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第3章
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「お前はもう少しサマンサを見習ったらどうなんだ?」
「まぁ!そんな、恥ずかしいですわ~」
「……………」
今日も今日とて頭がお花畑のバカとアホは元気らしい。
世の中には色んなバカやアホがいるが、こいつらが一番厄介な分類だと思う。
勉強が出来ない、空気を読まない、人の話しを聞かないなどあれど全てのバカというバカを詰め込むと(?)こいつらが出来上がるのはないかと思う。
「もうホームルームが始まりますので私はこれで」
「待て!話しは終わっていないぞ!聞いたぞ、今日は母上とお茶会らしいな。その時にサマンサも連れていって彼女を母上に紹介してこい」
「………ご自身でなされば宜しいのでは?」
まず会ってもらえないと思うが。
大体陛下や王妃様に呼ばれてもおらず、王子の婚約者でもない彼女がどうやって城へ上がれると思うのだ。
そんなこと勝手にすればいくら貴族といえどすぐさま捕まり牢獄送りだ。
それを婚約者とはいえ侯爵令嬢であるアメリアに言うぐらいなら自分で王妃様にお願いでも何でもすればいいだろう。
仮にも自分は王子だと言い張るぐらいならば。
「そんなこと私が考えないとでも思ったのか!母上には申し上げたが断られたからお前に言っているに決まっているだろう!」
いや、決まってないが。
というか本当に言ったのか。バカだな。
「ちなみに何と王妃様に申し上げたので?」
「ハッ!お前などより数倍素晴らしい女性がいるから是非とも会ってこの婚約を見直して欲しいとな」
すっごいなぁ。すっごくーーバカ。
バカは話しているだけでもこうして相手の精神も体力も消耗させていくのだから見事なものである。
まだ来て数分だが帰りたくなってきた。
「そうですか。ですが私如きが出来ることは御座いません。ですので殿下自らもう一度お話しなった方が宜しいかと思いますわーーーいっ」
そんなこと知ったことではないと踵を返そうとするが、許さないとばかりに手首を掴まれ痛みに声を上げる。
このバカっ、思いっきり掴んでくれたわね!
声を上げたアメリアに驚き流石にすぐさま手を離してくれたが、細く白いアメリアの肌にはバカの手の跡がくっきりと残ってしまっている。
「お、お前が逃げようとするからだ!」
逃げてなどいないし、自分のことは自分でしろと言っただけだ。
婚約破棄など望むところだが、まるでアメリアが悪いと言われるのは納得がいかない。
「お前がーー」
「これは何の騒ぎだ?」
「あ、兄上っ」
「……シリウス王太子殿下」
振り向けば眉間にシワを寄せ険しい顔付きのシリウス殿下がこちらを見ていた。
よく見ればその背後にはサハラ王子がアメリアに向かって手を振っているのが見えた。
きっと彼が揉めるアメリアたちのために殿下を呼びに行ってくれたのだろう。
「これはどういうことだ?」
「あ、あの、これはですね……」
「きゃっ、もしかしてシリウス様ですかぁ~」
この女は未だ空気が読めないらしい。
ステキっ!などと言いながらシリウス殿下に擦り寄ろうとしーーー
「君は誰だ?名を名乗りもせず、挨拶もなく近寄ってくる。私が誰か分かっていながらその態度は随分と頭が緩いらしいな」
「なっ!いくらなんでもそんな言い方ひどいですぅ」
お前の頭が一番酷いわ!
物腰柔らかいリアン第2王子とは違い、次期国王たるシリウス殿下はその容姿に違わずかなり厳しい性格なのだ。
アホ女を見下ろす目はとても冷たく、今にも射殺しそうである。
「君の話し方はとても不愉快だ。弟も役には立たん様子だな……アメリア侯爵令嬢、申し訳ないが状況の説明を頼む」
確かにこの場でまともに話せるのは自分しかいないだろうと諦めると、先程の怒りもあり包み隠さず話していく。
「アーキル殿下よりそのご令嬢を今日の王妃様とのお茶会に参加させて欲しいとのご命令でしたが、私には力不足故お断り申し上げました」
せいぜい怒られるがいい。
「で、それに怒り婚約者でもあるアメリア嬢に手を上げたと?愚かにも程があるな」
そうだ、もっと言ってやってくれ!と心の中でシリウス殿下を応援しておく。
「そんなぁ~、アーキル様は悪くありませんよぉ。アメリ様がぁ、できないとか言って断るからぁ。アーキル様がとられると思ってそんなこというんですよぉ。自分がアーキル様に嫌われてるからってそんなーー」
「黙れ。私は君に話す許可を与えてはいない」
今まで流していたアメリアとは違い、シリウス殿下はそんなこと許しはしない。
殿下がふっと手を動かせばどこから現れたのか、いつの間にか取り囲んでいた兵士たちによりアホ女は叫びながら連行されていくのだった。
「………サマンサ」
名残惜しそうに呟くバカには呆れたものである。
シリウス殿下も同じ気持ちなのだろう、バカを見る目が変わらず冷ややかだ。
「今日のことは私から陛下へ報告しておく。アーキル、お前は暫く自室で反省しろ。アメリア嬢は大変申し訳なかった。怪我もあるだろうから今日はもう帰って体を休めなさい。母上には言っておく」
「ありがとうございます」
怪我と言っても手首を少し痛めただけなので大丈夫なのだが、折角のお言葉なので休ませてもらうことにした。
「………いつもすまない。ありがとう」
「え?」
去り際そう言って優しく頭を撫でてくれたシリウス殿下に驚くアメリアだった。
「まぁ!そんな、恥ずかしいですわ~」
「……………」
今日も今日とて頭がお花畑のバカとアホは元気らしい。
世の中には色んなバカやアホがいるが、こいつらが一番厄介な分類だと思う。
勉強が出来ない、空気を読まない、人の話しを聞かないなどあれど全てのバカというバカを詰め込むと(?)こいつらが出来上がるのはないかと思う。
「もうホームルームが始まりますので私はこれで」
「待て!話しは終わっていないぞ!聞いたぞ、今日は母上とお茶会らしいな。その時にサマンサも連れていって彼女を母上に紹介してこい」
「………ご自身でなされば宜しいのでは?」
まず会ってもらえないと思うが。
大体陛下や王妃様に呼ばれてもおらず、王子の婚約者でもない彼女がどうやって城へ上がれると思うのだ。
そんなこと勝手にすればいくら貴族といえどすぐさま捕まり牢獄送りだ。
それを婚約者とはいえ侯爵令嬢であるアメリアに言うぐらいなら自分で王妃様にお願いでも何でもすればいいだろう。
仮にも自分は王子だと言い張るぐらいならば。
「そんなこと私が考えないとでも思ったのか!母上には申し上げたが断られたからお前に言っているに決まっているだろう!」
いや、決まってないが。
というか本当に言ったのか。バカだな。
「ちなみに何と王妃様に申し上げたので?」
「ハッ!お前などより数倍素晴らしい女性がいるから是非とも会ってこの婚約を見直して欲しいとな」
すっごいなぁ。すっごくーーバカ。
バカは話しているだけでもこうして相手の精神も体力も消耗させていくのだから見事なものである。
まだ来て数分だが帰りたくなってきた。
「そうですか。ですが私如きが出来ることは御座いません。ですので殿下自らもう一度お話しなった方が宜しいかと思いますわーーーいっ」
そんなこと知ったことではないと踵を返そうとするが、許さないとばかりに手首を掴まれ痛みに声を上げる。
このバカっ、思いっきり掴んでくれたわね!
声を上げたアメリアに驚き流石にすぐさま手を離してくれたが、細く白いアメリアの肌にはバカの手の跡がくっきりと残ってしまっている。
「お、お前が逃げようとするからだ!」
逃げてなどいないし、自分のことは自分でしろと言っただけだ。
婚約破棄など望むところだが、まるでアメリアが悪いと言われるのは納得がいかない。
「お前がーー」
「これは何の騒ぎだ?」
「あ、兄上っ」
「……シリウス王太子殿下」
振り向けば眉間にシワを寄せ険しい顔付きのシリウス殿下がこちらを見ていた。
よく見ればその背後にはサハラ王子がアメリアに向かって手を振っているのが見えた。
きっと彼が揉めるアメリアたちのために殿下を呼びに行ってくれたのだろう。
「これはどういうことだ?」
「あ、あの、これはですね……」
「きゃっ、もしかしてシリウス様ですかぁ~」
この女は未だ空気が読めないらしい。
ステキっ!などと言いながらシリウス殿下に擦り寄ろうとしーーー
「君は誰だ?名を名乗りもせず、挨拶もなく近寄ってくる。私が誰か分かっていながらその態度は随分と頭が緩いらしいな」
「なっ!いくらなんでもそんな言い方ひどいですぅ」
お前の頭が一番酷いわ!
物腰柔らかいリアン第2王子とは違い、次期国王たるシリウス殿下はその容姿に違わずかなり厳しい性格なのだ。
アホ女を見下ろす目はとても冷たく、今にも射殺しそうである。
「君の話し方はとても不愉快だ。弟も役には立たん様子だな……アメリア侯爵令嬢、申し訳ないが状況の説明を頼む」
確かにこの場でまともに話せるのは自分しかいないだろうと諦めると、先程の怒りもあり包み隠さず話していく。
「アーキル殿下よりそのご令嬢を今日の王妃様とのお茶会に参加させて欲しいとのご命令でしたが、私には力不足故お断り申し上げました」
せいぜい怒られるがいい。
「で、それに怒り婚約者でもあるアメリア嬢に手を上げたと?愚かにも程があるな」
そうだ、もっと言ってやってくれ!と心の中でシリウス殿下を応援しておく。
「そんなぁ~、アーキル様は悪くありませんよぉ。アメリ様がぁ、できないとか言って断るからぁ。アーキル様がとられると思ってそんなこというんですよぉ。自分がアーキル様に嫌われてるからってそんなーー」
「黙れ。私は君に話す許可を与えてはいない」
今まで流していたアメリアとは違い、シリウス殿下はそんなこと許しはしない。
殿下がふっと手を動かせばどこから現れたのか、いつの間にか取り囲んでいた兵士たちによりアホ女は叫びながら連行されていくのだった。
「………サマンサ」
名残惜しそうに呟くバカには呆れたものである。
シリウス殿下も同じ気持ちなのだろう、バカを見る目が変わらず冷ややかだ。
「今日のことは私から陛下へ報告しておく。アーキル、お前は暫く自室で反省しろ。アメリア嬢は大変申し訳なかった。怪我もあるだろうから今日はもう帰って体を休めなさい。母上には言っておく」
「ありがとうございます」
怪我と言っても手首を少し痛めただけなので大丈夫なのだが、折角のお言葉なので休ませてもらうことにした。
「………いつもすまない。ありがとう」
「え?」
去り際そう言って優しく頭を撫でてくれたシリウス殿下に驚くアメリアだった。
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