと聞いてきた勢いはどこにいったんだよ。
「はぁー、アンタそのガキどうする気なの?」
「どうする?……別に、何も?元気に育ってくれればなぁと」
それが本心なのか本当に不思議な顔をしている。
元気にねぇ……
「……名前」
「名前?あぁ子どもですか?アズライトと言うんですが私はアズとよーー」
「はぁぁ!?マジかよ!」
聞き覚えのある名にまさかと思った。
「目は赤か?髪は?歳は?」
確かめずにはいられなかった。
もしかしたらーー
「目は赤ですね。髪は白で、歳ははっきりとは分かりませんが3歳ぐらいだとーー」
「マジか!?今どこ!」
見つけた!
今すぐに会わなければ。
逸る気持ちに男を急かすが、不思議そうに首を傾げている。
早く教えろよ!
苛立ち懐からナイフを取り出すと男を押し倒し馬乗りになる。
顔のすぐ横にナイフを突き立てれば驚いたような表情に肩まで伸びていた髪が数本パラパラと散った。
「早くっ、言えよ!」
「何をだ?」
「あ?」
誰の声だと振り向こうとして、その瞬間弾き飛ばされた。
壁に叩きつけられるほどの威力と脇腹の痛みに蹴り飛ばされたのは分かったがあまりの痛みに起き上がることができない。
「セイン、アレン、ジーク!」
嬉しそうなその声になんとか顔を起こせば、見知らぬ大柄の獣人が3人立っていた。
興奮するあまり警戒を怠っていた。
後ろには倒れた仲間たちの姿に負けを悟る。
だがーー
「動くなっ、コイツがどうなってもいいのか?」
気力だけで立ち上がると男を人質に獣人たちの動きを止める。
「「「縁っ!?」」」
睨むようにこちらを見てくる獣人たちをナイフを首に当てることで押しとどめる。
仲間はやられたようだが全てが終わったわけではない。
まだ聞き出したいこともあると男を引きずりながら入り口に向かうと叫ぶような声に動きを止めた。
「ママっ!」
「アズ!?なんでここに!」
一番大きな獣人の背中から現れたその姿に息が止まった。
いた!見つけた!
「アズライト!」
もういらないと男を突き飛ばすとアズライトに駆け寄る。
「ママっ、こないで!」
「ぐっ!」
その途端激しい魔力の塊に吹き飛ばされ床に押し付けてられる。
徐々に重くなるそれに膝もついていることができず、崩れ落ちればさらに威力が強くなる。
「アズ!やめなさい!」
「やだ!ママのこといじめた!」
自分の知るその声は明らかにこちらを敵視しており、やっと会えた喜びが萎んでいく。
「アズっ!!」
「なんで?ソイツママのこといじめたもん。いじめはダメってママいったもん!」
潰される身体にすでに力は入らず意識も遠のいていく。
やっと会えたのな……
「アズお願いだからやめて下さい。私は大丈夫だから。ね?ほらおいで」
「ママっ!」
パタパタと走りぬける音とともにそれまでの全身への圧迫感が消えた。
急激に入ってくる空気に咽せ咳き込んでいれば、再び床に押し付けてられる。
「くそっ、離しやがれ!」
「バカか?離すわけねぇだろ」
「楽に死ねると思うなよ」
「狙う相手を間違えたな」
冷たく見下ろす3人に睨み返すが明らかに結果は目に見えている。
それでも諦めきれず力の限り暴れるが多勢に無勢。
体格も力も劣る自分が3人に勝てるわけがない。
「くそっ!」
やっと会えたのに。
「アレンやめて下さい」
「なんで!」
「その方はたぶんアズのお兄さんです。ですよね?」
アズライトを抱きしめ、にこりと微笑む姿に驚きを隠せなかった。
42
お気に入りに追加
3,726
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる