二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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おじいちゃんはマイペース

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 アルくんが言うには縁には2つの道があるらしい。
 いつか分からないが輪廻の中で縁としてではなく別人として生まれ変わる輪廻転生。
 もう一つは縁がいた世界とは全く違う世界で縁が縁として生きられる異世界転生。
 神様なら勝手に決めることもできるだろうに縁の意見を聞いてくるということは、今回のことはそれだけ重大案件らしい。
 
 「ーでは、輪廻転生でお願い「なんで!?」し……」

 なんで?
 選べと言われたから選んだのだが駄目だったのだろうか。
 
 「駄目、でしたか?」

 「ヤダ!ダメ!」

 ヤダときたか。
 ヤダということはそうしてほしくないということであろうが、なぜ?

 ゴンっ!!

 その瞬間もの凄い音と共に膝が軽くなった。
 見ればすぐ横で倒れている少年の姿が。

 「もう少し穏便にいきましょう?」

 そんなに怒ってやるなと頭を撫でてやれば、アルもそれ以上はやめたようだ。

 「そのバカのことは気にしないで下さい。しかし理由をお聞きしても?」

 「うーん、理由と言われてもそもそもそれしか選択肢がないというか……」

 アルは選んでくれと言っていたが、選ぶもなにもそもそも選ぶことができない気がする。

 「なぜですか?」

 「いや、私68歳ですよ?もうすぐ70歳にもなろうとしているおじいちゃんが今さら他の世界に行ってもすぐ死んじゃいますよ」

 「………」

 そう。縁が縁として転生したところできっと長生きはできないだろう。
 すぐ死ぬだろうことが分かっていて異世界へ転生しようとは思わない。

 「長生きしたとしても新しい世界でちゃんとやっていける保証もないですし、苦労してまで行こうとは思わないですよ」

  「縁さんは…何というか、現実的?なんですね」

 呆れているのか、予想外の答えに混乱しているのか戸惑ったようなアルに笑ってしまった。
 今までも何度か異世界へ送った人間がいたようだが、皆嬉々として行っていたらしい。
 もっとも転生した彼らは年若くして行ったらしいので、そういう意味でも縁は例外らしいが。
 
 「ーでは、縁さんは本当に輪廻転「ヤダ!ヤダヤダヤダ!」生で…ハァ~、あなたはまたそんな我儘を…」
 
 復活したらしい神さまは大音量で叫ぶと再び縁の膝に戻ってきた。
 なぜまた膝?隣に席も空いてるのだが。
 そんな縁な疑問なんておかまいなしに、おじいちゃんの膝の上が気に入ったらしい神さまは「ヤダヤダ」言いながら縁に抱きついてくる。

 「ヤダヤダヤダッ!縁さんと会えなくなるのヤダッ!」

 まるで駄々っ子のようだ。
 孫が懐いてくれているようで可愛いとも思うが、神さまとしてはこれでいいのだろうか?

 「あなたの意見なんて聞いてないんです。縁さんが自分で決めることなん「ヤダッ!」です」

 「………」
 「………」

 話しは平行線のままだ。
 縁に抱きついて泣く神さまと鬼の形相でその神さまを引き剥がそうとするアル。
 アルは縁の味方のようだが、最終決定は神さまにあるため話しが纏まらない。
 どうしたものかと思っているとーー

 「そうだ!転生なんてしなくていいじゃん。このままここで僕の助手でもしてー」

 「ダメです」
 「ダメでしょう」 

 思わず声が重なった。
 ひらめいた!!みたいないい笑顔だが、それはダメだろう。
 
 「これだけ懐いてくれるは嬉しいですが、あなたにはアルくんがいるでしょう?それに私はこの世界の者ではないー」

 「だったら!アルとかわればー」

 パチン。

 「………」
 「………」

 「冗談でもそんなこと言ってはいけません」

 優しく、だが両手で頰を挟むように軽く叩いてやれば驚いて固まる。
 言い返そうと口を開いたままのアルも驚いたように縁を見ている。

 「……なんで?」

 「分かりませんか?あなたのためにアルくんはこんなにも頑張ってくれているのに?」

 すぐに手がでるのは良いとは言えないが、それぐらいでもしないと伝わらなかったのだろう。
 まだ少ししかか一緒にいないがアルはアルなりに頑張って尽くそうとしているのは分かる。
 それにただ苛ついただけで誰かに当たるようには思えない。

 「…でも…いつも僕のこと怒る」

 「何の理由もなく?アルくんはちゃんと理由を言ってませんでしたか?」

 アルが怒るというがきっとなにか理由があったはずだ。
 主に仕事をしなさいとか、仕事をサボるなとか、あとさったと仕事しろ!とか。
 言われたことに思い当たったのか顔を隠すように俯いてしまう。

 「仕事仕事で疲れて息抜きしたい時もあるでしょう。それはわかります。その気持ちはわかりますがそれが頻繁にあってはアルくんだって疲れてしまいますよ。あなたの穴を埋めてくれてるのはアルくんなんです。あなたが間違えそうになった時アルくんは助けてくれませんでしたか?あなたが本気で助けを求めた時アルくんはそれを振りはらったりしましたか?」

 最初は驚きもしたが、上司のミスに一緒に謝罪し土下座までしてくれる部下はきっとそういないだろう。
 それもアルへの甘えがあってなのだから、無意識に頼ってしまってるアルを自分勝手な理由で交代させるのは酷いと思う。

 「アルくんが怒るのはあなたにしっかりしてほしいと、立派な神さまになってほしいと思っているがゆえのことでしょう。ね?」

 「……はい」

  いまだ呆然とこちらを向くアルを見れば、小さいながらも頷き答える。
 
 「アルくんも言葉が少ないとは思いますがあなたが嫌いで怒ってるわけではないんです。本当に嫌っているなら怒ることすらしないでしょう。もっと事務的に、もしくは無視すらしてますよ。だからもうちょっとアルくんを大切にしてあげてください」

 「………」
 「………」

 この世界がどうなのか分からないが、せっかく思い合っているのであれば一緒に頑張っていって欲しいと思う。
 神さまとはいえ一人はきっと寂しい。

 「アルくんのこと好きですか?」

  言葉に出すのはまだ恥ずかしいのだろう。腕の中で小さく頷く姿に褒めるように背を撫でてやった。

 「どっちが神かわかりませんね」

 言葉とは反対に声は優しく、表情もどこか気が抜けたように穏やかだ。

 「よければ、私の今までの頑張りをわかったくれた縁さんに1つお願いがあるんですが、叶えてくれますか?」

 初めてみたアルの笑顔に縁は頷くしかなかった。

 
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