神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第296話 吟子の双璧

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「えっ?私じゃなくて吟子の??」

思わず驚くピット。

「え?わ、私?」

焦る吟子。

「私ピット様の家臣なので、家臣の家臣になるのはどうなのかなーと…」

ピットと吟子の言葉に、後ろで控えていたルクシルと総司が説明する。

「吟子さん、別にあなたが家臣を持ってもいいのですよ?」

「現に清正公や官兵衛殿も、立派な家臣がいるだろう?」

「それでいいだろう?ピット」

「うん、私は異存ないよ」

ルクシルの言葉に、頷くビット。

「え~私家臣なんか持ったことないし…」

戸惑う吟子にピットは問いかける。

「私にも吟子の気持ちがわかるよ」

ピットの言葉を聞いて、顔を上げる吟子。

「そりゃ、突然自分を慕っているという理由で家臣にしてくれとか、家臣を持った経験なんてない吟子には、困るとしか言いようがないよね?」

「そ、そうなんです!」

ピットの言葉に、吟子は大きく頷く

「じゃあ、吟子は彼らが家臣になるのは嫌かい?」

「そ、そんな訳ではないです…」

「第一おじさん達が助けてくれたから、私は連れ去られずにここにいるわけだし…」

「ただ、私の家臣になってくれても、何をしてあげればいいのか分からなくて…」

吟子の言葉に、ピットは話す。

「彼らは長く生きてきた中で、もしかしたら初めて『本当に仕えたい』人に出会えたのかもしれない」

「わ、わたしがですか?」

驚きと恐縮が入り混じる吟子。

「うん、だからそんな気持ちを汲んであげれば、二人は必ず君の役に立ってくれると思うよ?」

ピットの言葉に続き、重秀と頼廉も再度願い出る。

「儂は吟子殿の片腕となり、頼廉と共に仕ることを願っておる次第にござる!」

「拙僧も、菩薩のごとき吟子殿を微力ながらお守り申し上げたく存じまする!」

「はわわわわ!そんな菩薩だなんて…」

頭を下げてお願いする二人に、吟子は恥ずかしながら恐縮する。

「…わ、わかりました」

「こんな私で良かったら、宜しくお願いします!」

そう言って頭を下げる吟子に、重秀と頼廉は片膝を付き、頭を下げる。

「「有難き幸せ!」」

吟子が二人を家臣と認めると同時に、天狗の二人の体が輝きだす。

「お、おい!この二人『進化』を始めたぞ!」

「どうして?この力は『ラビット家』だけのものではなかったの?」

その姿を見て驚く巴と小松だが、ピットはジャスティスより『吟子が新たな神の候補者』であることを聞いていた。

(そうか…吟子も私と同じ力を持ったのか)

そう考えていたこともあり、非戦闘員の吟子に二人の戦士が家臣になることは、むしろ願ってもない事だった。

進化を終えた二人の姿は完全な人型となり、30代のスラリとしたナイスミドルと、僧侶の服を着た屈強な出で立ちの男が現れる。

二人は再度吟子に挨拶する。

「我が主・吟子様、儂は前世において『雑賀衆』の棟梁を務めし者、『鈴木重秀』改め『雑賀孫一』にござりまする!」

「銃の腕前は戦国一と自負致しており候。ゆえに、必ずやお役に立ってみせ申す!」

「吟子様!拙僧は前世において『本願寺軍』の坊官を務めし者、『下間頼廉』にございまする!」

「戦と政(まつりごと)には、いささか自信がございますゆえ、何卒よろしくお願い申し上げまする!」

挨拶を終えた瞬間、何者かが高速で二人に襲い掛かる。

特攻服を着た巴が、頼廉の顔めがけて拳を叩きつけようとしたが、頼廉は座ったままの姿勢で、掌にてそれを受け止める。

「なんの冗談ですかな?巴殿!」

「へっ、やるじゃねぇか!」

一方、白の戦闘服を着た小松の薙刀の攻撃を、孫一は立ち上がり様にひらりと躱し、両手に持った短筒を小松の方へと向ける。

「…やりますわね、貴方!」

「な~に、小松殿が手を抜いていなければ分からなかったさ!」

4人は武器を収め、小松と巴はピットに謝罪する。

「ピット様、失礼致しました」

「こいつらが本当に吟子を守れるか、無礼を承知で試させて頂きました」

「それで…俺たちは合格かい?」

孫一の言葉に、巴と小松は頷く。

「まぁ、及第点だ!」

「吟子さんを頼みましたわよ!」

二人の言葉を聞き、ピットと吟子は声を掛ける。

「…と言う事です。孫一、頼廉、これからは主人である吟子をお願いします」

「よ、宜しくお願いします!」

「「ハハッ!我らが命に代えてお守りします!」」

「こ、言葉が重いです…」

こうして吟子の双璧・雑賀孫一と下間頼廉が、新たな家臣として加わった。

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