神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第295話 二人の敵将

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「吟子…おい吟子、吟子!!」

寝ている吟子を、誰かが一生懸命揺り起こす。

「この声は…巴ちゃん?」

「吟子―!!」

「!!」

怒鳴り声に近い巴の言葉で、慌てて目を覚ます吟子。

「バカヤロウ!!やっと目ぇ覚ましやがったな!心配かけやがって!」

怒って話す巴の瞳は、真っ赤になって濡れていた。

「あれ?巴ちゃん、泣いていたの?」

「バーロー!!ちょっと花粉症で、花粉が目に染みただけだ!!」

強がる巴に、小松が巴の肩に手を置き口を出す。

「嘘おっしゃい!あなた今の今まで、吟子が死んだって大泣きしていたじゃありませんの!」

「うるせぇ小松!そう言うお前も泣きながら話してるじゃねーか!!」

「当たり前でしょ!大事な仲間が、無事に帰って来てくれたのよ!」

「吟子…本当に…あなたって子は…」

怒っているのか泣いているのか分からない二人の顔を見て、自然と吟子の頬を涙が流れる。

そんな吟子に、誾千代は泣きながら抱きつく。

「ごめんな吟子!あんたを一人で行かせなかったら、こんなことにはならんかった!」

「本当にごめんな吟子!うちを許して!!」

「そうですよ…あなたがしっかり守っていれば…ううう…」

小松も吟子に抱きついて、一緒に泣き出してしまった。

「「吟子殿―!!」」

突然響いた、駆けよってくる野太い男たちの声で、泣いていた4人がビクッとなる。

「んだてめーら!いったい何者だ?!」

「私たちの涙の再会に水を差すなんて、貴方たち死にたいの?」

「いや、そういうわけでは…」

二人に詰め寄られ、焦る二人。

「うん?誰かと思ったら雑賀孫一じゃん!」

「あ~!頼廉のおじさん!」

敵として戦っていた誾千代と吟子は、重秀と頼廉であることに気付く。

「何だぁ、二人の知り合いか?」

巴の質問に、誾千代と吟子は答える。

「ああ、二人とも日ノ本の武将だよ!」

「二人とも千代ちゃんがやっつけて、捕虜にしていたの」

なるほどなるほどと、頷く巴と小松。

「つまり二人は、牢から逃げ出した脱走兵って事ね!」

「てめーら!コロス‼」

「ま、待て!ちゃんと話を聞け!」

背負った薙刀を抜く小松と、両拳にメリケンサックを付けて拳同士をぶつける巴に、焦る重秀たち。

「ちょっと、小松殿、巴殿やめてくだされ!」

けがの治療を終えた新撰組の篠原が、荒ぶる二人を止めに入る。

「彼らが助太刀してくれたけん、誾千代殿たちが敵に連れ去られんで済んだとです!」

篠原は、ここまでの経緯を巴たちに説明をする。

「ふ~ん、まぁ二人を助けてくれたという事には礼を言うぜ」

「しかしあなたたち、なぜ突然敵である私たちを助けたりしたのですの?」

疑問視する二人に、重秀と頼廉は声を揃えて言う。

「「秀吉や信長のやり方に嫌気がさしたからじゃ!」」

『その話、私にも聞かせてもらえますか?』

怒りを露にした二人に、こちらへやってきたピットたちが訪ねた。

「「は、ハハッ!!」」

礼を取った重秀と頼廉は、刀と銃を地面に置き、床に胡坐をかいて話す。

「我々『雑賀衆』『本願寺軍』は、10年以上『織田信長』と戦っていたのでございます」

「ある日、信長の家臣である羽柴秀吉が、『このままでは異国に日ノ本を奪われてしまうので、争いを終わらせるために協力してほしい』と提案を受け、領地の現状統治と民の安全を条件に協力したのでございます」

「その後関白となった秀吉は、関白から授かった『征夷大将軍』の名もとに、信長が各地の戦乱を収めたのでございます」

「これで日ノ本に平和が訪れると思ったのも束の間、関白は日ノ本だけでは飽き足らず、更なる領土拡大のために、近隣諸国を手中に収めようと、自分の家臣を中心に外様の兵で亜人連合に攻め込んだのであります」

ここまで話し、重秀と頼廉は大きなため息を吐く。

「儂らや殆どの外様大名たちは、日ノ本の平和を望んで秀吉たちに協力したのじゃ!」

「なのになぜ奴らは、よそ者まで使って領土拡張を計ろうとする?」

二人は意を決したように、ピットの顔を見る。

「先に約束を反故にしたのは秀吉である!」

「反故にした以上、我らが秀吉たちに加担する理由はない!」

「ピット王!どうか我らを『吟子』殿の配下として仕えることをお許しくださいませ!」

そう言って、二人は頭を下げてピットに願い出た。
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