神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

文字の大きさ
上 下
300 / 317
群雄進撃編

第299話 来島親子

しおりを挟む
江戸湾の入り口にあたる剱崎(つるぎさき)から小鋸山(このこぎりやま)を直線に結ぶ海上に、日ノ本艦隊戦艦『兵庫』『岡山』『和歌山』が等間隔で守り、周辺を重巡2・軽巡2・駆逐4がその外周を監視する。

「報告します!亜人艦隊が撤退を開始しました!」

見張り兵の報告に、日ノ本水軍長・来島通総(くるしま・みちふさ)は、小さく頷く。

「あい判った!逃げる奴らに駆逐艦2隻を付けて追跡させよ!」

命を受けた兵は礼を取り、モールス信号を送る為部屋を出る。

「父上!亜人共の海軍は、全然大したことありませんな!」

長男・『来島通則(くるしま・みちのり)』の言葉に、通総は目を瞑り、首を振る。

「油断は大敵ぞ!奴らの考えがよくわかっておらぬゆえ、警戒を厳にと全艦に伝えよ!」

「ハハッ!失礼致しました!」

通則はお辞儀をし、父の命を伝えるべく部屋を出る。

ひとりになった通総は考える。

(確かに通則の言う通り、奴らの攻撃は全く大したことがない)

(いくら奴らの主力が大阪付近に集中しているとはいえ、亜人国の連中はこれほどまでに海軍がおらんのか?)

現在、亜人連合の艦隊は『富士山丸』『咸臨丸』『昇平丸』の旧式戦艦三隻と重巡2隻・駆逐艦4隻で応戦していたが、初戦で旗艦『富士山丸』が大破し、そのまま戦線離脱。

更に、次男・『来島長親(くるしま・ながちか)』が率いる重巡4隻で付近の補給港を全て潰した為に、一度物資を消耗すると沼津まで撤退せざるを得なかった。

現在、厚木にある空軍部隊の活躍により、何とか敵部隊の地上・海上の進撃を拡げられずに済んでいる状況であった。

(奴らの飛行部隊は厄介だが、数が少ないうえにあちこちで起こっておる戦闘の火消しで、纏まった戦力運用が出来んのじゃろうて…)

また日ノ本の食料などの物資は、占拠した領地からの徴収や土佐からの定期的な物資供給で潤っており、現在も指揮が高いまま戦い続ける事ができた。

ただ一つ懸念点と言えば、亜人国の手ごたえの無さに、海兵たちの油断が蔓延していることである。

(うむ、これは信長公が言われた通り、意外と簡単に亜人国の制圧は可能なのかもしれん…)

通総がそう考え始めると同時に、入り口の扉がノックされた。

「失礼致します、司令官」

「おお長親、よく戻った!」

長親は近辺にいる身分の低いもの達を味方につけるべく、説得工作を行っていた。

「予定通り、我々日ノ本に協力したいと言うもの達が続出しております」

「奴隷制度は無くなったとはいえ、この国の身分差別は根強く、人間共が亜人を見下しているお陰で、不満を持つ者達が我々と手を結びたいようでござります」

これにより、江戸周辺のあちこちで一揆や打壊しが発生しており、日ノ本に対処するだけでなく、こちらにも手を回さなければならなくなっていた。

「しかし、この一揆を先導しておる『独眼竜』の奴らは大したものであるな」

「はい、彼には皆を引き付ける力があるようでございます」

長親の報告に、通総はポツリと呟く。

「ふむ、独眼竜殿も、後日その力が仇にならなければ良いのじゃがな…」

「?父上、何か申しましたか?」

「いや、何でもない」

「歳をとると、どうも独り言が増えていかんのう…」

「ははは、そのような冗談が言えるうちは、父上の衰えはまだまだ先の話でございますな」

父の言葉に、思わず笑う長親。

「それはそうと、報告がございます」

「報告?なんだ?」

通総の問いに、姿勢を正す長親。

「はい!総大将・宇喜多秀家様より、明日には敵城門に取り着くので、こちらに江戸城の攻略の助勢をとの事です」

長親の報告に、浮かない顔で軽く頷く通総。

「そうか、遂に江戸城の攻撃となったか…」

「何か懸念でもございますのでしょうか?」

心配する長親に、通総は首を振る。

「いや、何でもない」

「長親、明日の朝には江戸に向けて出港するぞ!」

「ハハッ!」

長親は一礼し、指令室である通総の部屋を出る。

(江戸城攻撃の話をした時、父上の顔色が変わった…)

(父上、何を隠しておられる?)

父の部屋を振り返り、長親は心の中で呟いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。

西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ? なぜです、お父様? 彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。 「じゃあ、家を出ていきます」

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……

こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...